北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第二九回》はるな型護衛艦と米海軍スプルーアンス級駆逐艦

2017-11-04 20:01:08 | 先端軍事テクノロジー
■日本独自の海上運用装備体系
 くらま、に至るヘリコプター搭載護衛艦、その量産と同時期にアメリカ海軍では新時代の対潜戦闘を担うスプルーアンス級駆逐艦が建造されていました。

 第3次防衛力整備計画のヘリコプター搭載護衛艦はるな型、はるな、ひえい、しらね、くらま、第一世代のヘリコプター搭載護衛艦は艦首に続き51番砲と52番砲を有し、中央部に巨大な上部構造物、しらね型護衛艦しらね、くらま、からはシステム艦としてコンピュータを搭載し、大型の航空機格納庫と艦尾に掛け長大な飛行甲板を配置する構造です。

 はるな型護衛艦建造に際して様々な船型が構想されましたが、その一つ、全通飛行甲板採用案は最初に不採用となりました、基準排水量4700tという規模で艦内格納庫にヘリコプター3機を搭載しますと、船体規模に対し格納庫容積が異常に増大し、重心不均衡と荒天時に転覆の危険性が高まり、昇降機故障時には航空機運用全般が停止する事を危惧してです。

 はるな型護衛艦構想段階のもう一案は艦砲二門の内、51番砲を前甲板に配置し、52番砲を後甲板に配置、その上で上部構造物と飛行甲板を船体中央部に配置する案が検討されました。これは、はるな型護衛艦竣工の1973年より二年後、1975年からアメリカ海軍が31隻を大量建造しましたスプルーアンス級駆逐艦の船体構造と共通するものといえましょう。

 スプルーアンス級駆逐艦は、対潜対水上対空の各種兵装を搭載すると共にSH-2F LAMPSヘリコプター2機を搭載、基準排水量5800t、満載排水量7800tの大型駆逐艦で水上戦闘艦としての静粛性徹底構造、システム艦として海軍戦術情報システムNTDS初搭載、長大な航続距離、将来発展性への構造余裕、ガスタービン推進方式、という設計特色を有します。

 はるな、は1968年度予算にて調達され1970年より建造開始、1973年に自衛艦旗を受領し竣工しました。対してスプルーアンス級の一番艦スプルーアンスは1972年に建造開始、1975年に竣工していますので、日米での技術交流等の事実はありません。しかし、スプルーアンス級駆逐艦の建造計画そのものは1962年のシーホーク計画として着手されました。

 シーホーク計画はアメリカ海軍が運用していた第二次世界大戦中の旧式駆逐艦、FRAM艦隊近代化計画によりレーダーや兵装を最新型としているものの老朽化と基本設計の古さが否めない艦艇を置き換えると共に、余裕ある船体を採用し大量退役が迫る艦砲重視型の大戦型巡洋艦の置き換えも構想していたもので、当初は1969年に一番艦竣工を目指しました。

 スプルーアンス級駆逐艦の建造が当初計画より6年の遅れを以て竣工した背景は、それだけ多種多様な技術を盛り込んだ為ですが、同時期に構想していた海上自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦、偶然にも構想した船体構造の一つにスプルーアンス級駆逐艦の51番砲を前甲板に配置し飛行甲板を含む上部構造物を中央、艦尾に52番砲と共通していたのです。

 船体中央部に飛行甲板と航空機格納庫を配置する利点は、船体中央部から海上の波浪に動揺する船体は軸線を船体中央部に併せ規則的に動き、荒天時もそれ程飛行甲板が揺れないという特性があります。これは、1982年に一番艦が竣工した護衛艦はつゆき型の設計で採用され、はつゆき型護衛艦の飛行甲板は広くは無いものの、発着は容易であったとのこと。

 しかし、はるな型護衛艦は最終的に飛行甲板を船体後部へ配置する構造を採用しました。船体中央部へ飛行甲板を配置する場合、その全長が制作される事となるのです。更に、飛行甲板を最大長確保した場合には発着時に艦尾の52番砲がヘリコプター発着を阻害し、ヘリコプター運用を第一とする場合は飛行甲板を後部甲板全体に配置する案が理想的でした。

北大路機関:はるな くらま
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