北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱とF-35B&EA-18G【21】F-35B艦上哨戒機,情報優位が脅威を潰す戦域優位へ

2018-10-22 20:05:59 | 先端軍事テクノロジー
■F-35Bセンサーノード運用
 呉基地の護衛艦かが艦上にF-35Bを搭載する、この一点で政府与党と自衛隊が一致したとしても、運用まで同じ考えとは限りません。

 情報優位が脅威を潰す戦域優位へ直結する、これが現代戦です。この為に早期警戒管制機等高価な装備品の優位性がある。F-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として運用する、しかし、固定翼艦上哨戒機として運用する前提で導入する場合でも、F-35Bに優れた空対空戦闘能力がある事は否めません。勿論これ自体は悪い事ではありません、何故ならばセンサーノードとして運用するF-35BがSu-30やJ-21戦闘機等からの航空攻撃を受けた際には排除してでも生き残る必要がある。

 防空能力、しかし問題なのは海上自衛隊がF-35Bを導入した場合、艦隊のセンサーノードとして必要なのですが、問題なのはその高性能故に南西有事の際、局地防衛へ特定海域へ貼り付けるよう政治的要求が為される可能性がある点です。南西諸島に危機が迫る際に、戦闘機をセンサーノードという任務から外すのが責務だろう、と押される可能性がある。本来艦隊防空用であるイージス艦、その優れた性能故に弾道ミサイル防衛へ専従を強いられた構図と似ているでしょう。

 艦隊防空、イージス艦がありますので、艦隊防空にF-35Bを必要とする需要はそれ程大きくは無い、必要性があるとすればイージス艦に射程370kmのスタンダードSM-6艦対空ミサイルを運用する際に、イージス艦のレーダー覆域外からの低空脅威への哨戒が挙げられましょう。言い換えれば艦隊防空でのイージス艦の有するポテンシャルはそれ程に大きい。

 F-14A戦闘機が1980年代のアメリカ海軍空母航空団では一定数が艦隊防空用に配備されていましたが、現代ではF-14Aは既に引退し、我が国でも2002年の厚木ウイングスにて飛行展示を行ったのが最後で、F/A-18C戦闘攻撃機とF/A-18E戦闘攻撃機へ置き換えられています。F/A-18E等は優れた機体ですが、防空専用機であるF-14Aの優位性は高かった。だからこそ、アメリカ海軍の空母航空団は艦隊防空をイージス艦に依存し、それよりも打撃力を重視した結果、F/A-18E主体の編制となっている訳ですね。

 F/A-18Eは戦闘攻撃機で制空戦闘から航空打撃戦まで対応する機種なのですが、艦隊防空を考える場合、長射程のフェニックス空対空ミサイルを運用し、複数目標同時対処能力を有するF-14Aは古いながらも空飛ぶターターシステム艦といえるものでした。そのF-14Aが近代化改修でなく除籍となったのは、イージス艦へ艦隊防空が依存出来た為というもの。

 ヘリコプター搭載護衛艦が、ひゅうが、いせ、いずも、かが、と四隻揃った海上自衛隊ですが、同時にイージス艦の整備も進んでおり、アメリカ海軍の様に全ての巡洋艦とズムウォルト級3隻を除く全駆逐艦大半のイージス艦化というほど極端ではありませんが、こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい、あたご、あしがら、その整備は進んでいます。

 まや型ミサイル護衛艦まや進水式、としまして海上自衛隊は護衛艦隊に残るターターシステム艦2隻を練習艦隊へ編入する方針で、新たなイージス艦まや型ミサイル護衛艦の建造が進んでいます。護衛艦隊を構成する4個護衛隊群へ各2隻が配備されます。護衛艦隊には僚艦防空能力を有する護衛艦と個艦防空能力の高い護衛艦で全体が構成されています。言い換えれば、艦隊が生存するという意味の艦隊防空、しかし艦隊が残っても国土が灰燼に帰しては意味がありませんので、艦隊には国土に脅威を及ぼす脅威を水上戦闘により排除する必要がある、この為に情報優位に直結するセンサーノードへF-35Bが必要、という論法ですね。

 局地防空、F-35Bを導入する際に勿論、自衛隊の任務として必要があれば政治の要求に対応する事が求められるのですが、センサーノードとして用いる機数と局地防空として南西諸島の航空優勢を維持する機数とでは、後者の方が圧倒的に必要な機数が大きくなり、勿論、後者を念頭にF-35Bを80機100機と導入するならば別ですが、前者目的では逆だ。

 単なる推測ではないか、と思われるかもしれませんが、論理の構図は単純です、対領空侵犯措置任務は航空自衛隊の任務であって海上自衛隊の任務ではない。そして海上自衛隊も航空自衛隊からこの任務の移管を希望した事も創設以来事例が無い、一方で海上自衛隊の任務は海上防衛力を通じたシーレーン防衛、つまり海上自衛隊がF-35Bを導入研究を行ったとしても、航空自衛隊の任務である対領空侵犯措置任務の補完を買って出た、という構図ではない事は、自明というもの。

 センサーノードとして導入するならば、敵戦闘機の大編隊と正面から戦うのではないのですから数はそれ程必要ありません、敵戦闘機の大編隊はイージス艦がまとめて無力化できる。ですから、各艦6機で稼働と整備で24機を維持できるよう航空集団全体で予備機も含め30機あれば充分です。しかし、護衛艦隊全体30機で南西諸島局地防空を求められた場合、護衛艦隊は他方面でのシーレーン防衛等の任務を遂行不能となります。F-35Bを導入する場合、どの用途に用いるかの政治と第一線の理解共有が必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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