ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『エイス・グレード/世界でいちばんクールな私へ』

2021-06-28 00:10:15 | 外国映画









 
2018年(日本では翌'19年)に公開された、ボー・バーナム監督&脚本によるアメリカ映画。先日レビューした『ブリグズビー・ベア』と同じく、別作品のDVDに収録された予告編を観て「この映画には私自身がいる!」と直感した作品です。

ミドルスクール(中学校)の卒業を間近に控えたエイス・グレード(8年生)の女の子=ケイラ(エルシー・フィッシャー)は、彼氏も友達も出来ないまま中学生活を終えてしまう自分に心底ガッカリしてるという、もうその設定だけで共感せずにいられませんw

誰かの役に立ちたくて、同じような悩みを抱えてる子たちに向けたアドバイス動画を自撮りしてYouTubeにアップしてるけど、再生回数は一向に伸びません。

そんなケイラに、金持ちの娘でクラスの勝ち組=ケネディ(キャサリン・オリヴィエ)から誕生日パーティーへの(あからさまに義理の)お誘いが来てしまいます。

そんなの私だったら死んでも行かないけど、生真面目なケイラは断り切れずに行ってしまい、案の定浮いちゃった挙げ句、一生懸命考えて渡したプレゼントも失笑されて終わっちゃう。

でも、収穫はありました。密かに憧れてるイケメン男子のエイデン(ルーク・プリエル)と少しお喋り出来たし、カラオケで皆の前で唄うことも出来た。

それをキッカケに、ケイラは自分を変える努力を始めます。無理をしてケネディに話しかけ、お礼の手紙まで書き、エイデン(実はただのド変態)がカノジョと別れたと聞けばアプローチし、「フェラチオは出来る?」と聞かれて意味も知らずに「得意なの」と答え、あとから意味を知り慌ててバナナで練習を始めるんだけど、もちろん絶妙なタイミングでパパがドアを開けちゃいますw

そんな感じでちょっと方向性を間違えてはいるんだけど、とにかく自分を変えようと頑張るケイラの姿に私は泣きました。私自身は「人は人、自分は自分」と思ってそのテの努力は一切しなかったけど、本音はやっぱり淋しいに決まってます。ただの強がりです。傷つくことから逃げてただけです。逃げずに立ち向かったケイラは偉い!

そんなケイラに転機が訪れます。ハイスクールの体験入学で案内役をしてくれた4つ歳上の高校生=オリヴィア(エミリー・ロビンソン)がとても親切で、プライベートのお買い物にも誘ってくれたのでした。

やっと友達が出来た! 人生が変わった!……と、喜んだのも束の間。オリヴィアが紹介してくれた友人たちの輪に入れず(なにせあの世代で4歳も違えば住む世界も全然違う)、男子にちょっかいを出されて逃げ帰る羽目になっちゃう。

「友達は出来た? 彼氏は?」と、クラスで埋めたタイムカプセルから出てきた、USBの動画に写る2年前のケイラが語りかけて来ます。「最高にクールな私になってる?」

友達も彼氏も出来ず、全然クールじゃない自分のアドバイスなんて、聞きたい人がいるワケないじゃん!と悟ったケイラはYouTubeへの投稿をやめ、タイムカプセルに詰まった思い出の品を全部燃やしちゃいます。

そんなケイラを救ったのは誰あろう、ずっと彼女を心配しながらオロオロするばかりで何も出来なかった、シングルファーザーのマーク(ジョシュ・ハミルトン)でした。

「私みたいなのが娘で悲しいでしょ?」と言うケイラに、マークは「とんでもない、キミがいるお陰で僕の人生は輝いてるんだ」と返します。妻と別れて以来、娘をどう育てればいいか途方に暮れたけど「キミは何もしなくても自分で学んでくれた」と、マークは心底から娘に感謝してるのでした。

そうなんですよね! ケイラは何ひとつ間違ってない。多数派の連中と感性が合わないだけで、むしろ人としてヤツらよりずっと正しく生きてる。私自身もそうだったと思うし、孤独をこじらせてる人の大半はそうじゃないですか?

私は親からそんな言葉は一度も聞かせてもらえなかったけど、それでも何とか人の道から外れずに生きて来られましたから、ケイラならきっと大丈夫。

ミドルスクール卒業の日、ケイラは勇気を振りしぼって、ずっと勝ち組にいたケネディに言います。「プレゼントされても礼も言わず、手紙の返事もくれないあなたは人として間違ってるよ」と。人生に勝ちも負けもありゃしないけど、あえて判定すれば真の勝者はケイラでしょう。

2年前のタイムカプセルは燃やしちゃったけど、ケイラは再び未来の自分に問いかけます。「最高にクールな私になってる?」

いやいや、現時点で彼女は充分にクールだと私は思います。高校時代、クラスにいつも独りで文庫本を読んでる女の子がいたけど、カッコ良かったですよ! まあ、その子はケイラよりルックスが洗練されてたから余計にそう感じたワケだけどw

だけどその子も内心は、やっぱり寂しくてツラかったのかも知れない。私の学生時代より同調圧力が遥かに強くなってる現在の子らは、もっとしんどい思いをしてる事でしょう。

だからこういう映画が必要になるんですよね。そのままでいいんだよって、言ってあげる大人が周りにいない子たちの為に。悩むことも必要かも知れないけど、耐えきれずに死んじゃう子も沢山いるワケだから。

ケイラがそれほど大化けしないのが良かったです。以前よりちょっとだけ自信が持てるようになり、ルックスもちょっとだけ洗練されたように見えるけど、劇的には変わってない。変わらなくていいっていうテーマなんだから当たり前だけど、女の子映画は大抵キレイにしちゃいますからね。結局外見かよ!?ってなりかねませんから。

あと、我々世代はお父さんのマークにも泣かされます。なにせ思春期の娘が相手だから、心配すればするほどウザがられちゃうジレンマ。子供がいない私でもその気持ちは痛いほどよく解ります。

日本映画は観客を泣かせる為に小細工を色々やっちゃう(そもそもこういう役を広瀬すずとか、つまり美人にやらせる)からシラケちゃうんだけど、アメリカ映画はやっぱり上手いと思います。全ての描写に嘘を感じないから素直に泣けます。

まあ、フェラチオの練習中にドアを開けるお父さんはお約束だけどw 作為を感じたのはそこだけですw オススメ!


 


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