昨日の激しい雷雨で、コンクリート壁に噛り付いていたセミの抜け殻が流されてしまった。朝、車に乗ろうとして気付いた。いつも狭い通路を抜ける時、その抜け殻を壊さないようにと手を突く場所に気を付けていたのだ。今朝見ると、その注意を払う対象がどこにも見当たらず、一瞬戸惑ってよろけそうになった。
よく見ると、壁のコンクリートの色が所々変わるくらいに雨が浸み込んでいた。未明に寝床の中で何度かの雷鳴や稲光、そして強い雨音を聞いたが、さぞかし強い雨が降ったのだろう。量だけではなく、その勢いもセミの抜け殻を壁から引き剝がすくらいに激しかったのだ。
雷雨が明けた涼しさよりも、所々黒っぽい雨の浸みを残して何もなくなったコンクリート壁が、妙に寂しさを感じさせる夏の朝となった。「空蝉は 雷雨と共に去りにけり」「抜殻を流し 雷雨明け朝涼」とでも言って凌ぐことにした。