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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第五二回):航空防衛再論,三方向からの脅威へ対応する防空体制構築

2017-11-21 20:03:19 | 防衛・安全保障
■冷戦時代要撃機三五〇機
 現在の280機での防空体制について永くその能力を最大限発揮する方法論を検証してまいりましたが、脅威が一過性ではなく長期化するならば、流石に充分万全とは言い難い。

 冷戦時代並の350機必要ではないか、特に現在の戦闘機を支援する、廉価であっても支援戦闘機、というものの必要性を痛感するようになっています。ここで航空防衛に関する本特集では、原則として戦闘機は現在の280機で対応できる、一個航空団を大型化させ現在の9個ある航空団数を減らし、その分を航空団隷下に3個航空隊を置く案を示しました。

 即時に複数の航空隊を機動運用させる体制を構築し、脅威が増大した場合には戦闘機を第一線に集中できる体制を構築すればよい。そして戦闘機数よりも戦闘機基地のほうが重要であり、航空攻撃から戦闘機を防護し滑走路を修復し整備補給設備を頑強なものとするほうが重要だ。飛行場機能の強化と兵站体制の強化で戦闘機数以上に防空体制を強化出来る。

 その上で一時的にミサイル攻撃により基地機能が喪失した場合でも、迅速に復旧できる航空施設部隊を強化するとともに、全国の地方空港を有事の際に臨時分屯基地として運用できるよう、補助する臨時飛行場を整備し、戦闘機を戦略拠点となる基地が復旧完了するまでの間に防空作戦を継続すべく、飛行中隊単位で分散運用させる体制を構築した方がよい。

 緊急発進回数が1100回を突破するまでには、こうした認識がありました。しかし、現状の通り、周辺国の空軍力は増大し続けています。特に顕著であるのは、日本本土を戦闘行動半径に収めている戦闘機数の増大です。戦闘機数では冷戦時代の方が特に中国空軍などは巨大でした、が、その戦闘機のすべては中国本土を基地とした場合で脅威度は低かった。

 冷戦時代全般にわたって中国空軍の戦闘機は東シナ海を越えることができず、ごく一部が沖縄県と九州の一部を戦闘行動半径に収めているにすぎませんでした。しかし、現在、中国が調達している戦闘機はすべてが本州を戦闘行動半径に収めています。加えて、中国空軍の新世代戦闘機の量産は当面続き、将来に渡り脅威度合が低下する見通しはありません。

 航空母艦は新しい脅威です。中国は2025年を目処に国産空母を含め空母6隻体制を構築すべくその建造と整備を進めています。中国空母は艦載機の性能限界から、60000t程度の排水量を持つものでも戦闘機を20機程度搭載することが限界であるのでアメリカ海軍のニミッツ級原子力空母や最新鋭新型ジェラルドフォード級原子力空母と比較すれば能力は低い。

 中国海軍には、艦載機用カタパルトを開発する技術がないため艦載機を完全兵装で発艦させることは不可能で、ジャンプ台を利用した発艦を行うため、一時間当たりの発着数も非常に低い。しかし、海上自衛隊にはニミッツ級はなく、自衛隊が総隊以来想定してこなかった大陸以外の太平洋上から艦載機を飛行させる事の脅威度は今までとは比較にならない。

 ロシア空軍、忘れてはならないのがこの脅威度です。ロシア空軍はソ連崩壊とともに断続的に縮小し続けていましたが、2010年代から増強に転じ、具体的にはソ連崩壊の混乱から立ち直るのに20年を要し、原油価格高騰時代を経てようやく空軍再構築の端緒についた訳ですが、続いて2007年の欧州ミサイル防衛システム東欧配備以降欧米との対立が再燃した。

 ロシアの極東配置の空軍力は数の上では限られた空軍力ですが、超音速爆撃機や4.5世代戦闘機等も順次増大中であり、その脅威はアメリカの同盟国である日本、そもそも第二次世界大戦の平和条約と日ロ間ではまだ結んでいないのですが、この日本へも関係悪化が波及し、ロシアからの国籍不明機による北海道や首都東京方面への飛来が増大しているのです。中国本土と中国空母にロシア本土、三方向からの脅威へ防空体制を構築せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま
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