◆予備役は必要だが課題は山積するばかり
前回に続いて、今回のこの大学生を対象とした特務即応予備自衛官制度案の課題について、見てゆきましょう。
課題は他に、大学生を秋季入学以前に訓練したとして一等即応予備自衛官の他に二等即応予備自衛官という制度を構築しなければなりませんが、その小隊を誰が指揮するか、指揮官の問題が出てくるわけです。他の陸曹即応予備自衛官を陸曹教育隊出身の人員を確保しなければなりません。
四月五月六月七月、十月十一月に他の即応予備自衛官を訓練すればいい、と前述しましたが四月五月六月七月、十月十一月には陸曹と幹部だけが訓練し、休暇の期間に応じ一月二月三月八月九月十二月に二士一士士長が訓練する、という方式では部隊訓練になりません。
いっそ、特務即応予備自衛官経験者で研究者志望の大学院進学者を中心に休学期間を設定し陸曹教育隊にて教育を行い大学院生の特務即応予備自衛官を陸曹とする制度、その後のポスドクや非常勤講師を中心に博士号を授与されたのちに幹部候補生学校に進ませるという方策はどうか、と。
戦前の帝国陸軍じゃああるまいし、学位を予備将校に連動させるなど何と時代錯誤な考え方なのか、という指摘はあるかもしれませんが、特務幹部というかたちで、常備自衛官と連動させない方策として、考えてみる価値はあるのではないでしょうか、その場合、最大任期をどのくらいとするべきか、という視点はでてきましょうが。
その場合、雇用企業給付金は本人に給付、非常勤講師を中心に訓練期間を年間三十日間の即応予備三尉に任官させれば、ある程度、学部生と非常勤講師で多少は大学の休暇と訓練召集応召可能時期は重なるのかもしれませんが。自分でも何を考えているのかわからなくなってくる。
課題は最後に、戦闘職種には女性自衛官が入ることが出来ないため。女性特務即応予備自衛官制度をどう展開するか、ということ。男女平等は行きすぎないようにとの指摘もあるでしょうが、やはり21世紀、女性自衛官への門扉を閉ざすことは制度として難しく、しかし、教育隊の区隊は男女を統合する事は出来ません。
すると女性自衛官教育隊と即応予備自衛官として輸送隊等の部隊を置く必要があり、制度を複雑化させます。特務即応予備自衛官制度の定員は、管区普通科連隊第二大隊の即応予備自衛官中隊に配属させる前提として、試算を進めてゆきましょう。
更に女性自衛官を仮に防衛出動に際し絶対必要となる輸送力不足の解消などへ輸送隊等を特務即応予備自衛官で編成するべく方面隊隷下の方面混成団に所属させるとして所要中隊数は多く見積もって50個中隊程度、定員は基幹要員を現役自衛官で充足するとして概ね最大で9000名、というところ。
ただし、脱落者を想定し特務即応予備自衛官応募の自衛隊候補生定員枠は12000名、毎年の応募枠を4000名、とするべきでしょうか。厚遇のつもりではありますが、広報を相当徹底しなければ必要な人員は集まらないかもしれません。
広報の徹底、現在の広報では大学進学率が一定以上の水準に或る高校では説明会を開いていないという状況があり、特にこの制度が目指すものは四年制大学の秋季入学を目指している大学生ですので、説明会の批准と実施校を現状とはもう少し踏み込んだものに考えてゆく必要はあるでしょう。
ただ、課題には秋季入学大学と春季入学大学を閉眼し、秋季入学大学ではなく春季入学大学の方に進学してしまった場合、この制度の根幹である大学入学前の着隊に、前期教育も後期教育も受けることが出来なくなるという制度上の非常に大きな難点があります。
予備自衛官補という公募制の制度はありますが、残念ながらその手当は学費を賄うほどのものではありません。我が国の秋季入学制度は、まだまだ一部の大学、国際的な教育水準に合致するべく留学生の批准を高めている改革の一端として行われている程度で、現状多くはありません。
折角特務即応予備自衛官候補生課程に合格したのに、これではもったいない。学費の心配をするのならば、元々春季入学の大学を選ばなければ、と思われるかもしれませんが、やはり滑り止めは必要となります、まあ、三月のこの時期に行う話題ではありませんが、ね。
人件費もかなり大きなものがありますので、これも課題の一つ。年額121万2000円、ボーナスはつきませんので二等陸士よりは俸給は少なく、衣食住の保障もありませんので、待遇は常備自衛官ほどではないのですけれども、やはりこの水準で人員を増やすとなると厳しいものがあります。
このように、課題だけは色々と考えられるわけです。しかし、予備役を確保する、それも現状の年間訓練期間五日間という限られた練度しか維持できない予備役制度ではなく、ある程度実任務に対応できる要員を確保する、というものならば、検討の価値はあります。次回は、指揮と教育の課題などを考えてみましょう。
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