ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#435

2021-08-31 22:56:01 | 刑事ドラマ'80年代





 
☆第435話『スター』(1980.11.7.OA/脚本=小川英&尾西兼一/監督=鈴木一平)

前川という芸能レポーターが刺殺され、藤堂チームが捜査に乗り出します。

前川は有名人のスキャンダルをネタにユスリを繰り返してた悪徳ジャーナリストでもあり、どうやらユスった相手と揉み合いになって刺されたらしい。刑事ドラマで殺されるヤツのだいたい90%はこのパターンですw

で、市川杏子という美人モデル(中島ゆたか)が自首して来るんだけど、こんな華奢な女性が大の男を刺し殺せるだろうか?とスニーカー(山下真司)は疑問を抱きます。

凶器のナイフをどこに捨てたか憶えてないという、杏子の供述は曖昧だし、ユスリのネタにされたというマリファナも見つからない。

とりあえず彼女の交遊関係を調べてみると、どうやら人気絶頂のシンガーソングライター・西田史郎(西田 健)とチョメチョメな関係であることが判り、スニーカーは驚きます。

かつて刑事になる前、アメリカで放浪生活を送った時期に、まだ無名だった西田とスニーカーはレストランで何度か遭遇していたのでした。

客の西田は当時からモテモテのプレイボーイで、かたやスニーカーは極貧バイトの皿洗い。そして今や西田は名声と巨額の富と、美人モデルの恋人まで手に入れてる! だから真犯人はこいつに違いない!とスニーカーは息巻きますw

実際、西田は恋人の杏子が自首したと聞いても「バカな女だ」と素っ気ない態度。おまけに「市川杏子は犯人じゃない」という匿名のタレコミ電話まで入り、容疑は西田に絞られていきます。



そこでついに、行方不明だった凶器のナイフが登場します。遺体の第一発見者だったサラリーマンの丸山(北条清嗣)が密かに持ち帰り、報道で事件のあらましを知って西田をユスって来たのでした。

その要求に応じた西田は丸山と密会し、大金と引き換えにナイフを取り戻すんだけど、あろうことか帰りのタクシーにそいつを置き忘れてしまう! そんなアホな!

藤堂チームの手に渡ったナイフからは、西田の指紋がしっかり検出されました。けど、西田がそんなチョンボをするワケないし、山さん(露口 茂)やスコッチ(沖 雅也)が偽装を見破らない筈もない。実は西田が犯人だと思ってるのはスニーカー1人だけなのでしたw

観念して出頭して来た(という芝居をしてる)西田の前に、山さんたちが丸山のオフィスで見つけて来た本当の凶器=杏子の指紋がついた血染めのナイフを差し出し、キョトンとするスニーカーにこう言います。

「この男は、人を殺してしまった市川杏子を助けるために、ただそれだけのために我々を騙したんだ。やっと勝ち取ったスターの座も何もかも投げ売ってな」

そう、最初に自首して来た杏子がやっぱり犯人で、西田はわざと自分に容疑が向けられるよう回りくどい細工をしてたのでした。

「昔は知らん。しかし、これが今の西田史郎なんだ」

前川がユスってたのは杏子ではなく西田であり、杏子は西田を守るために前川を殺害した。だけど気が動転してナイフを現場に残してしまい、それをたまたま通り掛かった丸山が拾って隠し持ってたワケです。

「西田……あれは全部芝居だったのか? ただ彼女を助けるための芝居だったのか?」

「……俺が、ほかに何をしてやることが出来た? 彼女は、本当に、真剣に俺を愛してくれた……だけど俺は、何ひとつアイツに報いてやることが出来なかった……恥ずかしかった……本当に恥ずかしかった」

そう言って涙を流す西田の姿に、プレイボーイだったかつての面影はありません。山さんが言った通り、本気で杏子を愛したことで彼は変わったんでしょう。



なんだか1年前の『太陽にほえろ!』迷走期に戻ったような回りくどい展開で、15分で済むような話を無理くり引き延ばし、ひねくり回して「深イイ話」に仕上げた感じだけど……

最初に自首して来た人物がホントに犯人だった!っていう、逆説的などんでん返しがたぶん今回のミソで、だったら西田はなんですぐに名乗りを挙げて杏子を助けなかったんだ?っていう矛盾を解消する為に、証拠品のナイフをたまたま拾っちゃう第三者を設定したんでしょう。

けど、その第三者がなんでニセのナイフを西田に渡す必要があったのか意味不明だし、他にも随所に説明不足とムリを感じるから、愛のドラマがいまいち胸に響いてこない。シンプル・イズ・ベストの基本を見失うと失敗しちゃう、これは典型例じゃないかと私は思います。そこがミステリー創りの難しさですよね。

とはいえ、中島ゆたかさん、西田健さん、北条清嗣さんと芸達者なゲストが揃い、露口さんや沖さんが要所を締めてくれたお陰で、決して退屈はしません。やっぱり役者さんの力は大きいです。



特に、ふだんは知能犯か変質者の役ばっか演じてる西田健さんが、今回は多面的なキャラクターを授かって実に活き活きされてます。人気絶頂のシンガーソングライターには到底見えないけれどw

同じように知能犯と変質者の役が多い北条清嗣さんと二人並んで、遊園地の乗り物に座ってるお姿は何ともシュールで笑っちゃいましたw 北条さんも今回は単純な小悪党の役なのに、その怪しいイメージでミスリードに一役買っておられます。



そして普段はミステリアス美女の役が多い中島ゆたかさんが、実は素直に自首して来ただけだった!っていうのも狙ったキャスティングですよね。

普通の人には到底見えない人たちが、実はみんな普通だった!っていう点に今回の面白さがあるとすれば、まさに適材適所でパーフェクトな人選と言えそうです。


 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ハリソンくんの夏、その3」 | トップ | 「ちょっとインターバル」 »

コメントを投稿