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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新幹線国際輸出研究【1】十月十四日は鉄道の日,日本が誇る鉄道システムの世界化を考える

2018-10-14 20:12:56 | コラム
■十月十四日は鉄道の日
 十月十四日は鉄道の日、ということで今回から日本が誇る鉄道システム、その輸出について考えてみましょう。

 新幹線、京都から東京へ移動する際にこれほど便利な交通手段はありません、次々運行される運行本数はそのまま利便性、伊丹空港経由の空路よりも遥かに早い。2003年以降食堂車が廃止され15年を経まして、この一点は寂しい限りですが、運賃体系を除けば、世界に誇れる日本の技術体系です。しかし、この輸出となりますと、現実問題として奮いません。

 高速鉄道の需要自体は、あるようです。世界での高速鉄道開発誘致が行われている事が何よりもの証拠です。しかし、価格競争となりますと中国の一帯一路政策に基づく高速鉄道建設は、競争する背景が異なる点に留意が要る。しかし、日本新幹線方式には、在来線飽和状態解消を目的とした鉄道である為、新興国市場への最適化で費用を低減できましょう。

 一帯一路政策、中国政府は国内で飽和状態の高速鉄道建築資材を流用し、赤字であれば運営を99年間継承する、建設費を改修するまで中国が責任を持つ等、現状実質、後払い方式で結果的に運営権そのものを敷設受入国から割譲する方式を執る為、領土的野心に繋がる策謀を持たず純粋に高速鉄道を供給する日本の新幹線は単純に競争する事は難しいのです。

 新幹線輸出に関する一考察、我が国新幹線技術は高頻度輸送に重点を置き、従来の東海道本線の幹線機能を補完する鉄道網として整備された新幹線、新しい幹線です。この新幹線は結果的に高速鉄道の形態をとっていますが、もともとは高速輸送を実施することで複線線路上での時間当たりの最高頻度輸送を実現する、速度は輸送力のための手段でした。

 日本の新幹線輸出、我が国新幹線技術は大型車両と専用軌道を必要としますが、世界では最高速度300km/hという高速鉄道としての能力が高く評価され、世界各国が自国への高速鉄道計画を立案する際、国際競争入札へ日本の新幹線を有するJR各社、フランス高速鉄道、中国高速鉄道、ドイツ高速鉄道車両メーカー筆頭に最有力視される高性能を有しています。

 中国高速鉄道は日本のJR東日本からの技術提携を受け、急速にキャッチアップを実現したことで建設費用面では世界最安の高速鉄道技術を実現しました。我が国新幹線技術は高速輸送を目的とするのではなく、高頻度輸送のための高速輸送を手段としたものである為、単純に高速輸送を手段とする中国高速鉄道との比較は妥当ではないのですが建設費が安い。

 国際競争入札という方式をとる場合、どうしても日本の新幹線システムは費用面で如何ともしがたい難点を抱えていることは否めません。専用軌道を必要とするために必然的に全線新設が前提となりますし、輸送力を考慮すれば必然的に車両が大型化します、その上で最高速度よりも巡航速度、鉄道は表定速度の用語がありますが、重視するのはこちらです。

 新幹線は表定速度重視の視点から加速性能と原則性能を重視しており、結果分散動力方式を採ります。分散動力方式は基本的にすべての車両にモーターを搭載し、車両が一つのシステムとして加速と減速にあたるもの。この方が短時間の加速が可能となります。しかし、欧州はじめ世界の主流は機関車方式であり、先頭車両と最後尾車両を機関車とするもの。

 フランスTGVの高速車両は機関車方式高速鉄道の代名詞的存在でした。TGVの車両を見れば先頭車と最後尾車両には客室の窓がなく、この車両が機関車である事が理解できましょう。現在、TGVメーカーであるアルストム社は新幹線方式である分散動力方式の利点を理解し、その上でコスト面と高速車両性能の均衡について漸く結論を出しつつあります。

 分散動力方式は加速性と減速性能に優れています、これは減速性能により緊急時の急停車などに電気指令式ブレーキによる短距離制動という利点に繋がるのですけれども、やはり重視されるのは高頻度運転を行う際に後続列車を素早く発車できるよう先行列車が高加速し、緻密なダイヤグラムでの運行を可能とするために他なりません、輸送力が第一です。

 東海道新幹線が輸送力を第一とした設計であるのは、すべての車両を16両編成1322座席を基本とし、高頻度運転時には5分間隔での高速運転を実施しているためです。この高頻度運転には分散動力方式による加速性能と減速性能が重要となるのですけれども、一方で分散動力方式は車両整備での大きな負担を意味します、全車両に動力があるのですから。

 新興国や航空輸送大国では、高速鉄道の利点を輸送力強化への手段として理解していることは確かなのですけれども、同時に最高速度での輸送を考えていることも確かです。結果、日本ほどの高頻度運転が必要な輸送需要がある訳でもなく、結果的に建設費用を考慮すれば日本の新幹線方式よりもコスト面で優位な中国高速鉄道が有利となる構図があるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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