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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊次期多用途ヘリコプター候補

2006-12-07 23:35:35 | 防衛・安全保障

■ベル412が最有力か?

 陸戦専門誌などでは陸上自衛隊では、現行のUH-1Jに代わる次期多用途ヘリコプターの選定が行われていると、伝えられる。また、その中でUH-1の双発改良型のベル412が有力であるとも記されている。特に、来年度予算に三ヵ年分のUH-1Jが先物取引の如く発注されることもあり、私見ながら選定はまだ先の話といえるのだが、次回調達は新型機となる可能性も否定できない。

Photo_206  現在、陸上自衛隊の主力多用途ヘリコプターとして運用されているのは、1956年にアメリカのベル社において初飛行したUH-1のエンジン出力を強化したUH-1Hを基に、富士重工が更にエンジン出力を向上、加えて機体防御装置などを加えたUH-1J型を装備している。特にエンジンに関してはAH-1S対戦車ヘリコプターと同型のものを搭載し、当初陸上自衛隊に導入されたHU-1B型とは別物といって過言無い性能を有している。

Img_2371  UH-1J多用途ヘリコプターは、従来、方面総監直轄部隊である方面ヘリコプター隊に約20機が配属され、各方面隊に一個普通科中隊の空中機動能力を付与させ、機動運用を期していたが、1990年代以降の師団改編に伴い、師団飛行隊や旅団飛行隊に対しても3~4機の多用途ヘリコプターが配備されるに至り、小隊規模の緊急展開や物資輸送、負傷者緊急搬送や災害派遣などに充てられている。この背景にはゲリラコマンド対処には少数部隊であっても即応機動運用の重要性がある為であろう。

Photo_208  単発エンジンのUH-1Jでは、万一のエンジン故障時に墜落の恐れありとして、ベル212の採用が一時期検討されたといわれる。同機はプラット&ホイットニー社製CPT6T-3エンジンの双発で、日本では海上保安庁などが採用している。その信頼性は高く、アメリカ海兵隊では人員輸送用に、また海軍はヴァートレップ(海上物資輸送)用、空軍の救難捜索用に159機を採用しており、イタリア軍、カナダ軍などでも採用され実績を挙げている。

Photo_209  しかしながら、米軍ではエンジン出力の限界などから、ローターの四枚化とエンジン出力や電子機器を一新したUH-1Yの採用を決定している。今回、次期多用途ヘリコプターとして名前が挙がっているベル412は、四枚ローター化したことで、ベル212と比較して騒音の低減や速度の50km/h向上などが上げられている。また最大離陸重量も300kgほど増えた約5.4㌧で、富士重工が有するUH-1J用の生産レーンと共用部分が多いという利点がある。

Photo_210  ただし、現在同時に海上自衛隊ではTH-Xとして次期回転翼練習機の選定を進めている。写真のSH-60Jのようなヘリ多数を運用する海上自衛隊は現在、練習用にOH-6Dを運用しているが、その老朽化に伴い、後継機として欧州製の中型ヘリコプター二機種を挙げてその選定を急いでいる。場合によっては、機体規模も共通部分があり、その系統を想定に加え、陸海で同型のヘリコプターを考えてもよいのではないか。

Photo_211  一方で、併せて陸上自衛隊に配備が進められるUH-60JAは、東部、西部方面隊の一部と第12旅団、第一混成団に配備が進められているが、50億円前後という価格が調達数の伸び悩みに繋がっている。航空自衛隊の救難ヘリUH-60Jの生産と併せ一定の調達数を維持しているが、いよいよ航空自衛隊では充足が近づき、更に海上自衛隊は設計を改めたSH-60Kに移行する為、一括調達を行うなどして生産ライン維持の見通しを確保しなければ、長期少数生産による価格高騰に繋がる恐れがある。

Img_7303 例えば、UH-60JAを特殊作戦群用に集中運用し、この際アエロスパシアルAS-332や、その後継機であるEC-225などの導入や、海上自衛隊が掃海輸送ヘリとして採用したMCH-101の輸送型EH-101などの導入も検討してしかるべきではないかと思うのである。

HARUNA

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