運営委員長の岡野です。
タイの記録的豪雨で日系企業の工場が大きな被害を受けているというニュースが流れています。
これは、要するに人件費を節約すること、つまり短期の経済的効率を考えて、工場の海外移転をした結果、異常気象の影響で大きな経済的損失をこうむったということです。
気候変動・異常気象のことを計算に入れない損得計算は、実は中長期的に見ると経済的合理性をもたないということの明らかな実例だ、と筆者には思われます。
言い方を変えれば、地球全体の近未来を計算に入れると、エコロジカルな持続性を無視した企業活動は――だけでなく社会活動全般も――持続不可能だということです。
持続可能な国づくりの会の『理念とビジョン』で、次のように述べました。
「重要なポイントは、経済そのものの点から見ても、生態系の劣化(今回は記録的豪雨)は企業の生産条件の劣化(工場の水浸し)を招き、経済活動を持続不可能にしていく(操業停止)ということです。環境とトレード・オフの関係にあるような経済システムをそのままにしておけば、やがてその経済システムそのものも機能しなくなることは、シミュレーションをすれば火を見るよりも明らかだというべきでしょう。」(18頁)
今回の出来事は、そうした中長期的傾向の一つの現われにすぎないと思われます。
もし、経済人や政治家や市民が、本格的な取り組みをしないままでいるならば――きわめて残念ながらしないままだと思われます――危機はまちがいなくさらに進行・深刻化する、とシミュレーションされます。