瀬戸夜雨 遠江八景

　瀬戸はその昔「迫戸」や「迫門」と書かれていました。奥浜名湖に位置し、猪鼻湖の北岸は古代の東海道とも呼ばれている本坂道（姫街道）が東西に通っています。万葉の歌の世界にもこの瀬戸を舞台にした作品が詠まれており、湖口の両岸に岩山が迫り、小野湖山の浜名八景の詩文に「石勢危而険・・・」と迫門の奇巌を評しています。
　瀬戸の流れは潮の干満によってきわめて速く、水深は１５ｍに達し、浜名湖で一番深い場所であり、素晴らしい景観です。
　浜名湖と猪鼻湖とを区切っているのが大崎半島で半島の中央部を県道瀬戸佐久米線が通り、その道路とからむように、旧道ものびています。二本の道は瀬戸において急接近しますが、それぞれ独立した二本の橋によって対岸に渡っています。瀬戸から東南方向を見ると小島が見えます。ダイダラボッチの伝承を秘める礫島です。瀬戸の景観は晴天の日もいいが、雨に煙る情景は捨てがたい、突き出た岩の上に祀られている猪鼻の小社は「瀬戸夜雨」の世界です。