朝の散歩で良いものに出会った。
どんぐり。
帽子をかぶっている。
私はすっかり嬉しくなった。
今の私に、こんな出会いがまだ残っていたと。
私は望みうるほとんどのものを手に入れた。
もう何も欲しいものはないと思っていた。
しかし、私の楽しみは土の上に転がっていた。
そう、土にはこれまで見えて来なかった色んなものがあるのかも知れない。
土。
それは、限りなく死に近いところ。
人間、年を取ると土いじりをしたくなる生き物らしい。
それこそ、死に近づいているからではないか?
人間の命を作ってきたのは、まさに土に生える生き物達だ。
どんなに人工的な建築物に心が奪われても、
そのうち土に誘われるのだ。
みんな土に還るんだもの。
海で生まれ、地上で生き、
土に戻る。
私も土に還るのだ。