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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮弾道ミサイル危機 田中防衛大臣、ミサイル破壊命令へ備え準備命令発令

2012-03-27 22:34:24 | 防衛・安全保障

◆避けては通れない“ミサイル防護ギャップ”問題

 田中防衛大臣は本日午前、防衛省での防衛会議において沖縄周辺へイージス艦とペトリオットPAC-3部隊を展開させ、弾道弾の飛来へ備える準備命令を発令しました。

Mimg_6914_1 これは自衛隊法に基づく弾道ミサイル破壊命令に備え、部隊の展開を行うことで、弾道弾の飛翔経路に沿い、全国のレーダーサイトでは弾道ミサイルへの警戒を高めると共に、今後は直衛の護衛艦と共にイージス艦が展開、沖縄本島や石垣島へペトリオットミサイルの高射隊が展開することとなるでしょう。

Mimg_6288 さて、先日NHK国会答弁を聞き流していたところ、弾道ミサイルからの国土防衛の最後の盾となるPAC-3について、その射程が15km程度と短いことから国土の大半を防空圏外としている現状へどう認識しているかを田中防衛大臣へ問うている一幕がありました。即ち、弾道弾脅威に際しその防護圏外に居住する国民がパニックに陥るのではないか、と。

Mimg_6352 海上自衛隊のイージス艦6隻のうち、4隻には弾道ミサイル防衛能力が付与されていて、弾道弾迎撃用に射程1300kmのスタンダードSM-3を搭載し警戒に当たっていますので、護衛艦隊護衛隊群の8個護衛隊に全てにイージス艦を配備するべく更に二隻のイージス艦を配備できれば、変わってくるとは思うのですが、現代のミサイルギャップ、いやミサイル防護ギャップというべきか、真剣に考える必要はあるでしょう。

Mimg_4340 ミサイル防護ギャップ、PAC-3は弾道弾を直撃し破壊するのですが射程が短く本来は航空基地や艦艇基地に戦略的補給拠点など戦略拠点防護用の装備ですので、国土に隙間なく敷き詰める防空体制というものは不可能、従って今回のように石垣島上空を飛行すると明示がある場合では展開も考えられるのですが、奇襲的に運用される場合には配備されている分屯基地を中心とした運用しか為せないところ。

Mimg_8857 航空自衛隊では戦闘機による対領空侵犯措置任務の空域が全国にほぼ均等となるよう整備されているのに対して、もちろん航空優勢維持と弾道弾攻撃対処は異なる概念ではあるのですが、一般的な視点から見れば対領空侵犯措置そして戦闘機や爆撃機の進入に備える戦闘機は全国均等なのに対し、弾道ミサイル防衛だけは不均衡とあっては生存権やら財産権やら思い出してしまうかもしれません。

Mimg_5952 PAC-3は射程15km程度、迎撃高度によっては13km程度にもなるようですが、例えば米陸軍が弾道ミサイル迎撃用戦域高高度防衛ミサイルとして開発しているTHAADであれば、射程は200km程度とされ、迎撃高度は最大150km、かなり広範囲を防空することが可能。プロジェクトコストが100億ドル以上と日本が取得する場合、ユニットコストに開発費分担分が課せられ、非常に高くなることが予想されますが、配備するほかないことにもなります。

Mimg_0439 弾道ミサイル防衛は、既存の防衛費枠内で行われる以上ほかの正面装備の取得を圧迫しますが、THAADであれば、中国大陸から我が国を標的とする核ミサイルに対しても、これは射程が長い分落下速度が増大するため迎撃の難度が北朝鮮からのものよりも高くなっているのですが、可能となる余地があります。

Mimg_0070 これまでは核恫喝には核抑止を以て応える相互確証破壊が一つの概念として定着していたのですが、日本はTHAADを装備することで、核兵器を持たず核恫喝に軍事的に対処する新しい抑止構造が生まれるかもしれません。そうした意味で意義はあるといえるでしょう。分かりやすく言えば、戦略ミサイル原潜部隊の整備コストと比較するべき、ということ。

Mimg_0463 ミサイル防護ギャップというものを、これはミサイルの射程と配備数を考えれば自然に気付くことではあるのですが、対潜哨戒、本土着上陸、様々な部分で全国に均衡的な抑止力をめざし防衛力が整備される中、もう少し世論として広く認識されるならば、弾道ミサイル迎撃体制の拡充という政策にも理解は出てくるのでしょうか。もちろん、地対空ミサイルが通常の攻撃ではないされないよう防衛力の均等化は必要ですので、予算全般が増勢を求められることになりますけれども。

Mimg_9238 こうした意味で、もちろん緊縮財政が叫ばれる今日ではあるのですが、元々日本は防衛費が国家予算に占める割合が低く、部隊編制を遡れば不況期に画定されたものが多く、不況期に維持しやすい編制です。弾道ミサイル防衛について、もう少し負担というものはできるのか、それともミサイル防護ギャップは容認せざるを得ないものとして国民が全般的に納得するのか、これは主権者として判断を迫られることとなっているやもしれませんね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (8)
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