やまねこマッサージ

ねがうこと、ゆだねること

一回性のおもしろさ

2010-12-31 | カルチャー
除夜の鐘が響くなか、小林秀雄の講演集
『信じることと考えること』を聞き直していた。
ついつい聴き入ってしまう話し方だ。


その中に、小林が尊敬する哲学者
ベルグソンからの引用がある。



あるご婦人の夢の話。戦地に赴いた夫が
戦死する生々しい光景をみる、いわゆる
虫の知らせが来る。

その通りのことが不幸にして起こっていて、
介抱した同僚達の顔まで当たっていたそうだ。

それに対して医者であり学者であった方が、
それは本当かもしれない、けど、問題が
あるって言う。

たまたま偶然にあたった方だけとりあげて、
無数のあたらなかった夢、正しくないまぼろしの
方をとりあげないのは問題だろうと。



確かに、あたるほうが少ないと小林は言う。
夢は無数の間違いの方が多いだろうと。

でも、いろんな現象の具体性を
正しいか、正しくないか
主観的か、客観的で問うこと
科学の方法論に過ぎない。

死んだか死なないかという抽象的問題ではなく
婦人は自分の経験を話したんだと。



うまく消化できてへんけど、印象的なんだなぁ。
一回しか起こらないことの方が面白い僕にとって、
再現性がないと対象にならないっていう科学は
やはり別の世界。

もちろん科学の恩恵は多大にいただいているけど、
考え方は少々あいれない。



宗教人類学者の植島啓司がインタビューで;
「宗教と科学は何が違うかといえば、
反復可能性、実証可能性の問題に尽きます。
科学では同じことが2度起こらないと証明になりません。

しかし、宗教的なことがらは1回しか起こらない。
仏陀の悟りもイエスの生涯も1度きりです。
宗教はずっと“1回性”を問題にしている。
だから宗教と科学は永遠に交わらない。」



人生、おもしろく、一回性にかけて・・・
みなさん、よいお年を。

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