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北朝鮮火星15型弾道弾が29日未明の日本海落下!米本土へロフテッド軌道高度4475km到達

2017-11-30 20:02:44 | 防衛・安全保障
■世界へ脅威,射程13000km
 北朝鮮が二か月ぶりにミサイル実験を行いました、米本土への核攻撃能力整備を期し開発を継続した新型ミサイルと考えられます。

 北朝鮮が29日早朝に弾道ミサイル実験を強行しました。自衛隊による破壊措置は行われていません。菅官房長官は、29日0400時頃に総理大臣官邸にて臨時記者会見を行い、午前3時18分頃に北朝鮮の西岸より弾道ミサイル発射され1発が日本海のわが国排他的経済水域内へ向け飛翔中である、と発表しました。これは北朝鮮の発表により開発中の大陸間弾道ミサイル火星15型であるとしています。

 イージスアショア、防衛省では陸上自衛隊による運用により、陸上配備型イージスシステム、イージスアショアの導入を進め、ミサイル防衛の強化を目指しています。高高度を飛翔するミサイルが落下する前の中間段階迎撃用のSM-3迎撃ミサイルを運用するもので、現在はイージスアショアが高高度のロフテッド軌道で攻撃された場合は打つ手がありません。

 終末段階迎撃は現在、射程250kmのTHAADミサイルと15kmのペトリオットPAC-3のみですが、防衛省はTHAADの導入は予定していません。ただ、イージスアショアは現在レイセオン社が開発中のスタンダードSM-6の運用が可能で、改良型にSM-6- SBT海上配備型終末迎撃ミサイルとして、THAADと同様の落下着弾直前の最終迎撃能力を目指すもので、イージスアショアは2020年代初頭に完成をめざし、将来的に多様な迎撃任務へ活用する事でしょう。

 火星15型ミサイルは高高度へ飛翔し狭い範囲で長距離発射実験を行う事も可能なロフテッド軌道が用いられ、これまでには無い高度4475kmに達し、950kmの距離を飛翔し日本海へ落下しました。仮に火星15型ミサイルが水平飛行した場合、宇宙空間を13000km飛翔する事が可能で、アメリカ東海岸の首都ワシントンDCやニューヨークを射程に収めます。

 アメリカのトランプ大統領はミサイル飛翔中に報告を受け、必要な措置を執ると発言しました。アメリカ本土への核攻撃能力整備へ進む北朝鮮のミサイル開発、今回の火星15型弾道ミサイルは発射映像などからミサイルが大型化した可能性が指摘されています。北朝鮮が執拗にアメリカ本土への核攻撃能力整備を目指す背景は、朝鮮半島情勢へのアメリカの不関与を要求するもので、具体的には北朝鮮による韓国侵攻に際しても不関与を求めるものです。

 朝鮮半島南北統一、1950年に勃発した朝鮮戦争により南北に分断された朝鮮半島の北朝鮮と韓国の悲願ですが、韓国が平和的な南北統一を求めているのに対し、北朝鮮は現体制を維持した上で、平壌の指導体制下に韓国を統一する展望を示しており、核と膨大な通常戦力による軍事的併合、若しくは核戦力恫喝による武力併合を示し、米韓は反発しています。

 国連安全保障理事会臨時会合が日米韓の要請で緊急招集され、アメリカのニッキーヘイリー国連大使は中国とロシアが慎重な姿勢を見せている北朝鮮原油全面禁輸について、協力を求めると共に、トランプ大統領自身も中国の習近平国家主席へ協力を要請しました。しかし、それ以前に北朝鮮は第三国より何らかの手段でミサイル関連資材密輸の疑いがあり、抜け道を経済制裁により塞ぎ、核放棄への国際協議へ名乗り出るよう努力を強化すべきです。

 TEL,片側9輪型移動式発射装置が今回の発射実験に用いられました。これは北朝鮮が国産したとしていますが、中国より木材運搬用として輸入し改造転用した火星12型用と火星14型用片側8輪型移動式発射装置とは異なる新型で、北朝鮮は今年四月の軍事パレードへ簡易トレーラー型移動発射装置にて大型弾道ミサイルを運搬、これは経済制裁を掻い潜り第三国からの入手と考えられる。

 国連は北朝鮮のミサイル開発へ、1998年のテポドンミサイル発射以降、経済制裁を科しており、核開発や核実験と共に制裁を強化しています。しかし、同様に核開発疑惑を向けられたイランへの最盛期の制裁程厳しいものではなく、イランは経済制裁下核開発を断念しましたが、北朝鮮は不充分な制裁下で核開発を強化し全世界を射程とする核戦力整備による恫喝を目指しています、危機の回避へ世界の一致した協力が必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま
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