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天一美術館(群馬県水上町谷川)

2013年08月17日 | 日記
 天一美術館のことは、PR誌「銀座百点」2010年3月号に掲載された広告で知った。オーナーが銀座の天ぷら屋創業者で、設計が吉村順三であることに興味を惹かれたが、今回の訪問でそれが遺作であることがわかり、ちょっとびっくり。個人コレクションの美術館としては、その収蔵作家リストをみるとなかなかの充実ぶりであることがうかがわれたが、まったくもってその存在は予備知識すらなく(赤瀬川原平「個人美術館の愉しみ」にも掲載がない)、ややミステリアスな存在でいつか実際に訪れてみたいと思っていた。

 水上インターを出て15分というものの看板もなく、一度行きすぎてしまい再確認してようやく山間の美術館に到着。建物は道から見上げる位置にある。どうやら別荘地らしい敷地の斜面に建てられたコンクリート地盤に山荘風の構えだ。構造的にはRCコンクリート造りだろうが、外壁には濃いベージュの横板張りである。レーモンドの「夏の家」を連想した。玄関前にネムの木とヤマボウシ、ムクゲにヤマユリ。
 受付を経てホワイエへ、あざやかな紫の布張りの椅子がゆったりと並べられて屋外の山の風景を愉しめるようになっている。これも吉村氏の設計だろう。展示室は2フロアに別れていて、マチス、ルノアール、ルオーなどに岸田劉生や佐伯祐三、藤田嗣治といった日本人も含めた西洋画と南画、朝鮮半島を中心とした陶磁器コレクションで、大津絵なんていうものもありなかなか幅広くて、このようなコレクションが谷川岳のふもとで公開されていることにいたく感心した。これってなかなか、オーナー一族の見識と財力の両方がないとできないことだろう。創業オーナーの矢吹氏は岡山県の出身だそうで、財界人や作家・文化人と料理をとおしての様々な交流の中でこれらのコレクションを築いたらしい。

 さて、建物の外、石張りと芝生と構成された庭にでてみる。建物との間に水がたたえてあって、これは谷川の水を引き入れているんだそうだ。周囲の緑が目にしみいる。コンクリート壁の産土色が建物と調和してやさしい。

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