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ねがうこと、ゆだねること

京都劇場「三谷文楽・其礼成心中」

2014-08-17 | art
人形の遣り手、大夫、三味線みな、国立文楽劇場の面々。し
かも取り上げる題材が近松門左衛門の心中物。その古典的な
伝統の本丸に、三谷幸喜さんがどう切り込み、どうやって喜
劇にするのか楽しみだったんだけど、予想以上に面白かった。

幕が開く前に、作・演出の三谷幸喜人形が登場して前口上を
語る(ご本人の声、ここだけ録音)。「文楽をよく知らない
人にも、楽しんでもらえるように精一杯つとめます。」


ホワイエのポスター

日常から演劇空間、しかも慣れない文楽世界へ入る、橋渡し
役として彼の人形が登場したのかもしれないけど、それでも
最初は大夫(語りの人)の台詞(現代語なんだけど)がわか
りにくかったというか、劇中に入りにくかった。

京都劇場は東京パルコ劇場と違って、英語字幕がついたので、
なんと最初はそれを参考にしていた。そのうち、語りに慣れ
てきて、すっとセリフがわかるようになったので、英語字幕
は見なくなるw



そのあたりから、三谷文楽の世界に没入して、休憩なしの2
時間たっぷり楽しんだ。近松門左衛門の「曽根崎心中」と「
心中天網島」がベースなのにたくさん笑えるんだから大した
もの。

それは、ふつうの人たちが精一杯、それなりに生きる様を描
いたからだろうし、愛が込められているからだろうし。



文楽は人形と浄瑠璃(大夫、三味線)がある時から融合した
演劇なんだけど、両者はある意味対等。立ち位置だって、浄
瑠璃たちも舞台右手に鎮座している。

それを、三谷幸喜さんは人形を前面にもってくる。いわば、
人形が役者の替わり。現代人にとっては、役者の役割には
まだ慣れてるし、それは三谷さんにとっても。



浄瑠璃は舞台の上半分に持ち上げた。下半分で人形が動き、
上半分でセリフと三味線が発せられるからある意味対等な
んだろうけど、もっぱら下の人形に集中する。



一番の見せ場は、主人公の饅頭屋の夫婦が心中を図って淀川
に飛び込むシーンかもしれないけど、ボクにとってはその前
の二人が心中を決意していく過程だった。

一時は売れに売れた饅頭がライバルの出現で在庫の山になり、
大きな借金を背負う。でも有能でまじめそうな娘婿の登場で
なんとかなるかも、という状況だったのに心中を決意してい
く心象風景がいい。



そして旦那の決意に、奥さまもついていきます、というあた
りが、心中の成立しない時代にいきる現代人にはホロってく
る。無理心中はあれど、一人で自殺せなあかん時代だから。

写真は公式サイトから。

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