◆日米4万8000名が参加
防衛省によれば昨日11月5日より日米共同統合演習キーンソード2012が開始されたとのこと。
今回の日米共同統合演習は二年に一度実施されるもので参加規模は自衛隊3万7400名と米軍1万名、これに自衛隊が艦艇30隻と航空機240機を投入するという規模の演習ですが、同時に基本的に報道公開を行わないとのことで、こういうところに今回の演習の例年と異なる部分が見えるようです。
参考までに前回の日米共同統合演習は2010年、この時の自衛隊参加部隊は陸海空自衛隊より3万4100名、艦艇40隻と航空機250機が参加、米軍からは第13空軍を主力とし人員1万400名、原子力空母ジョージワシントン以下艦艇20隻と航空機150機が参加しました。
演習参加部隊の規模は人員でやや増加、一方で艦艇数が参加規模として縮小されている、という印象を受けるでしょう。なお、この2010年の演習では空中給油訓練や弾道ミサイル防衛部隊の展開に日本側の基地へ米空軍機が前方展開し拠点化を行う訓練なども報道公開されていまして、この点が今回と違うところ。
2010年の時点で当時の米軍側指揮官カーライル空軍中将は、日米共闘統合演習を、二か国間で行われる演習としては世界最大規模の演習、という表現を用いています。2012年の今回の演習についても演習全体の規模としては同様の表現を用いられるでしょう。
演習期間は5日から16日までの12日間を実施予定としており、演習区域として沖縄及び九州、そして北海道と秋田沖などで実施するとのこと。主として近年特に重視されている島嶼部防衛、特に占領された離島の奪還を目的とした訓練となるようですが、詳細は公表されていません。
今回の主体となるのは海上自衛隊と航空自衛隊となるようで、九州と沖縄に北海道と秋田沖の演習空域では海上航空の共同作戦を演練するとのこと。一方で当初計画では沖縄県の入砂島を舞台として離島奪還の実動訓練も実施する計画でしたが、これは外交配慮により実施が直前に中止されました。
園主内容については公表されていないのですがこれまでの訓練が反映されるのでしょう、昨年のこの時期には自衛隊統合演習として北海道の第七師団装甲部隊が室蘭から大分港へ戦車と装甲戦闘車などを洋上展開させ、日出生台演習場を離島に見立て部隊を展開させ奪取する訓練を行っていましたね。
ただ、島嶼部防衛の実動訓練はもう少し丹念に地元との調整を行った上で実施するべきでしたね。過去には1999年に硫黄島へ陸海空自衛隊の協同揚陸訓練が行われていますし、毎年協同転地演習では輸送艦からの揚陸訓練が行われています。一見して一般には同様の訓練が行われているのですから、根回しの余地はあったはず。
一方で実施する価値は大いにありました、揚陸と上陸は異なる概念だからです。一般に同様の訓練、と表現を選びましたが自衛隊が実施するのは揚陸、部隊を我が勢力圏に揚げる訓練はかなり実施しています。しかし、彼我混交の競合地域に行うのは上陸、この上陸訓練というのは自衛隊ではあまり行われていません、だから米軍と協同し実行すべきだった。
さて、軍事的には特にデータリンクや後方支援の実施状況などで自衛隊は中国軍よりも圧倒的に進んでいます、そして更に先を往くのは米軍で、データリンクを行う事で部隊が一体化し最大限の火力投射を効率化できます。今年実施された陸上自衛隊の北米実弾射撃訓練カルフェックス2012でもデータリンクが主眼とされ実施、こちらも余り報道公開されていません。
なお、陸上自衛隊は現在、饗庭野演習場において第10師団が米第25歩兵師団とともに7日まで日米共同実動訓練オリエントシールド2012を実施しています。これはストライカー装甲車が我が国において初参加となるもので、ストライカーそのものは凡庸な装輪装甲車ですがこの車両を輸送可能なC-130輸送機500機を保有する米空軍が支援することで緊急展開部隊として高い能力を発揮可能です。
併せて西部方面隊は11月2日から22日まで、平成24年度方面隊実動演習が日出生台と十文字に目達原と健軍に春日で第4師団、第8師団、第12旅団、中央即応集団参加で人員5400名、車両1500両、航空機30機の規模で実施中、北部方面隊協同転地演習として第5旅団が760名と戦車4両含む270両が12月まで日出生台に展開、第12旅団も一個連隊戦闘団を転地演習として参加させています。演習は同時進行するものと併せればかなりの規模のものとなっているといえるやもしれません。
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