北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱とF-35B&EA-18G【20】F-35B艦上哨戒機,自衛艦隊と政府与党の理解共有

2018-10-18 20:08:12 | 先端軍事テクノロジー
■F-35B,局地防空用には限界
 F-35B戦闘機について、艦隊の哨戒機としては必要ですが艦上からの局地防空として導入するならば、その能力は疑問が残ります。

 F-35B,垂直離着陸を可能とした世界唯一の第五世代戦闘機、この意味するところは海上自衛隊が保有するヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、いせ、いずも、かが、四隻の艦上から運用が可能という点です。新防衛大綱検討に際し、自衛隊へF-35B導入を模索する自民党提言は明らかに海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦上運用を想定しているものでしょう。

 しかし、F-35B運用について自民党と海上自衛隊の同床異夢といいますか、F-35B戦闘機の能力についてどの程度、運用特性の理解を共有できているのか、という視点を付け加える必要があります。F-35Bは固定翼艦上哨戒機として必要であるとは考えます、しかし要撃機として用いるのならば、ヘリコプター搭載護衛艦の能力限界を超える可能性がある。

 ひゅうが型護衛艦、基準排水量13900tと満載排水量19000tの新しい全通飛行甲板型護衛艦は、元々F-35B開発のJSF計画に際してイギリス海軍が基準排水量16000t満載排水量22000tの航空母艦インヴィンシブル級艦上において運用する想定で開発が開始されており、ひゅうが型の船体規模がF-35Bを艦上運用する上で必ずしも過小であるとはいえません。

 第五世代戦闘機を搭載可能、しかし、F-35Bをどのように運用するかについて、船体規模がその運用に一考の余地を残すものとなるかもしれません。具体的に海上自衛隊がF-35Bを必要とする状況はセンサーノードとしての運用、ステルス機であるF-35Bが長射程化する対艦ミサイル射程内の索敵と目標標定を行う、こうした任務が想定されると考えます。

 SH-60J/K哨戒ヘリコプターが現在、この任務に用いられています。SH-60J/Kは対潜任務から洋上哨戒に対小型水上目標対処に大きな能力を発揮出来る高度な艦載機です。しかし、哨戒ヘリコプターである為、ステルス性や空対空戦闘能力は元々要求されず皆無であり、例えば中国海軍のような長射程艦対空ミサイルと航空母艦戦闘機脅威下では運用が難しい。

 RAH-66偵察ヘリコプターのようなステルス性の有する機種、RAH-66は開発中止となりましたので、こうした機体を必要とするならば独自開発するほかありませんが、仮にステルス性を有する航空機があれば限定的に空母艦載機等の経空脅威状況下において運用する事は可能となるかもしれません。ただ、費用面性能面技術面で開発は現実的ではありません。

 センサーノードとしてF-35Bを少数搭載するならば、ひゅうが型艦上に5機程度、いずも型艦上に7機程度、戦闘機としては少ないよう考えられる数字ですが、あくまで哨戒機や哨戒ヘリコプターの延長線上という意味で必要な数を提示しました。正直なところ、センサーノードとして運用するならば、哨戒飛行に1機から2機滞空させれば充分なのです。

 要撃機として用いる場合はどうか、自民党提言に置いうてF-35B運用では、南西諸島防空能力の補完、具体的には中国軍ミサイル爆撃機巡航ミサイル攻撃により那覇基地や嘉手納基地が機能喪失した場合に一時的に要撃任務を補完するために護衛艦からF-35Bを緊急発進させ、対領空侵犯措置任務と航空優勢維持任務に充てる、という意見があったようです。

 ヘリコプター搭載護衛艦の艦上から要撃任務を実施する場合、飛行隊規模のF-35Bを搭載し、航空燃料と航空機用弾薬を搭載できる充分な母艦能力が必要となり、基本的に対潜中枢艦として設計のヘリコプター搭載護衛艦には、そこまでの弾薬搭載能力や燃料搭載能力に余裕があるとは思えません。自民党はどこまでこれらを理解しているのかが重要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (2)
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