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日本に帰る(7日目)

2011年06月15日 22時01分31秒 | Weblog
6月11日(土)
朝起きてベトナムのNHK教育っぽい番組を見る。
同じ衣装、同じ髪型の女の子たちが虫の歌を歌っている。

セミとか、てんとう虫とかの歌はそれぞれ繰り返しが多い上に長くって、
カメラの位置もあまり変わらないし、いつまでも耳についてはなれないその歌と踊りを見ているとそういう苦痛を永遠に与え続ける地獄に落とされたよう。
8時、チェックアウト。
部屋に備え付けられている飲み物は有料で、
毎日それをお客が飲んだか確認する方法は客室係の目視だけであるらしい。
それも冷蔵庫を開けて飲み物が減っているか、
もしくは、部屋の中に飲んだ後の空き缶があるかとかのアバウトさで判断しているらしく、
私がスーパーで買ってきて飲んだビールも勘定に入っている。
ので、請求書のビールのとこを指差して「ノービア」と首をふりふりする。
そしたらなんなく取り消された。
ポーターが走っているタクシーを止めてくれる。評判のいいVinasunタクシーだったので安心する。初乗りは11000ドン。運転手の鼻の下には髭。
タクシーが学校らしい前を通る。
卒業式なのか、欧米で見かける紺色の博士帽に紺色の博士服を着た中学生くらいの子たちが何人もいる。
建物の入り口には花束を売る店。
その隣の街路樹にはうち捨てられた花束の山。もらってもすぐに捨てるのか。
タン・ソン・ニャット空港国際線ターミナル着。123500ドン。
空港の入り口付近には喫茶スペースみたいなのがあって、
多くの人が座ったり食べたりしている。
値段見ると50000ドン~60000ドンくらい。
ここで朝食をとっても良かったが、まあ建物内にも食堂はあるだろうし、
手続きを全部済ませてからのほうが何かと安心だと思ったので、先に空港内へ。
これが間違いのもとだった。
搭乗手続きを済ませる列に並ぶ。
私の前のベトナム人の家族はえらい大きい荷物を何個も何個もたずさえていて、
それがいちいち預かり荷物の重量制限に引っかかっていた。
そのたびにお父さんが荷物をどすんどすんとカートに戻していく。
ぐるぐると幅広のセロテープみたいなものに巻かれたダンボールには
子どもが書いたんだろう花のマークが全部の面にあって、ひと目でうちの荷物とわかる仕組み。
それにしてもこの家族はどこまでこの荷物と一緒に行くんだろうか。もしかすると引越しかもな。
セキュリティーチェックと出国審査済ませる。
もうだいぶこの国に慣れたので、
例えばスーパーのレジ打ちの女の人が、ピッピッとやりながらなにやら話しはじめても、
それはおおむね客に言っているのではなくて、隣のレジの人とのおしゃべりである、というのを知っている。
なので、出国審査の係員が私のパスポート見ながらなにやら話し始めても、
わ、何か聞かれてる、ベトナム語わかんないのにどうしよう、と焦ってはいけない。
往々にしてそれは隣カウンターの係員とのおしゃべりである。
なのでこちらは黙ってその内容のわからないおしゃべりを聞きつつ、
パスポートにハンコを押されるのを待てばいいのだ。
そういう国であるところのベトナムという国が好きだ。
さあ、手続きは全部終わったし、朝食を食べよう、と思ったら、
ここで最後の重大なミスに気づく。
ここまできてしまうと店の値札は全てUSドルになる。しかも途端にバカ高い。
さっき空港の外で55000ドンだったご飯プレートとそっくりそのままのものが、6ドルに跳ね上がっている。暴利だ。
もちろんベトナムドンでの支払いもできるが、ドル換算されているものはドンにすると2倍くらい値段が違う。
ベトナムドンを日本に持ち帰っても換金できないのでなるべくお金を使い切ってここまで来た私には80000ドンくらいしか残っていない。
それで買えるものといったらパン一個、2ドルで、45000ドンくらいなものである。
ああ、空港の外で食べていれば。6ドルと書かれたご飯プレートの食品サンプルをいつまでもにらみ続ける。
が、最後には諦めて2ドルのパンを買う。
それがまたおいしくないくちゃあとしたパンで、さらに遺恨が深まる。
残ったベトナムドンは35000ドン。
どうせもうくちゃあとしたパンも買えないし、空港内の寄付ボックスへ。
それでも入れるとき、「ああ、バインミーなら3個買えるのに」と浅ましく執着する。
搭乗口の近くで待つ。
ベトナムエアラインの飛行機の色はきれいだなあ。
ベトナムエアラインのCAはそれとおんなじ色のアオザイを着ている。きれいだなあ。
でもその上からジャケット着ちゃダメだよなあ。
座っているイスの向かいに白人の親子連れが座る。
お父さんが写真を構えて、しきりに子どもたちを写そうとしている。
男の子のほうは舌を出してみせたり結構ノリノリなんだけど、
お姉ちゃんのほうは写真はイヤと言っている。
弟の背負っているリュックに身を隠したりしてカメラにおさめられたくない様子。
彼女はこれから大きくなって今日のこととかこの旅行のこととかどういう風に思い出すようになるのか。
台北行き、チャイナエアラインに乗り込む。
機内に座るとマンゴスチンを持ち込んで食べている母娘がいた。みかん感覚?
ベトナム人はマンゴスチンを手でむくとわかった。
食べ終わったあと、娘はいつまでも手をなめていた。
ホーチミンを離れる。さようなら赤い土。
12時半。機内食。
ビーフンの上に魚の香草焼がのってるやつ。トロピカル味(パッションフルーツ味のこと)のサラダ。カットフルーツ。白いプリンみたいなの。パン。バター。
おいしい。
今回でベトナムは魚も肉もおいしいのだと知った。旅行中もっと食べればよかった。
もう帰りで、気分もほぐれているのでワイン頼む。赤。多少すっぱいがおいしいと思う。
食後、コーヒー。おいしい。
台北、着。
成田へ行く便の搭乗口前は日本人だらけ。約一週間ぶり、うんざりするほど日本語の雑談を浴びる。
台北は漢字圏なのでチャイナエアラインは中華航空と表示されている。
小学生のときの友達のことを思い出した。
絵がうまくて話がおもしろくて肌が白い子だった。
その日、その友達は掃除の時間くらいに先生に呼ばれて早退したのだった。
あとで先生に聞くと事故があった中華航空に彼女のおじさんが乗っていたという。
数日たって登校してきた彼女に聞くと、見つかったおじさんは「半分こげてた」と言った。
台北からの便はもう日本みたい。
ノートに書きものをしていると上の電気をつけてくれる。親切だ。
が、親切すぎる。もっとぞんざいでいい、無視してくれていい、と思う。
17時半。機内食。
豚肉の肉じゃがとご飯。ツナサラダ。ゴマのケーキ。パン。マーガリン。
ふつう。
パンにつけるのはやっぱりバターの方がおいしいなあと思った。
成田、着。
荷物の受け取り。
流れてくる自分のカバンを見つけるが、よく見るとカバンにつけていた南京錠が取れている。
完全になくなっているのではなくて、「錠」部分がなくて、U字の金具部分はある。
誰かが錠を壊して中身を盗ったのかとは考えず、
きっと運ぶとき「錠」部分を持ったら引きちぎれちゃったんだろうなあと思う。
一週間いてそのくらいの予測ができるようになった。つけてたのも100均のやわそうなやつだったし。
あと、これはベトナムに謝らねばならない。
私はベトナム初日、空港で荷物を受け取った時に半券の照合をしてくれないといってベトナムのアバウトさをおもしろがったが、
今日、日本、成田でも機内預けの荷物の半券照合はしませんでした。
え、確認しないんだあ、と、逆にこっちの方が衝撃でかかったです。
成田からスカイライナーに乗って日暮里へ。
日暮里から山手線で新宿へ。
新宿着いて中央線のホームに向かっている途中で、
もう常にバックに手を置いておかなくても盗られる心配はないんだ、と思う。
首から財布をぶら下げていなくても安心。
夜道を歩いても、なんなら携帯をズボンのポケットに入れっぱなしでもへっちゃら。
そう思ったときの気持ちは、うれしいという感情ではなくて、さびしい、に似た感情だった。
ベトナム旅行が終わった。

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