おじいちゃんもおばあちゃんも、爪を切る時には、日差しの明るい縁側で、
新聞紙を広げて切ります。
大きなレンズの老眼鏡をかけて、ダルマバサミというハサミを使って切りま
す。
ダルマバサミは、お裁縫の握りバサミの親分みたいな大きさです。
おじいちゃんとおばあちゃんの爪は、厚みがあって、爪切りでは切れないみ
たいに見えました。
ある夜、
ちいチャンは、爪切りではなくてダルマバサミで爪を切ろうと思い、新聞紙
を用意して、広げようとしました。
すると、おばあちゃんが、
「ちいチャン、夜に爪を切るもんじゃないんだよ。」
と、言います。
「どうして?」
と、ちいチャンは、おばあちゃんに聞きました。
「夜に爪を切るとな、゛親の死に目に会えない゜と、昔から言われているん
だよ。」
と、おばあちゃんは言いました。
ちいチャンは、
(親の死に目には会いたくないけど、会えないのはイヤだ。)
と、思いました。
だから、ダルマばさみと新聞紙は、もとに戻しておきました。