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第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報⑤ 戦闘支援部隊観閲行進

2012-07-28 19:39:01 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
◆第11旅団偵察・高射特科・施設・通信部隊
第11旅団観閲行進はまだまだ続きます、今回は偵察部隊、高射特科部隊、施設部隊、通信部隊、戦闘支援部隊の観閲行進を紹介しましょう。 
Mimg_1600 第11偵察隊は旅団の任務遂行に必要な偵察及び警戒を実施する部隊です。82式指揮通信車、軽装甲機動車、87式偵察警戒車、偵察用オートバイを運用する部隊です。部隊創設は陸上自衛隊13個師団体制が画定した1962年に遡り当時の人員定数は103名、第5偵察隊と第7偵察隊の人員を以て発足しています。2008年の部隊改編で師団旅団化とともに偵察隊は一個偵察小隊の増勢を受けました。
Mimg_1612_2 偵察隊の編成は偵察隊本部、四個偵察小隊、電子偵察小隊を以て編成されています。偵察、とは敵を探すこと、と解釈されているようですが、敵の有無を図ることは我が国では斥候と称しており、偵察とは敵の戦力規模を積極的に把握する目的を有するもので、この為に偵察隊は一定の戦闘能力を有しています。本来は戦車と装甲戦闘車による混成中隊規模のものが望ましのですが、これは第7偵察隊くらい。
Mimg_1618 偵察小隊は、かつてはオートバイとジープだけ、という陣容から始まっていますが今日では87式偵察警戒車、軽装甲機動車、偵察オートバイにより編成されているもので、特に偵察オートバイが斥候に当たる任務を実施し、この把握した目標に対し装甲車が戦闘を仕掛け、抵抗の規模から敵対勢力の規模を推察するという方式が採られている。
Mimg_1626 観閲行進には出てこないのですが、電子偵察小隊は戦場監視を目的として1975年より編制されています。P-11レーダ装置3基を以て3個レーダ班を編成し、併せて野戦情報探知装置1号装備の1個センサー班を以て電子偵察小隊を編成します。P-11などは87式偵察警戒車など車両にも搭載できるとのこと。
Mimg_1630 87式偵察警戒車は第11師団時代の1991年に装備が開始されたもので、全備重量15tの装輪装甲車です。搭載する機関砲はエリコン25mm機関砲でAPDS-T弾を使用した場合距離2000mの傾斜30°防弾鋼板25mmを貫徹するといわれます。偵察警戒車なのですが難点は偵察装置の貧弱さで、砲手用微光増倍暗視装置が装備されるほかは車長用四倍等倍切り替え潜望鏡のみ。一応熱線暗視装置JGVS-V7をハッチへ取り付けることも出来るのですが。
Mimg_1631 第11偵察隊の部隊マークが見えます。偵察警戒車には二名の斥候員が乗車しており、降車し情報収集を行うことも可能です。しかし、積極的な偵察、即ち自動車化歩兵中隊程度であれば圧倒できる程度の能力を持たせるには、現在開発中の105mm砲搭載の機動戦闘車について、弾薬を減らし光学及び電子情報収集機材を搭載する偵察用伸縮式マストを砲塔後部に置く偵察戦闘車を装備しては、と。
Mimg_1642 第11高射特科中隊。中隊本部、情報小隊、近SAM小隊、短SAM小隊を以て高射特科中隊を編成しています。一個中隊ではあるのですが、防空監視用レーダーを運用していますので、旅団全般防空、特に携帯SAMを運用する自隊防空を行う部隊へ師団対空戦闘システムDADSを用いて航空攻撃情報を発するという意味で重要な位置づけにあります。
Mimg_1650 情報小隊の79式対空レーダ装置P-9、低高度目標への探知を行い、概ね100km程度の距離を探知できるとのことです。このほか対空レーダ装置P-14が装備されています。P-9は新型のP-18へ置き換えられる計画でしたが、全部隊への配置を終了しないうちに業務用PC私物品からウィニーによる情報漏えい事案が発生し、官品PC圧倒的不足を背景としていたことから解決策にPC一斉購入を行った結果、P-18の取得費用が削られた、といわれています。何かを採れば何かが削られる。
Mimg_1654 93式短距離地対空誘導弾通称近SAM、CSAMとも呼ばれます。35mm連装機関砲L-90の後継装備として導入されたもので、射程5kmの91式携帯式地対空誘導弾を運用、データリンクにより対空戦闘情報に応じて戦闘態勢を取り、複合式照準装置によりかなり精密な照準が可能であることから、一定の離隔距離とともに展開すれば高い野戦防空能力が発揮可能です。
Mimg_1659 CSAM、将来的には一部が機関砲に置き換えられることとなるようです。40mmか50mmの大口径機関砲により代替される計画で、これは一部の高射特科部隊に置かれるのか、全般配備されるのか未定ですが、将来装輪装甲車体系の車両として装備され、スウェーデンの3P弾など近接信管によりかなり高い対空戦闘能力を有し、絶対に欺瞞行動に関係なく直進し連続射撃を行うため、まだまだ機関砲の時代は終わっていません。
Mimg_1656 81式短距離誘導弾、通称短SAMと呼ばれSSAMとも呼ばれています。1960年代から東芝が苦心の末開発したもので、我が国初の国産野戦防空ミサイルシステム、アクティブフェーズドアレイレーダーをレーダーに採用、発射装置二両と射撃指揮装置一基を以て構成され、レーダーの索敵範囲は約50km、複数目標の同時追尾と射撃対処が可能な、今日でも十分通用する装備です。
Mimg_1661 SSAMは、射程8kmの地対空ミサイルですが、赤外線画像誘導方式の原型に加え新しくSSAM-Cと呼ばれるレーダー誘導型が開発されています。全国に順次配備開始されているのですが、ミサイルのシーカー部分がアクティヴレーダー誘導方式となっており、射程も15kmに延伸されています。発射装置には複合照準装置が増備されているのも特色で、性能上まだまだ第一線の装備と言えるもの。
Mimg_1660 このSSAMですが、後継装備として11式短距離地対空誘導弾が制式化されています。まだまだ装備実験が行われる装備で、来年あたり高射教導隊が高射学校で展示するのでしょう、発射装置への装填がSSAMでは半自動方式でミサイルコンテナを発射装置に人力搬送しなければなりませんでしたが11式ではコンテナをクレーンで装填する方式となり、自動化がすすめられたほか巡航ミサイル対処能力を有するに至りました。
Mimg_1671 第11施設中隊。本部班、補給班、三個施設小隊、交通小隊、渡河小隊を以て編成されています。元々は1962年に創設された定員377名の施設大隊でしたが、第11師団の第11旅団への縮小改編により施設中隊へと縮小されています。92式地雷原処理車や75式装甲ドーザなどをかつて装備していたのですが、全国の師団旅団施設部隊はこれら第一線で用いる装備を方面隊へ回してしまって、これはどうにかならないものでしょうか。
Mimg_1674 10式戦車の車体を利用した施設戦闘車、というものが必要なのでは、と関挙げます。特に海外派遣では施設部隊は正面に立つことが多いのですが滑降の目標になり、油圧ショベルと地雷除去用のプラウを装備し、サスペンションなどは簡略化したもの、必要でしょう。そして戦車の通路を啓開する92しい地雷原処理車も。D-7ドーザのような防弾車体を用いた50tクラスのドーザも、兎に角最前線の本当に先頭にて障害を除去するのだから必要ということは間違いない。
Mimg_1678 施設中隊は様々な車両をもって、障害構築、障害処理、陣地構築、交通維持、戦闘渡河、施設建築といった任務に当たります。70式地雷原爆破装置、大型ドーザ、中型ドーザ、掩体掘削機、油圧ショベル、バケットローダ、トラッククレーン、グレーダ、ダンプ車、83式地雷敷設装置、道路障害作業車、装備するものはこういったところ。
Mimg_1680 81式自走架柱橋、橋梁長10mの6両を以て1セットを構成し、橋梁幅員3750mmで、90式戦車以外の全ての装備を渡河させることが可能、橋梁設置は二時間程度で60mの橋梁を構築する能力がありますが、架柱橋であるので河床泥土の状態などで設置できない場合があると共に流速にも左右されるため、測量は事前に一昼夜をかけて行うとのこと。
Mimg_1681 道路障害作業車。日本は専守防衛を国是としているため、国土を瞬時に要塞化するための装備、というものが必要です。道路障害作業車はこの為の装備でクレーン、アースオーガー、コンクリートカッター、チェーンソー、ブレーカ、タンパー、これら道具をアタッチメントに装着することで電柱やガードレール、舗装道路に法面やブロックなどを障害物に置き換えることが出来障害除去などにも使用可能です。様々な装備の中で観閲行進にd他のは以上、96式装輪装甲車に地雷原処理装置を搭載したものは、のちの訓練展示に出されましたが、ね。
Mimg_1684 第11通信中隊。通信中隊の編成というのはなかなか分かりにくいものがありますが、旅団長と連隊長等との間の通信確保を任務とする、このように紹介されていました。通信大隊であれば、大隊本部と第一中隊と第二中隊という編成で、第一中隊が主合通小隊、前方合通小隊、後方合通小隊という編成で、第二中隊は三個支援合通小隊を基幹としていました。
Mimg_1690 通信中隊は師団通信システムDICSを構成します。システムは音声通信と移動間通信に加えデータ通信を行い、電子戦においても通信の維持を実現します。通信統制装置を基幹に交換装置系、伝送装置系、端末装置系連接装置系を以て構成されています。旅団なのに師団とはこれいかに、と思われるかもしれませんが、新野外通信システムが後継として開発中なので、名称はどうにかなるのでしょう。
Mimg_1694 通信中隊、恐らく第一中隊の主合通小隊、前方合通小隊、後方合通小隊を維持して第二中隊の任務を各普通科連隊の通信小隊に移管した、ということになるのでしょうか。野外用の移動加入基地局JTTC-T1に電子交換装置二号JMTC-T5やJMTC-T120により基地局を構成し、無線搬送装置JMRC-C50やJMRC-C-60が通信搬送体制を構築、通信基盤を構築する。もちろん、通信確保の観点から電子戦も通信中隊の任務に含まれています。このほか、広報用写真や記録映像の撮影も通信部隊の任務、忙しい。
Mimg_1693 衛星単一通信可搬局装置JMRC-C4、移動加入基地局JTTC-T1、電子交換装置二号JMTC-T5やJMTC-T120、無線搬送装置JMRC-C50やJMRC-C-60は中型トラックや高機動車に搭載されるシェルターにパッケージ化されており、アンテナを以て運用します。このように装備品を列挙してきたのですが、・・・、列挙されているのは名前ばかりで、中々外見からは装備品の制式名称がわかりにくい、というのは通信装備の一つの特色と言えるかもしれません。
Mimg_1696
とにかく現代戦は位置が把握されれば火力が指向され無力化されますので機動が基本、通信は最後まで通信を維持し、最初に通信を開通させなければならない、休めない部隊といわれているもよう。さて、以上で第11旅団の偵察部隊、高射特科部隊、施設部隊、通信部隊の観閲行進は完了です、が、まだまだ観閲行進は続きます。次回をお楽しみに。
北大路機関:はるな

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