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藤原定家「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」

2012-03-09 | カルチャー
昨日の本ブログに書いた、故山本夏彦さんの
『完本 文語文』を読んでると、歌人藤原定家の
日記『名月記』からの有名らしい言葉に遭遇する;

「世上乱逆追討耳ニ満ツト雖モ、之ヲ注セズ。
 紅旗征戎吾ガ事二非ズ」

文学は風流韻事だということを忘れすぎていると
言いたいがため、この漢文を引用している。

この言葉、ドナルドキーンさんも最初は
山本さん同様「世間の騒がしさなどには超然と
していて、歌人としての態度を表すものだろうと、
ずっと思っていた」らしい。(『百代の過客』p146)

ところが後年辞書に当たって、紅旗は皇居に掲げる
赤い旗で天子を意味し、征戎は征夷大将軍を指し、
定家は自分がどちらにも与しないという、政治的
立場を言明していることがわかったと。

だからとにかく、『名月記』の漢文は難しい、
だれか口語か英語に訳して助けて欲しいと
書いてはる。(同、p155)



定家って歌が有名だからそれは和文だし字も
相当上手いんだろう、きっと。
たとえば、「詠深山紅葉和歌」という彼の手になる
書をみると、確かにわかりやすい!



熊野懐紙「詠深山紅葉和歌」(定家自筆 建仁元年40歳の時)

詠深山紅葉和歌

こゑたてぬあらしも
ふかきこゝろあれやみやま
のもみちみゆきまちける

  海辺冬月
くもりなきはまのまさこ
にきみか世のかすさへ
見ゆるふゆの月かけ


鴎外も漱石も日記は文語文だから当時の人は
みなそうだったんだろう、って思う。

ところで、この『名月記』堀田善衛さんが
40年かけて、口語訳に挑戦してたんだ。
松岡正剛さんが大推薦してて知った。
まだ買ったばかりだから、読んだら書きたい。

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