◆鳩山総理、“断念”という決断
時事通信が本日報じたところによると、普天間飛行場移設問題の五月決着を断念したとのことです。何か決めなければ、という事で決められないということを決めましたようです。
普天間、5月決着断念:=地元、米との合意困難-政府・・・政府は10日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題について、鳩山由紀夫首相が表明した5月中の決着を事実上断念した。米側、移設先の地元、連立与党の了解を月内に得るのは困難と判断した。首相は5月中に政府としての移設案を決定し、6月以降も米側や地元と協議を続けたい考えだが、首相の政治責任が厳しく問われそうだ。首相は同日昼、岡田克也外相、北沢俊美防衛相、平野博文官房長官、前原誠司沖縄担当相と首相官邸で協議。沖縄県内移設に鹿児島県・徳之島への基地機能移転を組み合わせた案で、関係自治体と調整を進める方針を確認した。嘉手納基地など沖縄県内での米軍訓練を全国の自衛隊基地に分散移転することもパッケージとして示して、地元の理解を求める考えだが、沖縄県と徳之島の地元関係者、社民党はこうした方針に強く反発。米側の同意を得られる見通しも立っていない。前原担当相は首相らとの協議後、衆院沖縄・北方特別委員会で、小池百合子氏(自民)の質問に対し「地元の理解を得るための不断の努力は、5月を越えてもしていかなければならない」と強調。「政府としての考え方を今月中にしっかり決め、合意を得るための努力を行う」と語った。 (2010/05/10-18:34 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010051000781
首相自身の言葉なのですが、まだ二十日程度あるのですから、またブレるといいますか、再度一転して固まる可能性もある中で、こういう報道が出てきました。普天間移設問題は、日米関係に関する首脳外交の入り口に位置する問題となり、今日に至ります。今後の日米関係を考える上で進めなければならない議論や、今日的な問題としてはギリシャの経済危機に起因するユーロ危機への発展と言う可能性を前に、基軸通貨であるドルを司るアメリカ、そして相対的に地位は変動した、という状況ではあるのですが円を管理する日本。この二つの国が強烈に結びつき、例えば1997年のアジア通貨危機の際にアメリカの反対で実現しなかった日本主導のアジア通貨基金構想のようなかたちで、通貨危機や経済危機に対応する枠組みを世界の様々な地域に構築するべきなのか、別の対処法があるのか、というような問題にも対応してゆくことが必要でしょう。しかし、その入り口に入れない。こういう意味からも、なんとか首脳外交に潤滑油を注ぐべく、普天間問題の解決、という事を行う必要があるのでしょうね。しかし、辺野古沖に杭打ち方式、ということで一定の解決に向かう、と見通しがでていたようなのに、残念ながら政府部内での調整がとれなかった、というかたち。参院選後に民主党が参議院で単独過半数を抑えたうえで連立解消を行い、という見方もしたいところですが、民主党の支持率と鳩山内閣の支持率は二割台という現状。来年五月末に、という結論先延ばしもあるのですかね。
現在の移設先案として、沖縄県内案は、主に辺野古沖に自民党合意の沿岸案とは異なる方法で、杭打方式か、もう少し沖合を埋め立てる方式、メガフロートを浮かべる方式に落ち着いた、という状況でしょうか。いままでホワイトビーチ沖に滑走路四本を有する超巨大海上基地を建設して、普天間飛行場、航空自衛隊那覇基地、嘉手納基地の一部訓練を移転、というどのくらいの予算を要するかわからない方式や、キャンプシュワブ内陸部に海兵隊が必要とする航空機が着陸できない程度の滑走路を建設する案、普天間飛行場を滑走路縮小運用して住宅地から離れたと言い張る案等、提示されていたのですけれども、辺野古沖案以外は鳴りを潜めました。打って変って、鹿児島県の離島である徳之島に訓練の一部を移転しようという案、この案には1500名程度を常駐させる案から純粋に訓練だけを移設する案など多々出ています。他には築城基地、新田原基地、芦屋基地、大村航空基地、鹿屋航空基地を訓練巡回させる案が出ていますが、そもそも海兵隊はこうした訓練を受け入れていません。訓練の為に発着するのは、戦術飛行訓練や航法訓練というよりも、どちらかというと海兵隊員の機動力としての飛行訓練ですから、演習場と往復できなければ無意味になってしまう訳です。
さて個人的には、単純な発着訓練のみのフライトと、兵員輸送など演習場か訓練場との間を往復するフライトの割合がどの程度なのか、というのが気になりますね。後者は移転できないでしょうが、前者であれば、という可能性もあります。後者と連動して発着訓練を行うのならば移転には九州に新しい演習場を確保する必要があります。九州には日出生台演習場がありますが、面積では沖縄の北部訓練場の約半分ですし、流石に現在の状況で九州に新しい演習場を建設するか日出生台演習場を拡張する、というのは現実的ではないです。日出生台演習場を開放して九州の第四師団、第八師団が北部訓練場を間借りして、というのは、ちょっと演習場に行くために専用の輸送艦が必要になりますしこちらも非現実的。・・・、日出生台演習場を米軍管理に移行して北部訓練場を陸上自衛隊が管理、運用を今のままにすればかたちの上では北部訓練場が自衛隊演習場になって、“全国米軍用地の面積で75%が沖縄に集中”という状況を替えることは出来るのですが、これは無意味ですね。結局のところ、米軍の九州巡回訓練方式、というのは現実的な案とは言えない訳です。こうなりますと、沖縄県外移転というのはいよいよ非現実的で、五月末までに結論、というのは県内でなんとかしなくては実現には至らないでしょう。
海外移転案で、普天間飛行場のテニアン移転案を民主党部内で個人的に検討している方や社民党の案として上がっています。いっそのこと首都圏の議員宿舎をテニアンに移転しては、と思う訳ではありませんが、朝鮮半島と台湾を考えますと沖縄と比べテニアンは如何にも距離があり過ぎます。沖縄の負担軽減、というのならば、例えば那覇基地の航空自衛隊F-15飛行隊の訓練を移転する検討、このためには空中給油機の増勢が必要になるのですけれども、こちらのほうが負担軽減につながるでしょう。他にも第15旅団が将来部隊を増強する場合の演習地を、この場合、高速カーフェリー型の輸送艦が必要となるのですが、テニアンに移転するために交渉を行った方がまだ現実的です。リムパックの際には生地演習を行っているようなので、戦車砲や榴弾砲の実弾射撃を狭いテニアンで実施できるのかは未知数ですが、本土の師団や旅団についても転地演習を行う、というのは一つの選択肢になると思います。それはさておき、沖縄県内の自衛隊訓練で可能なものがあれば、それをテニアンで実施する、という案を軸に検討してはどうか、と逆に思ったりする次第。
HARUNA
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