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榛名防衛備忘録:第1機械化大隊編制を参考とした将来の陸上自衛隊と連隊戦闘団

2013-11-13 23:48:39 | 防衛・安全保障

◆理想は二個機械化大隊基幹
 機械化大隊を中心とした編成を師団と旅団へ導入、過去二回に渡りその私案を提示してみました。

Mimg_2070 理想としては、前回最後の方に紹介した“二つの機械化大隊を隷下に置く師団普通科連隊編成とした案”で、本部管理中隊・軽装甲偵察中隊・第一機械化大隊・第二機械化大隊・火力中隊、という編制ですが、これをやってしまいますと、問題点が生じます。苦肉の策の解決策で一個機械化大隊を基幹とする編成なのですが、後述する問題を解決すれば、軽装甲偵察中隊は軽装甲機動車基幹の中隊で装甲車は21両~27両、機械化大隊を構成する装甲車は28両ですので、前者の編成が理想ではあります。
Gimg_1141 それでは、色々試行錯誤し、考えがまとまらない中ではありますが、普通科連隊戦闘団の位置づけを考えてみましょう。普通科連隊戦闘団は、普通科連隊に対し従来、戦車中隊と特科大隊、施設中隊と高射特科小隊、通信小隊と救急車班を上級司令部より配備を受けることで2000名規模の戦闘団を編成する、というものでした。現在は戦車定数の削減により戦車中隊が戦車小隊となり、特科大隊も一部師団では特科中隊となっています。
Iimg_2832 戦車中隊を編成に置く機械化大隊は、師団戦車大隊という運用の在り方を改め、想定しているため、特科中隊と施設中隊に高射特科小隊と通信小隊を置く編制が考えられるのですが、直掩火力として現在の普通科連隊には重迫撃砲中隊が置かれています。機械化大隊基幹編成連隊の下では本部管理中隊に一定水準の火力を置くという提示を前回までに行いましたが、このほかの編成はどう考えるべきでしょうか。
Himg_0855 まず、考え方は二通りあり、普通科連隊としての編成を維持するか、諸職種連合の連隊、という単位とするか、ということ。前者は戦車部隊を常設として普通科連隊へ配属させる方式は、第一機械化大隊の滝ヶ原駐屯地のような演習場に近い駐屯地ばかりではありませんので、戦車大隊を師団隷下に起き、平時は戦車大隊に集中運用させ、必要に応じて組み込む方式で、現在の連隊戦闘団方式の延長線上に置くという考え方があり得ます。この場合普通科連隊は、本部管理中隊、軽装甲機動車中隊、装輪装甲車中隊、装輪装甲車中隊、火力中隊、という編制になります。いわば、旅団普通科連隊に重迫撃砲などを含む火力中隊を付与した装備体系で単純に装甲化しただけ、というところでしょうか。
Oimg_5646 戦闘団編成を組む場合、旅団と異なり師団は施設大隊をゆうしていますので、施設中隊を隷下に置くことが可能となります。もちろん、施設中隊とはいっても師団施設大隊には戦闘工兵としての装甲ドーザーや地雷原処理車等の装備が年々不足しているため方面隊直轄部隊へ移管されている趨勢があり、この点を改め、師団施設は戦闘工兵、という原点に立ち返らなければこの方式は意味がありません、建設工兵としての任務は、他に優先するものがありますので、そちらを重視しなければなりません。
Img_4357 施設中隊ですが、まず、基幹となる機械化大隊は、従来の普通科連隊よりも相当小振りとなっているため、連隊に一個施設中隊を置く必要はあるのか、と問われれば、それよりも本部管理中隊の施設作業小隊の手に余る施設作業を、施設装甲車というような、装甲車を基本として排土板や地雷処理装置にクレーンアタッチメントを搭載した装備を数両、小隊単位で配備する施設小隊分遣という選択肢を採り、逆に師団施設大隊は連隊へ送る中隊を戦闘工兵としたうえで、戦闘工兵よりは建設工兵に重点を置き、もちろん第一線施設作業を想定した編成であるべきですが、対応するべきでしょう。

Img_90100 特科中隊ですが、野砲6門程度を運用すると共に、特科中隊には観測小隊を、中隊規模で運用可能な小型無人機や、現用の対砲レーダ装置のような大きな装備ではなく、探知距離は短い物であっても、標定できる能力を小隊規模で付与させ、いちおう全般火力支援程では無い範囲であっても、火砲の射程では全般支援に用いる事の出来る155mm榴弾砲を装備するのですから、対砲兵戦闘を展開できる規模でなければなりません。
Img_4344 後方支援連隊ですが、普通科直接支援中隊というよりは、戦車直接支援小隊と特科直接支援小隊を併せ、直接支援大隊を編成し、適宜連隊の隷下に置くことが必要となります。第一線列線整備に特化する編成で、平時は中隊毎に各駐屯地へ分散運用しますが、連隊戦闘団編成時には大隊編制として、連隊長の隷下での第四幕僚として補佐に当たることとなります。
Mimg_2360 言い換えれば、単純な普通科連隊ではなく、諸職種連合としての連隊、という概念への転換であり、連隊戦闘団の常設に近い概念が、今回提示した連隊、というもの、こういえるかもしれません。他方、実質、機械化大隊と軽装甲大隊を基幹とした連隊は、平時は三個普通科中隊が二個装甲中隊と一個軽装甲中隊を以て旅団普通科連隊のような普通科連隊を平時構築し、戦車を適宜配備するという伝統的な普通科連隊の概念の延長上に総合的な機械化を行う、という概念にもなるのですが。
Gdimg_1098 連隊、という諸職種連合部隊、これは職種毎の基幹を中隊として、一種の混成団のような扱いとして連隊を置く、こういう思想です。かなり乱暴な案で、普通科連隊であるべきかそれ以外の部隊を戦域単位の任務に当たる連隊に転換させる、というもの。連隊として管区毎に一つの自己完結の部隊装備体系を維持させることで、即応性を高める。
Eimg_2547 これは逆に言えば難しく、戦車を広範に配備しつつも師団戦車大隊を置いて集中運用する訓練体系を構築しておかなければ、全ての連隊駐屯地に戦車を配置した場合、戦車の訓練地に駐屯地が隣接しているとは必ずしも限らないため、訓練水準の低下に繋がりがない、という問題もあります。それならば、戦車中隊の他に戦車大隊隷下に数個機動砲中隊を置いて、機動砲中隊は戦車部隊駐屯地から距離を隔てた連隊へ素早く合流、という方式も考えられるかもしれませんが、それでは地域により編成がちぐはぐとなってしまい意味がありません。
Gimg_0168_1 対案は過去に、中隊の強化を提示しています。中隊戦闘団として従来の普通科連隊の編成を重視しつつ、普通科中隊隷下の対戦車小隊を機動砲小隊へ一部改編するとともに、普通科中隊の対戦車小隊に配備されるべき中距離多目的誘導弾を普通科連隊直轄の対戦車中隊を編成し集中配備し、逆に普通科中隊は軽装甲機動車や四輪駆動方式の機動装甲車を以て編成し、小隊規模の機動戦闘車と中迫撃砲により近接戦闘に特化する案を提示しています。
Img_8454 日本の普通科中隊は、迫撃砲小隊と対戦車小隊を持つ編成で、定員は200名程度と諸外国の歩兵中隊が100名規模の部隊が多い中で小振りの大隊と言える水準の装備を有しています。対案としては、この中隊を基本として大隊の代用となるような編制を目指す方策はあり得るかもしれません。逆にいうならば、中隊隷下に対戦車小隊と迫撃砲小隊を置くことは小銃手を減らすこととなりますので、もう少し規模を起きくし、その隷下に小型の諸外国並みという人員規模の中隊を置き、大隊として大隊戦闘団を普通科連隊に置く、その中核として現行の中隊の編成を大切にする、という選択肢もあり得るかもしれません。
Img_3747 ここまで考えたうえで、しかし駄目だ、と思い知らされるのは戦車の不足です。冒頭の二個機械化大隊と軽装甲偵察中隊を基幹とする三単位編成の編成を行うには、二個機械化大隊を構成するには当然二個戦車中隊が必要となり、それでは一個普通科連隊を支援するために一個戦車大隊規模の戦車が必要になってしまいます。理想ではあっても、一個師団を三個連隊で編成する場合、機械化大隊六個の編成に六個戦車中隊を置くという編制になりますので、全ての師団に戦車連隊が必要になってしまいます。
Img_3727 旅団を三個機械化大隊基幹とすれば三個戦車中隊を有する戦車大隊が必要に、師団には五個乃至六個戦車中隊が必要になります。これは、例えば中部方面隊だけで戦車所要数が230両前後となってしまい、陸上自衛隊としては機動戦闘車を一部の戦車の代用として装備したとしてもとてもではありませんが全体でとてもではありませんが不足は否めないでしょう。
Gimg_2330 逆に指摘するならば、戦車を確保することが出来ないのであれば普通科中隊を念頭として普通科中隊を強化する方策以外、選択肢は無くなりますので、戦車があれば普通科連隊の人員を思い切って大きく削った機械化大隊を基幹とする案を、戦車が確保できないのであれば普通科部隊を削るのでゃなく中隊を基本として強化する案を、共に比較するしかない、選択肢を採り用が無くなる、こういえるのかもしれません。
Fs_img_8966 戦車ですが、現在、本州九州の師団戦車大隊は二個中隊への縮小改編が進められており、とてもではありませんが、そこに師団戦車大隊を五個中隊基幹へ、というような話は現実味を持ちません。上記の数字に従えば、機甲師団所要を200両とした場合で、各方面隊の戦車需要を列挙しますと北部方面隊は354両/382両28、東北方面隊は140両/168両、東部方面隊は112両/126両、中部方面隊が222両/250両、西部方面隊で182両/210両、必要になります。
Img_2583 戦車数はこの場合、教育所要を除いた場合でも1010両か1136両が必要となってしまう。こう書いてみた一方ですが、しかし冷戦末期の最盛期の陸上自衛隊戦車数は1200両を有していたわけで、1200両、冷戦後初期の戦車定数が900両、この数を見ますと、1136両の戦車数、そこまで非現実的に見えてこないようにも、と思いつつ、現行定数は400両、という実情を踏まえると、やはり無理か、とも。
Yimg_0025 更に加えますと、もっと装甲車が必要となります。一個旅団だけで必要な装甲車は普通科連隊所要のみで108両必要となり、96式装輪装甲車で100億円前後の取得費用が必要に、師団普通科連隊の場合は一個大隊基幹で36両と二個大隊基幹の場合で64両必要となります。装甲車を四輪駆動の安価な軽装甲車や機動装甲車として数を揃える選択肢もありますが、この場合、戦車に随伴できる不整地突破能力は期待できない。
Kimg_0911 ただ、自衛隊版ペントミックと仮称して師団を五個大隊基幹連隊編制、旅団を三個大隊基幹連隊編成とすれば、単純計算で機械化大隊を58個創設でき、二個機械化大隊編制を念頭とする師団三個連隊基幹体制と旅団三個大隊体制を採用した場合66個大隊を置けるわけですから、有事の際に機械化大隊ならば輸送艦での輸送が可能、機械化大隊は今日的には情報共有による共同交戦能力により分散していても上級部隊と情報面で連接し集合分散と補給維持をかなり効率的に進められますので、十年二十年単位での部隊創設計画として、選択肢としてはあり得るのではないか、と考える次第です。
Kfile0807 他方、それでは師団と旅団の位置づけの違いをどう考えるのか、という部分が生じてきます。もともと、陸上自衛隊が1962年に師団制度を導入する以前は師団に当たる管区隊を四個置き、定員を1万5000名として第一管区隊が首都圏東北南部含む東日本と中部日本を管区、第二管区隊が北海道、第三管区隊は西日本及び東海、第四管区隊は九州を管区としていました、続いて第五管区隊と第六管区隊が創設され、これを補うべく、管区を持たない機動運用部隊として、道南地区、九州南部地区、青函地区、中京地区、以上に混成団を置き、保管していたわけで、この区分が今日の師団編制の元となりました。
Aimg_9773 これが管区隊の警備管区を縮小し、混成団を機動運用から警備管区を有する編成に移行し、師団制度が創設されたのが1962年、その後旅団制度が加えられ今日に至るわけです。即ち、現行の旅団と師団の混在一体は、機動運用か地域防護かの流れの過渡期の産物であり、これは上記機械化大隊の編制を提示したうえでも解決策とはなり得ません。
Nimg_1766 悩ましいところですが、それならば、二個機械化大隊基幹の編成普通科連隊を基幹とする三単位師団を従来師団と比較して広い管区を防護する大型化した師団編制として、陸上自衛隊の師団管区を再度線引きし、方面隊管区も再編、例えば東部方面総監部を隷下に中央即応集団と第一師団を編入し中央即応集団司令部機能を方面総監部に置き換えることで大臣直轄部隊化し、東部方面隊第12旅団管区を東北方面隊管区に編入、その上で首都の大臣直轄部隊を東部方面隊と呼称させ、実質は北部・東北・中部・西部の方面隊とし、線引きをやり直す、という編制もあり得るのでしょうか。
Img_0290 ほか、後日詳述しようと考えているのですが、方面隊隷下の方面航空隊に方面普通科連隊を付与し、方面対舟艇対戦車隊を隷下に配属させることで、方面航空混成団/方面空中機動旅団という編制を導入、師団と方面空中機動旅団の関係をかつての管区隊と混成団の関係に近い運用も方策として検討されるべきと考えています。方円航空隊は対戦車ヘリコプター隊に多用途ヘリコプター隊と一部は少数の輸送ヘリコプターを輸していますので、常設の普通科連隊と編成することで空中機動旅団として運用させることも可能です。管区隊と混成団の関係をこの切り口洗考える事も出来ないわけではありません。この論点を飛躍させ、北部方面隊の第11旅団、東北方面隊の第6師団、中部方面隊の第13旅団、西部方面隊の第8師団、以上を方面航空隊と統合し、もちろん、上記の手法とは連隊数などで違いが生じるでしょうが、管区を持たない軽量な空中機動旅団とし、その分の余剰人員を以て機械化大隊を強化した大型師団を置く、という方策もあり得るでしょう。
Img_9381 他方で、一旦戦車師団である第七師団以外の全ての師団を旅団として改編し、これを三個旅団を以て管区隊型の大型師団へ改編し、方面隊隷下に一個師団、方面隊直轄の部隊と共に運用する方策を将来的には模索するべき、とも考えていて、過去の記事にも大型師団の導入へと提案していますが、それならばこの機械化大隊という概念が矛盾するかというと、ある程度矛盾しないようにしますと、逆に基幹部隊を旅団や師団と地域ごとに雑多な編成の普通科連隊を採るではなく、一時機械化大隊をという編制を第一にとった上でこれに増強部隊を付し連隊を置き、将来の改編に備える、という選択肢も採ることが出来るでしょう。
Img_7517 ううむ、師団編成や旅団との編成は様々な柵があり、体系だって示すにはかなり深い論議を段階ごとに記さなければなりません。いろいろと議論を出してみたのですが、当初の安易に戦車を減らすよりは、という本筋から少々話が戦略単位の在り方へとずれてしまったこともありますので、散開で完結する予定でしたが、まず、この部分だけを次回最終回、多分最終回、として掲載してみようと思います。

北大路機関:はるな

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4 コメント

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はるな様 (専ら読む側)
2013-11-14 00:45:40
はるな様
思考実験興味深く拝読致しております一方、戦車
(如何に嫌悪&バカにされ、甚だしくは「恐竜」呼ば
わりされようが結局此れが要)配備数十分なれば
必然的に無用とされる兵器機材も併せて述べて
頂けますと現状のグダグダに対しより有効打たり
得ると思う所しきり
動的防衛力は貧乏の詰め合わせ (大岡山)
2019-05-14 05:39:30
7師団の役割はロシアに対する睨みの意味合いが強いと見る人も居ますが私は北海道での訓練運用の容易さ(いっその事機甲系教育や研究機関は北海道に置けばよい)と敵着上陸後の打撃部隊であると思います。
駐屯地が意味するところの部隊が留まっている土地であり恒久性はなく必要な場所へ赴くを実践しているのかと。
そうであるならば展開を容易くするために一個機械化大隊程度の火種を集積パッケージ化しておき展開を容易くしておくべきかなと思います。
(正直、敵の旅団規模着上陸はありえませんしね)
従って現在よりもさらに部隊を縮小しても構わず本州に至ってはゼロ、九州は現状維持、7師団は旅団にし一個戦車連隊廃止(集積物資化)でも良いのではないでしょうか?
第二北大路機関に (はるな 管理人)
2019-05-15 19:09:16
大岡山 さま

コメントありがとうございます

お返事のほう、第二北大路機関に纏めましたのでもしよろしければご一読を

harunakurama.blog10.fc2.com/blog-entry-8530.html
Unknown (コスコス)
2021-09-08 01:55:15
大盤振る舞いが過ぎますよ。
予算無視過ぎるがと思います。
どのみち戦車を使うことなんてほぼないので西方と北方に纏める現行案は正しいですしヘリ隊の運用状況を見れば空中機動部隊の維持の負担がわかるかと思います。
いっそのこと海外の安価な資材を入れるか使い道の薄い戦闘ヘリを大幅に減らさないことには金も人も回せないのが現状ですね

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