世の中の二乗>75の二乗

話せば長くなる話をする。知っても特にならない話をする。

書き手書かれ手

2007年12月29日 20時34分06秒 | Weblog
古本屋の「この本棚の本100円」コーナーにて、
唐十郎「佐川君からの手紙」と佐川一政「霧の中」を見つける。
フランスで女性を殺して食べた佐川一政を取材して小説化した前者と、
フランスで女性を殺して食べた佐川一政本人によって事件を小説化した後者。
その2冊がなんの因果か同じ棚で安売りされている。
即、買いました。もちろん、2冊とも。
唐十郎の書いた「佐川君からの手紙」は読んだことがあった。
持ってもいたが、多分人に貸してそれきりになっていた。
そして、私はこの作品が非常に好きだった。
唐自身の祖母の記憶から始まる冒頭から、おぞけの走るラストまで一気に読み進めた。
何度か読み返して、私にとってこの事件の細部はどんどん明らかになっていった。
しかし、この「細部」はあくまで唐十郎から見た事件の細部だった。
今は、殺人犯自らが語る「細部」も手元にある。
佐川一政「霧の中」を少し読んだ。
すぐに読めなくなった。
読み進められない。
一行一行、一文字一文字に「殺人」が浮かび上がってくる。
別に衝撃的な内容が書かれているわけではないのだか、
佐川一政はこの文字を書いたその手で人を殺したのだという思いを押し殺せない。
文字がうねって本からににににににににににと、出てこようとしてくる。
準備が足りなかった。
足りないままにドトールで読み始めるべきではなかった。
まだ読めない。
怖くてまだ読めない。もう少し時間がいる。

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