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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

Jones and Hubbell (2005) Mol Ecol考察つまみ読み

2007-03-11 | 研究ノート
・久しぶりに何も予定がない一日。子供と遊ぶ。最近はお店屋さんごっことか、ずいぶんと高度(?)な遊びができるようになった。ブロックで作成したおもちゃ(?)が「5万円です」といわれたので、「高いですねえ」というと、「じゃあ100円です」と負けてくれた。ずいぶん気前がいい店である。

・それにしても、トドマツ論文の考察が進まない。前回の投稿からあまりにも時間がたってしまったせいか、そもそも何を言いたいのか分からなくなっている。遺伝構造の話とステージごとの散布(母親と子供の位置関係)の話をうまく関係づけて議論すればいいのだが、どうしてもすっきりといかないなあ。そもそも、この論文の「売り」とは何だっけ?

・こういう末期的な症状のときには、関連論文を一度じっくりと読み返し、どんな考察をしているかを読むしかなかろう。ということで、Jones and Hubbell (2006) Mol Ecol 15, 3205-3217をひっくり返す。彼らは,おなじみバロ・コロラド島のプロットを利用し、マイクロサテライト6座を用いて、Jacarandaの遺伝構造をシードレイン、実生、稚樹、幼樹、成木(サイズクラス別)に調べている。

・結果は、簡単に言うと、シードレインから実生へと移行するときに近距離における遺伝構造は弱まったが、実生から稚樹、幼樹、成木へとステージがさらに進むと構造が高まる、という複雑なもの。著者らは、ステージが進むにつれて、構造が弱まると想定していたようだが、個体群動態の生態データも利用しつつ、この結果に対してあれこれと考察している。

・考察では、どうして遺伝構造をデモグラフィックに調べる必要があるのか、ということが端的に書かれている一文があり、使えそう。種子と実生のステージで構造が弱まることについては、近交弱勢によるホモ接合の消失などが挙げられている。稚樹から成木にかけて構造が強まることについては、先駆樹であるJacarandaの種特性、ギャップの時空間的な生成パターン、世代の重なり、などを元に考察されている。セーフサイトの時空間的な生成と構造の関係については参考になりそうだ。

・この論文については、全体を通じてもう一度熟読する必要があるね。ところで、著者らは、自分たちがもっとも面白いと感じている構造の変化を中心に議論を組み立てている。今更だけど、トドマツ論文では遺伝構造を先にして、種子散布を後にしろ、という指摘があり、今のところ指摘に答える形で改訂を進めている。さらに、ダイレクトな親子解析に対しては、案外と批判的な評価も多く、散布よりもステージにおける遺伝構造の変化が重要だという指摘もあった。

・構造のステージによる変動については、既に結構な数の先行研究がある上に、やれば誰でもできちゃうということを考えると、あまりオリジナリティが高いとはいえないような気がしてきた。結局のところ、今回の論文の売りは、ステージを問わずに母親と実生の関係をしっかりと明らかにできた、ことではないかという気がしてきた。

・論文改訂では、基本的にはレフリーの指摘に従った方が通りやすいとはいえるが、しかし、それに捉われるあまりに、どうも自分を見失っているのではないだろうか、という気になってきた。現在、どうにも考察が書きにくいのだが、元に戻せば論理構成も実にすっきりしそうである。投稿した論文は、「レフリーのものではなく、自分たちのものだ」ということを忘れてはいけないというH先生の言葉がよみがえる。よし、もう一度、最初から考え直してみるか!