■近鉄特急乗車記
近畿日本鉄道は、私鉄として最大の路線網を有し、同時に大阪は難波と名古屋を結ぶ名阪甲特急を始め、伊勢神宮や賢島、奈良、京都までを、その特急網にて結んでいる。さて、十二月八日ということで、何故か名阪甲特急の乗車券をプレゼントされた。
近鉄21000系、通称“アーバンライナー”は、1988年より導入が開始され、難波と名古屋を結ぶ名阪甲特急に導入が開始、当初毎日6往復の限定導入が1991年には全ての往復が21000系へと代替され、この長距離区画を約二時間で結んでいる。
甲特急とは、難波~名古屋間は、難波付近の連絡駅を例外としてノンストップで運行されるものという意味である。
近畿日本鉄道は、1947年10月8日より、座席指定方式の特急運用を開始し、そのシンボルとしてビスタカーを導入した。
ビスタカーは三世代に渡り近代化を進め、中間部分の二階建ての近鉄特急として親しまれている。この最終発展系というべきビスタカーⅢはアーバンライナーの導入を受け1997年に近代化改修をうけ、ビスタカーEXとして今尚主力特急群の一翼を担っている。
近鉄難波駅の構内。駅は大阪市営地下鉄御堂筋線やJR,また南海電鉄の難波駅と隣接しており此処で乗り継ぐことで、近鉄沿線から南海特急ラピートにより関西国際空港へ連絡が可能である。
特筆すべきは、大阪名物の立ち飲み居酒屋からコーヒースタンド、更に喫茶店などが軒を連ね、お土産売り場や弁当販売などが充実している。これは、長距離旅客鉄道的なもので都市間通勤鉄道の阪急などとは対照的な光景である。
いよいよ乗車である。やや、しなったホームの様子は、Uボートのブンカーを髣髴とさせる阪急三宮駅とは全く異なったつくりで、記憶では名鉄名古屋駅と同規模の、若しくは少し小さいホームくらい思う。ホームでは特急券の自動販売機も設置されており、指定席特急が特別な列車ではなく、一つの区分として体系を為している事を意味するのだろうか。アーバンライナーは6両編成であるが8両編成の編成も運行されている。
1959年9月26日から27日にかけ、和歌山県潮岬に上陸した超大型台風は半径300kmを暴風圏に包み、紀伊半島から中京地区を直撃、死者行方不明者5100名、流失家屋2400、全半壊家屋15000、被災者1530000名の大災害に発展し、自衛隊は延べ73万人の派遣を実施した。後に伊勢湾台風と呼ばれたこの未曾有に大災害により近畿日本鉄道は、その本線全域が架線崩落、軌道崩壊などにより不通となり、これを契機に近鉄本線の標準軌への改修工事が行われた。
1960年1月20日、狭軌(1067㍉)から標準軌(1435㍉)に改軌が成った本線に初の甲特急が運行された。国鉄の電化部分が極めて限定的で加えて東海道新幹線開業が1964年であるから、それに先立つ1960年に、大阪~名古屋のノンストップ特急の運行は革新的であった。更に輸送需要に合致させるべく1988年3月18日のアーバンライナー導入にあわせ大規模なダイヤ改正を実施、営業速度を120km/hに向上させ、今日に至る。
車内は全車指定席で、長距離を立ち乗り、というリスクは無い。列車は一般車というべきレギュラーシート(写真)と、先頭車に配置されているDXシートに区分される。DXシートは420円の特別料金が必要であるが、レギュラーシートもリクライニングシートで、座席全体が傾斜する方式でありJRの特急よりもこの部分が優れている。フットパットや収納式テーブルを内蔵し、ヘッドパットには近鉄特急のイラストが描かれたカバーが被せられている。
車内に設置されているサービスを写真にて紹介する。長距離を走行する近鉄特急は、私鉄特急としてはこの分野が充実していたが、残念ながらビスタカーのようなエントランスコンパートメントは設置されていない。アーバンライナーはその名の通り都市間特急、ということなのだろう。車内に設置されている自動販売機。“はるか”や“しらさぎ”のものよりもやや大型のものであるが、何故か炭酸飲料は販売していない。価格は120円であるが、車内販売は為されていない。
喫煙コーナー、この装備は今日の長距離特急では必須の装備というべきものかもしれない。
ちなみに、1994年より観光特急として近鉄が運行する23000系、通称“伊勢志摩ライナー”では、こうしたサービスに加え、簡易ビュッフェというべき“シーサイドカフェ”が設置されており、更に大型の窓と簡易座席を併せたパノラマデッキが配置されている。
車内に設置されている電話機。通話困難区間ではランプの点灯時間に合わせて通話するという、新幹線の電話機とほぼ同じものである。
この他、おしぼりサービスや洗面台、トイレなどが設備として配置されている。なお、かつての近鉄特急にはウォータークーラー(冷水器)が設置されていた。紙コップを用いる、懐かしい0系新幹線とほぼ同型ものもが置かれていたように記憶する。
大阪の三宮、旭屋書店本店にて購入した書籍にざっと目を通し、難波駅にて買った巻寿司を腹に収めると、手持ち無沙汰というか、なんというか。もう一冊の本、これは阪急かっぱ横丁にて調達した古本なのだが、それを鞄から引き出すついでに先ほどの自販機まで歩き、男なら黙ってダイドーブレンドコーヒー!。旭屋書店本店は、学術書などが充実しており、恐らく京都の二つあるジュンク堂書店より質・量共に多く、重宝している。
そうこうしている内に、名古屋の夜景が見えてきた、いよいよ近鉄名古屋駅が近づく。車内の液晶モニターにはそれまで流れていた現在位置や本日のニュースなどの表示が終了し、名古屋が近いことを表示している。
1800時難波駅を出発し、2005時近鉄名古屋駅に到着する。近鉄には名阪の主要駅に停車する乙特急があり、これは上本町、鶴橋、八木、名張、津、白子、四日市、桑名に停車する。
中々快適な特急であった。近鉄名古屋駅。近鉄難波駅よりもホームの数が多い。また、やや明るいように思う。ここは二つの特急専用ホームと二つの通常ホームに分かれている。同駅は名鉄名古屋駅、JR名古屋駅と通路にて結ばれている。皆さんも中京方面にお出掛けの際は、新幹線以外にも近鉄特急を楽しまれてはいかがであろうか。
HARUNA
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