■次世代戦闘機への布石をT-4後継機へ
技術研究本部では、予てより次世代戦闘機への技術開発を精力的に進め、昨年五月には画期的な先進技術実証機のRCS模型を発表した。その実物大模型は、単なる模型に終わらず2014年に実機が飛行する計画であり、次世代における日本の空へ期待を抱かせるに充分なものであった。
技術研究本部では、過去にT-2高等練習機を母体としたCCV試験機などを運用し、その具術が後のFSX計画において大きな役割を果たしたが、技術研究本部より発表された先端技術実証機は、ステルス性を重視した、まさに第五世代戦闘機の基本となるものであった。なお、非常に残念ながら技術研究本部HPや航空専門誌にはその写真が掲載されていたものの、著作権上微妙な部分があり、今回はその本体の写真を掲載できないことを初めにお断りしておく。
さて、技術研究本部は三菱重工を主契約企業として2010年度を目処に開始する次世代戦闘機への技術的基礎研究として、この先進技術実証機を用いる構想で、ステルス性を第一に、これを損なわない範囲内で最大限の高運動性能を付与させる計画という。更に、機体の一部にコンフォーマルレーダーを搭載し、従来の戦闘機では死角となった部分からの脅威確認に充てる構想という。また、同実証機には、推力変換機構を備えたエンジンや、新複合素材などが新技術として開発されるという。
これは、F-15Jを越える将来戦闘機を開発するに当たり、特にこれまで蓄積した技術の応用として、更に技術実証を目的として開発されるもので、結果的に基礎研究の集大成と将来戦闘機開発リスクの低減を意図したものである。研究試作は2014年の実証機初飛行を計画しており、石川島播磨重工によりアフターバーナー機能を有するXF5-1の開発が進められている。機体の形状はコックピット後方がF-1のように遮られており、ステルス性を高める直線で構成され、双発、双垂直尾翼の形態となっている。
実証機は離陸重量8㌧、XF5-1エンジンの双発により10㌧の推進力を発揮するが、先進技術実証機ということもあり、RCS実物大模型などを確認する限り兵装搭載能力は付与されていないようである。さて、ここで気付かされるのが、自重7.5㌧というT-4練習機との関係である。1985年に初号機が初飛行したT-4は、今年で初飛行から22年、そろそろ後継機の選定が必要であり、これに国産案として先進技術実証機の改良型を充てる構想があっても良いのではないかというのが、今回の記事の本旨である。
先進技術実証機“心神”の実物大RCS模型は、コックピット後方に覆いがあり、後方視界などがF-1支援戦闘機のように悪そうであることは述べたが、この部分に技術試験情報の記録装置が搭載されていることは想像に難くなく、言い換えればこの機材を取り除くことで、複座航空機に転用できるのではないか、という可能性を見出すことも出来る。特に離陸重量の10㌧は、F-2の離陸最大重量22㌧やF-15の30.8㌧と比して非常に軽く、このままでは戦闘機への転用は不可能である。
他方で、練習機用途であれば、前述したコックピット後方部分を充分に活かせればその転用は比較的容易となろう。また、各5㌧の推進力を有するXF5-1エンジンは、出力重量比であれば世界有数の性能を見込むとあるが、流石に三発四発機にでもしなければ、そのまま次期戦闘機に応用することは考えにくく、更に、多用途機用のエンジンへの転用もアフターバーナーを考えればその意義は無い。しかし練習機用途を見込めばその所要分は大きく増加する。
現実問題として、212機が生産されたT-4の後継機問題はそろそろ検討が必要であるが、該当機種は国産を除けばT-4の再生産、若しくは米韓共同開発のT-50超音速練習機など限られており、この大きな需要を国産航空機にて代替するか否かは、必然的に日本の航空産業水準の維持に大きく関わってくる。また、超音速機能が不要であれば、XF5-1エンジンからアフターバーナー機能を廃することで、コスト低減を期することも可能である。例えば、T-2やジュギュアが搭載するアドゥーアエンジンからアフターバーナー機能を除いたものを、亜音速練習機ホークが搭載しており、これも現実的に考えうる選択肢である。
また、先進技術実証機“心神”には、機首部分にコンフォーマルレーダーを搭載しており、更に赤外線により索敵を行うIRSTなどを搭載し、少数のハードポイントを加えることにより、補助戦闘機として運用することも可能となる。特に生産数を削減されたF-2などは当初高等練習機への一部転用も考えられていたが、防衛大綱の改訂により戦闘機数を制限された航空自衛隊にあって、航空作戦に対応できる練習機というのは価値がある。
この練習機の補助戦闘機化という政策は、既にT-2後期型において実行されており、後期型には火器管制装置、20㍉機関砲M61が搭載されており、また計器訓練などではロケット弾の実射も行っていた。これは有事の際には、ベテランパイロットである教官が搭乗し、超音速性能を最大限に活かし、サイドワインダー空対空ミサイルを用いて要撃戦闘を展開し、通常爆弾Mk.82やロケット弾を以て近接航空支援(ただし、F-1のような爆撃コンピュータは搭載していない)などを展開できることを意味した。
T-4自体、開発に際しては武装訓練型を生産し、有事の際には亜音速機能を活かし、木目細かな近接航空支援などを実施する計画があったが、最終的には単なる練習機となっている(ただし機体性能に若干の余裕があり、1400kg程度の兵装は可能とする資料もある)。特に専守防衛を国是とする自衛隊の場合、陸上自衛隊が近接航空支援を必要とする際に航空自衛隊は航空優勢確保に全力を投入しているはずで、支援戦闘機(この区分は間もなくなくなるが)も対艦攻撃と要撃支援で余裕が無く、予備となる戦力を練習機から抽出する構想は無駄ではあるまい。
2014年に初飛行を迎えるであろう先進技術実証機、このまだ飛行さえ迎えていない航空機を、T-4の後継機としてはどうか、そうした提案であるが、様々な先進技術が盛り込まれた最新鋭の航空機を練習機とする提案は、検討に値するのではなかろうか。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
レーダーの装備や洋上航行・ルックダウン機能
などの付加は難しいでしょうか?
今後の技術発展で
改良キットができればと思います。
爆撃にはどの程度の機器の付加が
必要か分かりませんが、アルファジェット並みの
攻撃性能はないといけないでしょう。
例えばゲリコマ対策など限定の使用条件なら
無人偵察機の替わりにT4も活躍する場面が
あるのではと思います。
>などの付加は難しいでしょうか?
現用機への付加は不可能だと思います。ポット式にした場合は別ですが、設計変更を行った新造機であれば可能でしょう、ただ、残念ながら生産は終了しています。床井雅美氏の著書にはAAMや爆弾が搭載できる、とありますが、FCSなどの関係もあり運搬手段となりうるかは微妙です。
>アルファジェット並みの
難しいですね、アルファジェットは兵装搭載量が2200kgとT-4の1300kgより大きく、航続距離も2700kmとT-4の1668kmより長いです。ただ、ロケットポットを搭載した近接航空支援などには用途はあったと思います。
しかし、今後航空機は情報収集や通信中継の母機として、単一以上のものが求められますから、多用途性能の希求というコンセプトが要求されるかが、今後の防衛戦略全般を左右することとなるように思います。
ウィキペディア:T-4の空虚重量: 3,650 kg 最大離陸重量: 7,650 kg
ブログの投稿では、心神の推力10tと最大離陸重量を混同していると思う。
心神のキャノピーはF-1の流用だから、あんな後方視界が悪いのは有名なはずだと思ったんだけど
>心神の想定する最大離陸重量とか、数字がおかしいと思う。
>心神の推力10tと最大離陸重量を混同していると思う。
先進技術実証機の性能については、航空ファン通巻650号の解説記事を参考としましたが、改めて見てみますと離陸重量は8㌧となっています。
>T-4の空虚重量: 3,650 kg 最大離陸重量: 7,650 kg
仰る通りです。ここでは参考文献に用いた床井雅美氏の著書“最新戦闘機図鑑”におけるT-4の自重を引用したのですが、青木謙良氏が寄稿した丸通巻603号には空虚重量4015kg、最大総重量7500kgとあり、この他自重について書籍によっては異なる数字が出ていました。少なくともここに挙げた自重は誤りであることがわかりました。ご指摘ありがとうございます。
T-X転用案というのは、まあ自衛隊行事閑散期ネタ切れ救済企画で挙げたものですし、そこまで本気にしないでいただければ幸いです。
他方で、T-4は初飛行から約20年を経た機体であるし、そろそろ後継機を考える必要があるのではないかというのが本論の主旨です。
練習機とする。とにかくF4Eの代替えが一刻も早く実現することを念じている、なぜなら今後10年位は中国が非常に危険な国として振る舞うことが予想されるから。
練習機とする。とにかくF4Eの代替えが一刻も早く実現することを念じている、なぜなら今後10年位は中国が非常に危険な国として振る舞うことが予想されるから。
T-2は支援戦闘機としての任務や機関砲、火器管制装置の搭載が設計段階から取り入れられていたので、今後の練習機は多少、その程度の、という意図もあったんですけどね・・・。
心神は、どう頑張ってもF-4後継機には間に合わないのでは、と。また、日本は今後、支援戦闘機を開発する能力を限度として、世界の第一線機に伍する戦闘機の国産は難しいのでは?と思ったりします。例えば、JSF計画のF-35は国際共同開発という点から生じる不合理部分を差し引いても、日本の防衛予算で換算して数年分が消費されているわけで、F-3、というのはある程度ステルス性があって、これまでの機体よりも多少運動性が良くて、米国製の強力なエンジンを搭載した機体、というのが限度なのかな、と。
あと、中国軍の渡洋作戦能力を、政治家含め、過大評価しているような向きを感じるのですが、旧ソ連の太平洋艦隊や極東軍45個師団と比較した場合、どうでしょうか。
これからの時代、練習生は第五世代機の特性を良く知らなくてはいけませんからね。
その点心神なら推力偏向やステルス性、コンフォーマルレーダーと言った新しい技術がふんだん使われていて、練習生を新しい技術に慣らすためにかなり有利に働くんじゃないかと思います。
ただ、ステルス機は非常に高価です。機数を簡単にはそろえられません。
維持費も相当なものと思います。
そして操縦性はおそらく、かなり癖のあるものと思われます。
T-4のような、素直な操縦感覚は難しいのでしょう。
そして、飛び立った練習生を乗せた心神が、ステルス性により全員行方不明に、なんて事ももしかしたら……。
とは言えせっかく作った心神。何かに使いたいですね。
心神、横浜の航空宇宙博で模型をまじかに見ますと、やはり心踊るもので、何か使い方法はないかな?と改めて思ったりしちゃいます。
他方で、T-4の完納式から五年半、そろそろT-4の後継機を考えなければいかないところ、そのまま転用、は無理としても、何か活かせる部分、というのに期待したりします。その際、隣国のT-50を例に挙げるまでもなく、軽攻撃能力を持つ練習機、というものも念頭にあがってもいいのかな、とも。
歴史を見ればいつも勝負は新兵器です。それも完成さすまでやり抜くことです。逆転の発想が大事。
ロックした時点で自動戦闘装置オンが未来でしょう。コンピューターの保護も絶対です。
すべて有脳ミサイル化になるのでは。