ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#398

2020-10-25 23:23:05 | 刑事ドラマ'80年代










 
☆第398話『名残り雪』(1980.3.14.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=木下 亮)

ある夜、不動産会社に強盗が押し入り、通報を受けて駆けつけたスニーカー(山下真司)の目の前で後輩巡査が射殺されてしまいます。

すぐに関口(西岡徳馬)という前科者に容疑が絞られ、検挙に燃えるスニーカーは1ヶ月前まで関口の恋人だったらしい美容師=佐知子(友里千賀子)を徹底マーク。

佐知子はサブリナよろしくパリで美容師修行すべく、1週間後に現在勤めてる店をすっぱり辞めて渡仏する予定。それはまとまった金が手に入らないとなかなか出来ないこと=関口に強盗をそそのかした可能性が高いってことで、スニーカーは頭から佐知子を疑ってかかります。

ところが、彼女の日常を見れば見るほど、その朗らかで優しい性格に、スニーカーは惹かれていっちゃいます。

2年前に佐知子が結婚詐欺の被害に遭ってたことも判り、単純なスニーカーは「彼女はきっと関口にも騙されて付き合ってたんです!」「関口は彼女にフラれてヤケになって強盗をやったんです!」と息巻き、一緒に張り込む長さん(下川辰平)に「ああ、そうかも知れないな」「それも有り得るな」と聞き流されますw

で、佐知子のマークは「張り込み」じゃなくて「ボディーガード」なんだと自分に言い聞かせたスニーカーは、彼女に絡んで来たチンピラ2人組をフルボッコにして日頃のストレスを発散するのでしたw いいぞ、もっとやれ!ww そんなスニーカーをもっと早い時期に見たかった!www

いやホントに、これまでのスニーカーが(登場編を除いて)大人しすぎたんです。同じことをロッキー(木之元 亮)がやったら気が狂ったようにしか見えないけどw、スニーカーならまだ許される。こういう場面が1つあるだけでドラマが弾むんだから、どんどんやるべきなんです。

で、すっかり仲良くなって一緒に帰って来たスニーカーと佐知子を見て、長さんが呆れ返るという黄金パターンw それでいいんです!ww ロッキーの寒いジョークを聞かされるより百万倍いい!www

「あ、雪だ」

「ほんと……名残り雪ね」

「名残り雪?」

「私の田舎では、みんな雪が降るとホッとするんです」

「どうして?」

「春を告げる雪だから……ほら、淡い雪だからすぐ溶けちゃうでしょ?」

「ほんとだ」

いいシーンなんだけど、小道具の雪だから実際はぜんぜん溶けてないのが残念ですw でも、バックに流れるボンのテーマのバラードバージョンが切なくてホントにいい!

今回はテーマ曲もブリッジ曲もかなり控えめで、ボンのテーマだけが効果的に使われてます。スニーカーは今は亡きボン(宮内 淳)との交流がきっかけで刑事になった人だから、BGMが単なるBGMだけで終わらないワケです。

もちろん、ほっこりすれば次に危機が訪れるのも刑事ドラマのお約束。無事に送り届けたはずの彼女のマンションから銃声と悲鳴が聞こえ、すぐに駆けつけたスニーカーは関口と鉢合わせするんだけど逃げられちゃいます。

佐知子は撃たれたけど幸い軽傷で済みました。経過観察のため入院となった彼女は、付き添うスニーカーの前で涙を流します。

「刑事さん。人に嫌われるのが怖いって気持ち、お解りになりますか……小さい時から私、ひとりで……人に嫌われるってことは、生きていけないってことでした。いくら……いくら騙されても!」

幼少期に両親を亡くした佐知子は、知人を頼りながら何とか独りで生きてきた中で、男には何度も騙された。だから仕事で独立したい気持ちが人一倍強く、明後日に迫るパリ行きも延期する気はまったく無いようです。

「私、生まれ変わりたいんです。こんなこと、早く忘れてしまいたいんです。でないと、私には春が来ない……そんな気がするんです」

「なに言ってるんですか。あなたみたいな人に、春が来ないはずが無いですよ!」

ますます佐知子に肩入れしたスニーカーは、彼女が無事に旅立つまで守り抜く決意を新たにします。

ところが! なぜ関口が佐知子をわざわざ殺しに来る必要があったのか、なぜ張り込みの盲点を突いて彼女のマンションに侵入することが出来たのか、不自然な点が多いことから先輩刑事たちは彼女に疑惑の眼を向けてました。

「もういいですよ! オレは彼女をガードします! 関口が襲って来たら、必ず捕まえて真相を明かしますから!」

怒り心頭のスニーカーはひとりで突っ走りますが、さらに佐知子への疑惑を深める事件が起きてしまいます。逃走中の関口が路上で通りすがりのサラリーマンを襲い、2万円弱を奪ったのでした。先の強盗で約8千万円を手にした筈の関口が、なぜ?

「金は、ヤツの手元には無いのかも知れん」

そう、その8千万円を佐知子が隠し持ってるとすれば、全ての辻褄が合ってしまう。しかしボス(石原裕次郎)は、その事実をスニーカーには伝えないよう刑事たちに指示します。

「ヤツは今、デカというより立原佐知子のボーイフレンドだ。心の動揺は彼女に筒抜けになる」

つまり、予定通りに佐知子を空港へ向かわせ、関口を誘き出すオトリ作戦。案の定、このままパリへなんか行かせてたまるか!とばかりに襲撃して来た関口は、何も知らないスニーカーからフルボッコの刑を食らいます。

「関口、キサマ! 金はどこに隠したんだっ?!」

「し、知らない! 金はあいつが持ってるんだ! あの女が持ってるんだっ!!」

「なんだと、いい加減なこと言うなっ!!」

「嘘じゃない! 金を欲しがったのはあいつだ! あいつは金を巻き上げた上に、オレをマンションまで呼び出して殺そうとしやがった!」

「この野郎ーっ!!」

なおも体罰を続けようとするスニーカーを、ゴリさん(竜 雷太)が冷静に食い止めます。

「あの女ならやりかねん」

「ゴリさん?!」

そう、佐知子が手引きしたからこそ関口はすんなりマンションに侵入できた。先に撃とうとしたのは佐知子の方で、関口は命からがら拳銃を奪い返し、撃ち返したワケです。

「なぜだ……なぜそんなことを?」

「……何度も男に騙されたんです。一度ぐらい、騙してもいいと思ったんです。そうすれば、私にも春が来る……そんな気がしたんです」

「………………」

二人で名残り雪を眺めた時の、あの朗らかで優しい笑顔からは想像もつかない、佐知子の壮絶な裏の顔。

「人間って……分からないもんですね、ボス」

七曲署の屋上でそう呟くスニーカーに、ボスは言います。

「当たり前だ。そう簡単に割り切れたら、法律や警察は要らなくなる」

「…………」

「しかしな、スニーカー。いい陽気になったな。もう春だ。立原佐知子にも、春が来るよ。いつか必ずな」

なんだか、久々に『太陽にほえろ!』らしい『太陽にほえろ!』を観た気がします。スニーカー登場以降はあえてそういうのを制作側が避けてたのかも知れません。

マカロニ編の#035『愛するものの叫び』とテキサス&ボン編の#187『愛』をミックスしたような、定番と言えば定番のプロットだけど、やっぱり良いから定番になるんですよね。ロッキーにはどうしても似合わないけど、スニーカーなら何とかサマになります。

友里千賀子さん(当時22歳)が薄幸の女を演じるには無理があるって意見も出そうだけど、今回はそのギャップこそが肝ですから野暮なクレームはよしましょう。

実際、友里さんは'78年の朝ドラ『おていちゃん』のヒロイン役で注目されて以降、爽やかイメージが定着して犯人役はおろかキャリアウーマン役も今回が初めて。かなり意気込んでこの役にチャレンジしてくれたそうで、その情熱が画面から伝わって来ます。

この年の秋には神戸を舞台にしたフジテレビ系列の刑事ドラマ『ゆるしません!』に主演、そして'87~'88年には『太陽~』の後番組『ジャングル』&『NEWジャングル』で溝口刑事(勝野 洋)の天真爛漫な妻=明美を演じられるなど、我々にも馴染みの深い女優さん。

刑事ドラマは他に『87分署シリーズ・裸の街』『特捜最前線』『はぐれ刑事純情派』『さすらい刑事旅情編』『ララバイ刑事』『Gメン'75』復活スペシャル等にゲスト出演。緒形拳さんが迷宮課刑事「おみやさん」に扮したシリーズの第2弾『六本木ダンディーおみやさん』('87) では六本木署の藤崎巡査長役でレギュラー出演されてます。
 

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『あさひが丘の大統領』#19

2020-10-24 12:12:23 | 探偵・青春・アクションドラマ










 
第19話『教師の彼女と女生徒の彼氏?!』

(1980.2.27.OA/脚本=大原 豊/監督=馬越彦弥)

今回は珍しく涼子先生(片平なぎさ)が研修中との理由で欠席。お陰でハンソク先生(宮内 淳)がハメを外してハンソクらしさを少し取り戻してくれました。

まず、高校時代のクラスメイトでマドンナだったミーコ(水原ゆう紀)と偶然再会したハンソクは、ラグビー部の練習をほったらかして連日デートを重ね、このまま行けば確実にチョメチョメしそうな雰囲気になります。

一方、カレシが出来なくて性欲を持て余した長尾(藤谷美和子)たち女子テニス部の仲良しグループは、なんとか男子にハント(当時はまだナンパとは言いませんでした)されようと懸命にアピールするんだけど、誰も食いついてくれません。

で、仕方ないからハンソクにほったらかしにされた水野(井上純一)たちと遊ぶことになるんだけど、諦めきれない長尾だけ1人で町をうろつき、ハント待ちすることに。

そうして出逢ったのが予備校生の塚田(湯沢紀保)。はっきり言って野暮ったい(ダサいって形容詞もまだ無かった)ヤツなんだけど、長尾に一目惚れした塚田は彼女の言うことなら何でも聞いてくれそうです。

そこで長尾はクラスメイトたちにミエを張るため塚田を利用し、カレシを演じさせた挙げ句に用が済んだらポイ捨てしちゃうという、なかなかの小悪魔ぶりを発揮するのでした。

時を同じくして、ハンソク先生とチョメチョメ(チョメチョメって言葉もまだ無かったですよね。山城新伍さんしか使わないけどw)まであと一歩というところで、ミーコが本性を表します。

ハンソクは高校時代、親友の杉山とミーコを取り合い、まっすぐな彼の熱意に負けて身を引いたという経緯がありました。なのに2人は別れてしまった。その理由を問うハンソクに、ミーコはこう答えます。

「どうしてって、つまんない人だってことが分かったからよ」

出た! 出ました、これですよ! 私が初めて世の中の破滅を予感し絶望した、価値観の大転換! 修学旅行のバスガイドさんが「理想のタイプは?」の質問に「明石家さんまさん」と答えた時の、あの衝撃!w

つまり、マジメな男は刺激がなくて退屈なワケです。じゃあオレは一体、なんの為にそれまでマジメに生きて来たんだ?! チョメチョメする為に決まってるでしょうが! チョメチョメチョメチョメ! チョメチョメチョメチョメ!

ミーコは、そんな杉山と自分は釣り合わないと思ったワケです。

「私には、それだけの価値があると思ってるわ。ハンソクは今でも私のこと忘れられないでいるんでしょ? 今の私だったら、落ちるかも知れないわよ?」

当然、鼻の下ともみあげを極限まで伸ばして食いついて来るかと思いきや、ミーコを見返すハンソクの眼は冷ややかでした。

「あいつは……杉山はな、本当にミーコを愛してたんだ。真剣にミーコが好きだったんだ。オレは、あいつの熱意に負けて……それなのに……」

「ハンソク?」

「オレは嫌いなんだよ! 人生をバカにするようなヤツが……一番嫌いなんだっ!!」

結局チョメチョメは未遂に終わり、ストレスをMAXまで溜めながら帰路についたハンソク先生は、河原で異様な光景を眼にします。見るからにダサい青年が、川に浸かりながらダサい歌を唄い踊り、それを水野はじめ我が校の生徒たちが高みの見物して笑ってる!

実は長尾を諦めきれない塚田が「キミの為だったら何でもする!」なんて言うもんで、またもや小悪魔ぶりを発揮した長尾が「じゃあ、あの川で踊ってみて」と命令したのでした。

それで塚田が踊りながら唄った曲が『ソーラン節』に『鉄腕アトムの唄』『高校三年生』と来たもんだから、あまりにダサすぎて笑われてるワケです。現在なら逆にクールな選曲かも知れませんw

何故そんなことをさせたのか、ハンソクに問われた長尾はこう答えます。

「彼がバカだから。グズだから。私にチョッカイ出す資格なんか無いもの」

「馬鹿野郎っ!」

出ました、ハンソク先生の必殺もみあげビンタ! 女子生徒が相手でも容赦なし! しかも自分がチョメチョメし損ねたことの八つ当たり! それでこそハンソク先生です!w

「お前、アイツを何だと思ってるんだ?! 男を何だと思ってるんだ?!」

「ハンソクなんか何よ……ハンソクなんか何よ! バカァ!!」

たぶん長尾だって、塚田をイジメたくてあんな事させたワケじゃない。ハンソクは、つい手を上げてしまったことを後悔します。あれ? そんなのハンソク先生じゃない!w

ところが! 反省した長尾が謝ろうと思って塚田のアパートを訪ねたら、故郷の両親に宛てた遺書を残して行方不明になってたから驚いた!

それを聞いたハンソクは、長尾と一緒に徹夜で町じゅうを走り回り、彼を探します。いい先生です。こんな時、みんなが走り回っても自分だけ「そんな簡単に死ぬもんか」なんて言ってメシを食らってた、以前のハンソクとはやっぱ別人ですw

「私、考えようとしなかった……あの人、こんなに私のこと想ってくれてたなんて……少しも考えようとしなかった」

長尾はそう言って、ハンソクの胸を借りて泣きじゃくります。若い時ってそうですよね。自分が痛い想いをしないと、相手の痛みはなかなか理解できない。

幸い、塚田は死ぬのを思いとどまってくれました。一晩中いろいろ考えて、受験に対して真剣に向き合ってなかった自分に気づいた彼は、故郷に帰って出直す決意をしたのでした。

「でもね、長尾さん。ぼく、キミと知り合えてとても良かったと思うんだ」

電話でそう言った塚田は、これから故郷へと旅立つ電車に乗ろうとしてました。長尾は(またもやハンソクに付き添われて!)駅へと懸命に走りますが、間に合わず。だけど構内の伝言板(今はそういうの無いですよね)に「ありがとう」っていう塚田からのメッセージを見つけて、すっかりいい人になったハンソク先生と二人、ほっこりします。

「先生、私……私……」

「なんにも言うな、長尾。なんにも言うな」

やっぱり『太陽にほえろ!』の裕次郎さんみたいなハンソク先生ですw

そんなハンソクにも、野口先生(秋野太作)を介してミーコから「ごめんなさい」とだけ書かれた手紙が届きました。

ミーコは、野口先生に「素直に会えるようになったら、会いに来ると伝えて下さい」とハンソクへの伝言を残したそうです。つまり、あの時は素直じゃなかった。本当は偶然なんかじゃなく、最初からハンソクに逢いたくてあさひが丘に来たのかも知れません。杉山と別れた理由を「つまんない人だから」と言ったのも本心じゃなかったのかも?

ラストシーンは、黒板にハンソク先生をからかう落書きをした水野や長尾たちが、ハンソクに追われて教室から砂浜へと逃げていく定番のシチュエーション。ハンソクがミーコを叱ったのも砂浜、長尾がハンソクの胸で泣いたのも砂浜。何かと言うとすぐ砂浜に行くw

それはともかくとして、長尾たち女子グループが道行く男子たちを眺めながら、それぞれに点数をつけて値踏みする場面からスタートしたこのエピソード。女性の持つシビアさや残酷さと、男という生きものの哀れさが、なにげにリアルによく描かれてたと思います。

ハンソク先生のキャラが途中でブレてるように感じたのは、彼のイメージアップ・キャンペーン(翌週には宮内淳さんが唄う挿入歌『青春の旗をふれ』も公開!)がそうさせたのは勿論のこと、今回は涼子先生が不在であるがゆえ、いつもよりハメを外せたのと同時に、ふだん彼女がやってくれてる生徒たちへのフォローも一手に引き受けざるを得なかったから、なのかも知れません。

青春ドラマって、つい半笑いでツッコミどころを探しながら見ちゃいがちだけど、こうして分析すると深いし、一筋縄じゃいかないですよね。刑事ドラマみたいにハッキリ解決しないし、理屈じゃ割り切れない不条理さがある。

だからこそ面白いし、レビューし甲斐があります。
 

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『あさひが丘の大統領』#17

2020-10-22 00:55:03 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
さて、'79年秋にスタートした『あさひが丘の大統領』も2クール目に突入し、恐らく期待通りでなかったであろう評判や視聴率を反映してか、テコ入れと思わしき変化が表れて来ました。

1つは、この回からレギュラーとなる女子生徒役=壇まゆみさんの投入。先日レビューした『太陽にほえろ!』#394におけるチョイ役出演はカメラテストだったのかも知れません。

そしてもう1つの変化は、我らがハンソク先生=大西 元(宮内 淳)のマイルド化ですw もみあげは相変わらず長いけど、暴論めいた発言が聞かれなくなり、生徒に対する嫌がらせめいた行動も見られず、すっかり彼らの良き理解者となって、まるでハカイダーやデスラーが正義の味方に寝返ったみたいな有様でw、気のせいかも知れないけど登場場面も減ってるように感じます。

主役のキャラクターや役割が変わると、自ずと他の登場人物や番組の内容自体も変わって来ます。ハンソク先生がいい人になった事でどんな変化が生まれたか、そして作品は何を得て何を失ったのか、そのあたりを検証しながらレビューしたいと思います。


☆第17話『ただ君に一眼逢いたい!』

(1980.2.20.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=斎藤光正)

ライバル校である県立西高から美少女で優等生の星野知子(壇まゆみ)が自分たちのクラスに転入し、しかも同じ寮で暮らすことになって水野(井上純一)ら落ちこぼれグループは大喜び。さっそく親衛隊を結成して知子をストーキングします。

ところが彼らとは別に、1人で、知子の登下校のみならず授業中までやって来て、遠くからじっと彼女を見つめる本格派のストーカーが現れたから驚いた!

実はその男、県立西高で知子とクラスメイトだった八木沢(松原英樹)という生徒なんだけど、ほとんど会話もしたことが無いと彼女は言います。

もちろん親衛隊としては放置するワケにいかず、水野たちは逃げる八木沢を捕まえ、なぜ授業をサボってまで知子をウォッチングしに来るのか問い詰めます。最初は頑なに口を閉ざしてた八木沢だけど、知子本人にまで「迷惑してるの」と言われてしまい、ついに口を割ります。

「オレは、ただ……キミが見たかったんだよ。見たかった……それだけなんだよ」

あまりにストレートな告白に、知子も水野らも思わず息を呑みます。

「1年の時からずっとそうだった……学校行ったらキミがいて、キミと同じ教室にいて……ただ、それだけで良かった。星野くん、キミと同じ教室にいれる、ただそれだけで良かったんだよ!」

八木沢は知子が風邪で休んだだけで寂しくて、その1日をどう過ごせば良いやら分からなかったぐらいなのに、突然彼女は転校してしまった。

「これからは、ずっとキミに会えないなんて、オレ、どうしていいか……どうしていいか分からないんだよ!」

ここまで言われて嬉しくない女性はいないんじゃないでしょうか? ましてや八木沢くん、ルックスも決して悪くない。これまで眼中にも無かった筈の相手なのに、なんだか知子の頬が赤くなって来ちゃいました。

ところが!

「星野くん、もうキミには迷惑かけないよ! 会いに来たりしないよ! ごめん! ごめんよ星野くん!」

知子がキュンキュンしてることに全く気づかないまま、八木沢はあっという間に走り去ってしまうのでした。

「どうして会いに来ないんだ、アイツは!」

翌日から本当に八木沢が姿を見せなくなってしまい、知子は勿論のこと、なぜか水野たちまでポッカリと心に穴が空いたような気分になり、今度は逆に八木沢の背中を押そうとします。

もちろん、生真面目な涼子先生(片平なぎさ)を筆頭に学園の教師たちは、授業をサボってストーキングするような行為を許すワケにはいかず、水野たちに釘を刺すのですが……

「オレたち、初めて若いって言えるヤツに逢ったんですよ。オレたち初めて、青春らしく生きてるヤツに逢ったんだ」

だから「簡単に諦められちゃ困る」ってことで、水野たちは八木沢の応援をやめようとしません。

さて…………

物語はすでに中盤まで進んでますが、まだハンソク先生の名前が文面に出て来ません。画面にはちゃんと登場してるんだけど、物語を動かすような言動をほとんどしてないんですよね。

水野たちが今回やってるようなことは、以前ならハンソク先生がやってたはず。この辺りから、ストーリーを動かす役目をもっぱら水野や長尾(藤谷美和子)らが務めるようになり、ハンソク先生は一歩引いてそれを見守る立場にシフトしていきます。『太陽にほえろ!』の石原裕次郎さんみたいなもんで、当然出番も減っちゃうワケです。

前作『ゆうひが丘の総理大臣』は最終回でソーリ先生(中村雅俊)が学園を去って行ったけど、この『あさひが丘~』の最終回ではなんと、生徒の1人に過ぎなかった筈の水野が学園を去っていく!(ハンソク先生は他の生徒たちと一緒に彼を見送るだけ)

当時よく購読した『ザ・ベストワン』等のテレビ雑誌も、主役の宮内さんより生徒役の井上純一さんや大村波彦さん、田中浩二さんなどジャニーズっぽい俳優さん(井上さんは実際にジャニーズ所属)にスポットを当てるようになってました。

だけどそれは、ハンソク先生の評判や人気とは関係なく、時代がそういう流れになって来ただけの事かも知れません。しばらくすると『ザ・ベストワン』のグラビア頁も「たのきんトリオ」だの「シブがき隊」だのに占領され、私はウンザリして買わなくなりましたから。

閑話休題。

水野たちに背中を押され、数日ぶりにあさひが丘にやって来た八木沢を見て、知子もじっとしてられなくなります。帰ろうとする彼を駅のホームまで追いかけ、その手を握り、今にもキスしそうになるんだけど、駆けつけた涼子先生と野口先生(秋野太作)に止められちゃいます。

「八木沢くん、日曜日に会おう! 日曜日! 日曜日に、海で!」

八木沢を乗せて走り出した電車に向かって、知子はそう叫ぶのでした。

ついこないだまで眼中にも無かった相手にそこまで?って思うけど、若い頃の恋愛なんて、多分こんなもん。こう言っちゃ何だけど、うまく火を点けさえすりゃキスぐらい簡単に出来ちゃう。

だからこそ、生徒たちを預かってる立場の教師としては黙って見過ごすワケにいきません。涼子先生はブーイングを覚悟の上で「日曜日は外出禁止!」という、なかなかムチャなお達しを寮生たちに下します。

当然、そういうやり方を何より嫌うハンソク先生は抗議するのですが……

「大西先生が仰りたいことは分かってます。男と女がいて、お互いに好きで、そこで何か起きても、それは二人の責任じゃないか、人間はもっと自由なんだって、そう仰りたいんでしょ?」

「…………」

「私だって本当はあの二人にそう言ってやりたいです。でも私は教師なんです。あの二人を、このままにしておくワケにはいきません。あの二人の将来のために……」

「…………」

そう言われて黙っちゃうハンソクは、なんだか物足りません。まるで猛犬が牙を抜かれちゃったみたいに感じます。それだけ人間として教師として成長したのかも知れないけど……

ハンソク先生は以前のように噛みつきもしなければ暴走もせず、寮で同室の野口先生に愚痴をこぼすだけ。

「人間って不自由なもんだよな……教師としてとか、将来のためとか……自分で自分を縛って……」

「そうだよ。動物はもっと自分の欲望に忠実に生きてる。それで社会を構成してる。人間がいちばん不自由なんだよ」

「…………」

そして日曜日。水野たちの助けにより寮を脱出した知子は、八木沢が待つ海へと向かいます。が、そこに立ちはだかったのは誰あろう、ハンソク先生でした。

「星野、涼子先生だってツラいんだ!」

「何がですか!?」

「教師だって事がだよ! 教師でいなければならない事がだよ! 解ってやれ!」

「解ったらどうしろって言うんですか?!」

「どうしろとは言わん。星野、解ってやればそれでいいんだ。行ってこい。お前は自由だ」

「えっ……」

「涼子先生の気持ちは解る。しかしオレは、やっぱりお前たちは自由だと思う。人間1人1人自由だと思う。例えいくつでもな。行ってこい、星野」

生徒たちの良き理解者であるばかりか、あえて悪役を買って出た涼子先生のことも理解し、陰でフォローしてやるハンソク先生。いいヤツです。大人です。まるで別人ですw

かくして、海岸で知子と再会した八木沢は、彼女を強く抱きしめ、激しくベロチュウし、小さなおっぱいを揉みまくり、一心不乱にチョメチョメチョメチョメする……のかと思いきや!

「もう、キミには会いに来ないよ」

「えっ?」

「卒業するまで……オレが一人前になるまで」

「なぜ?」

「オレは、キミが好きだから。会えば会うほど、好きになるから。自分で、自分をどうしようもなくなるから」

「そんなこといい……いいのよ……卒業するまでって、なぜそんなこと」

「………………」

もし、教師たちの妨害によりこのとき逢えなかったら、二人はさらに燃え上がって、いくところまでいく……つまりチョメチョメしてたかも知れません。チョメチョメチョメチョメ。

でも、ハンソク先生は信じてくれた。八木沢はその気持ちに応えたんでしょう。

「よ~し!」

「走るのね?」

「うん、一緒に!」

出た! 出ましたよ! 夕日に向かってダッシュ勝平!

「やっぱりオレ、卒業するまで会いに来ないよ! 星野くんも頑張ってね!」

こういうのをパロディーじゃなく大真面目にやれたドラマは、この『あさひが丘の大統領』が最後だったかも知れません。これと同時期にTBSの『3年B組金八先生』は女子中学生の妊娠問題をリアルに描き、センセーショナルを巻き起こしてました。時代が、人々の価値観が、テレビ番組の内容が大きく転換する、まさに過渡期だったんですよね。

さあ、如何なもんでしょうか? 過去の『あさひが丘~』レビューで私は再三「ハンソク先生の好感度が低すぎる!」って文句を書いて来ましたけど、いざこうして彼がいい人になっちゃうと、えっ、こんなに?!ってくらいに影が薄くなって、驚きを禁じ得ません。

以前は、無気力な生徒たちにハンソク先生が刺激を与え、自ら壁となってぶつかり合うことで互いに成長してた筈が、今や水野たちが勝手に成長し、壁になる役目は涼子先生が引き受け、ハンソク先生の存在価値がちょっと見えにくくなったように感じます。

お陰でストレスが軽減され観易くなったのは確かだけど、これじゃごく普通の青春ドラマで何だかつまんない。物凄く勝手な言い草だけど、ハンソクのあまりにガキっぽい言動にこそ『あさひが丘~』らしさが集約されてたんだってことに、私は今更ながら気づかされました。

物足りない。すこぶる物足りない。ハンソク先生はやっぱり馬鹿なままでいなくちゃいけない。ほんと勝手だけど私はそう思います。

知子役の壇まゆみさんは当時18歳。女優デビューは'80年のNHK大河ドラマ『獅子の時代』とWikipediaには記されてますが、改名前の「三留真由美」名義で出演された前述の『太陽にほえろ!』#394が恐らくドラマ初出演作と思われます。

『あさひが丘~』にはこのあと最終回までレギュラー出演され、NHKの朝ドラ『なっちゃんの写真館』やTBSポーラテレビ小説『発車オーライ』等にもレギュラー出演。'84年には『太陽にほえろ!』#624に再びゲスト出演、Wikipediaで見る限りだと刑事物には『太陽~』しか出ておられません。

'81年には歌手デビューも果たされてますが、'80年代いっぱいで芸能界から身を引かれた模様です。
 

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『エコール』

2020-10-20 00:00:09 | 外国映画










 
自分以外の人が好きな映画も観てみようシリーズ第3弾。本国では2004年、日本では2006年に公開された、ルシール・アザリロヴィック監督によるベルギー&フランスの合作映画。ポパイ誌で辛酸なめ子さんが紹介されてました。

原作はフランク・ヴェデキントの小説『ミネハハ』で、映画の原題は『イノセンス』。純粋無垢って意味でまさにピッタリなタイトルだけど、我が日本じゃ押井守監督が同じタイトルのアニメ映画を公開しちゃったもんで『エコール』、フランス語で学校を意味する単語に変更されたそうです。

内容はシンプルと言えば非常にシンプル。深い森の中にある謎の施設に送り込まれた幼い少女たちが、外界との接触がいっさい遮断された環境の中で教育を受け、やがて成長して初潮を迎えると卒業し、また何処かへと送り出される。

その顛末が下級生のイリス(ゾエ・オークレール)、中級生のアリス(リア・ブライダロリ)、上級生のビアンカ(ベランジェール・オーブルージュ)の眼を通して淡々と描かれていきます。

BGMがいっさい入らず、本当に静かに淡々と進んでいくので、鑑賞前によく睡眠を取っておくことが必須ですw 私は寝不足だった上に鼻炎の薬を飲んじゃったもんで、途中で何回DVDを巻き戻したか数えきれませんw

それはともかく、内容はシンプルって書きましたけど、その学園が何処にあるのか、いったい何を目的とした施設なのか、彼女たちが何故そこに送り込まれ、卒業した後どうなるのか、台詞ではいっさい語られませんから、とにかく睡魔と闘いながら映像をくまなく観ていかないと「なんのこっちゃ?」で終わっちゃいます。

どうやら彼女たちは商品として、純粋無垢なまま男性客(とは限らないかも?)に売ることを目的に、大切に育てられてる。ちゃんと観ればそれ位は誰でも解ると思うんだけど、そんな少女たちの姿を通して作者は何を我々に伝えたいのか、何を訴えたいのか、私にはサッパリ解りませんでした。久々に解らんものを観たぞ!って、妙に嬉しくなったりもしましたw

単なるロリコン趣味かと思いきや、監督は女性なんですよね。ロリコンだと逆にここまであっけらかんと幼女のヌードは撮れないだろうと思います。(ブログ事務局の横やりが入らないよう画像は撮ってないけど、そういう趣味の人が見たらウハウハしそうな場面が満載です)

とにかく純粋無垢なものは眩しいほどに美しいですから、それを映像に収める事こそが目的だったのかも知れません。

あと、これは他のレビュアーさんからの受け売りですが、どれだけ時代が進もうが、女性は結局「オンナ」を磨いてないと世間に認めてもらえず、永遠に「性」の問題からは逃れられない。その現実を皮肉った作品とも考えられます。

ラストシーン、学園きっての美少女であるビアンカが無事に卒業し、たぶん物心ついてから初めて、外の世界へと連れ出されます。

で、ビアンカはすでに初潮を迎えた「オンナ」なんだけど、内面はイノセンスなままだから、人で賑わう公園で平然と下着姿になって噴水と戯れたりする。そこで如何にも遊び人風の青年がニヤニヤしながら近づいて来るんだけど、彼女は全く警戒しないで一緒に水遊びを始めちゃう。

その瞬間、噴水がブワーッと沸き上がって映画は幕を下ろします。これは何かを象徴してるんだろうな、ぐらいは私も思ったけど、この時はまだ作品のテーマが理解出来てなかったもんで「おおっ、久々に解らんものを観た!」ってw、完全に煙に巻かれた状態でした。

で、あとから辛酸なめ子さんの記事を読み返したら「あれは射精のメタファーなのかも?」みたいに書かれてて、ああ、そりゃそうだよね!とw すんなり腑に落ちた次第です。

それをハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかは、観る人の価値観しだいですよね。というか性別、あるいは年齢しだいかも知れません。

学園の場面において、イノセンスな女の子たちを陰から眺めてる、年老いた女性たちの姿が何度か見られました。脱走を謀ると卒業出来なくなっちゃうルールがあり、たぶん彼女たちはその成れの果て。彼女たちから見ればあの噴水シーンは、サナギが美しい蝶に孵化する瞬間で最高のハッピーエンドじゃないでしょうか?

だけど男にはどうしてもイノセンスなものを崇拝しちゃう性質がありますから、あんな俗っぽい野郎にビアンカが「汚されちゃう」かと思うと穏やかじゃいられません。私にとっては究極のバッドエンドですw

汚す側である男がそんな風に思うのは矛盾も甚だしいし、そもそも「汚す」ってなんだ? セックスする女性は汚いとでも言うのか?って、視点を変えれば色んな疑問が沸いて来ます。それこそが作者の意図なのかも知れません。

つまりこれは、一見すごく特殊な世界を描いた映画みたいに見えて、実は「女性の価値とは何ぞや?」を世間に問う、すこぶる普遍的な作品と言えそうです。でなければ、女性がこんな映画を撮ろうとは思わないでしょうから。

ってことは、観終わった瞬間に「なんのこっちゃ?」ってなるのは当然の反応で、問いを投げかけられたワケだから、我々はそこからよく考え、自分で答えを出さなきゃいけない。私に理解力が無かったワケじゃないんです。そういう事にしといて下さいw
 

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『はぐれ刑事三世』2020.10.15

2020-10-19 00:00:05 | 刑事ドラマ2000年~










 
2020年10月15日、テレビ朝日系列の木曜夜8時枠で放映されたスペシャルドラマで、テレ朝の刑事物を代表するシリーズの1つ『はぐれ刑事純情派』にストレートなオマージュを捧げた作品。

お笑いトリオ・ネプチューンの原田泰造さんが令和のはぐれ刑事=警視庁捜査一課・川辺班所属の「やっさん」こと浦安吉之警部補に扮しておられます。

あの伝説のはぐれ刑事=安浦吉之助(藤田まこと)に名前が似ており、また極度の方向音痴ですぐに目的地からはぐれちゃうから、そして世代的にだいたい三代目だから「はぐれ刑事三世」と呼ばれてるというテキトーな設定w

そんな新やっさんに負けず劣らず方向音痴な相棒刑事=仁城華子に内田理央、川辺班長に立川談春、その片腕となる真島刑事にしゅはまはるみ、若手の玉瀬刑事に荒井敦史、やっさんの妻に真飛聖、娘に傳谷英里香、そして事件関係者に紺野まひる、逢沢りな、藤井美菜、佐戸井けん太、忍成修吾etc…といった個性派キャストが揃いました。

とりあえず、原田泰造さんが主役というだけで私は観たくなります。穏やかでお人好しで昼行燈のように見えるけど、ここぞって時に鋭さを発揮するやっさんのキャラは原田さんにピッタリだし、当然ながら笑いのセンスもバッチリ。藤田まことさんがコメディアン出身だったことも含め、まさに「この人しかいない」適役だと私は思います。

おまけに以前から贔屓にさせて頂いてる内田理央さんが相棒役だし、立川談春さん、しゅはまはるみさん、真飛聖さんなど単発ドラマの脇役としてはなんとも贅沢なキャスティング。シリーズ化はもちろん、明らかに連ドラ化も視野に入れた布陣と思われ、このメンバーなら是非とも毎週観たいです。

とはいえ、まぁ今の時代だから仕方ないんでしょうけど、やたら複雑な謎解きや人情に走りがちな作劇にはちょっと辟易したりもします。元祖『はぐれ刑事純情派』は(少なくとも私が観てた初期シリーズは)もうちょいハードボイルドな格好良さがあったはず。原田さんならそれもサマになると思うし、続きがあるならそこにも期待したいところです。

しかし何はともあれ、最初に書いたとおり原田泰造さんを観てるだけで楽しめますから、これは皆さんにもオススメしたいです。

セクシーショットは上から内田理央さん、傳谷英里香さん、逢沢りなさん、藤井美菜さん。女優陣も華やかで言うことなし!









 

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