安倍晋三の拉致問題を置き去りにすることで可能となっている対北朝鮮圧力一辺倒の強硬な姿勢

2017-09-10 11:57:53 | 政治

 「私達の使命はすべての拉致被害者のご家族の皆様が、自分のお子さん達を、そしてご親族を、自らの手で抱きしめる。その日を目指して、そしてそのことが可能になるまで、安倍政権の使命は終わらない」

 安倍晋三はこういったことを数限りなく、何度も口にしてきた。

 ここに来て拉致関係の記事が続けて報道されている。

 9月7日が69歳の誕生日となる拉致被害者の鳥取県出身の松本京子さんの兄松本孟さんが娘との再会を果たせないまま5年前に亡くなった母親松本三江さんの墓参りをして、今年の誕生日までに帰国が叶わなかったことを報告したと2017年9月7日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。  

 取材に次のように話したという。

 「拉致から40年、妹も69歳になってしまった。残された時間はそう長くないと思っていますので、政府は、拉致被害者一人一人を大切に思い、救出に全力を尽くしてほしい」

 翌9月8日付「NHK NEWS WEB」記事は昭和53年に福井県小浜市で妻の富貴恵さんと共に北朝鮮に拉致され、平成14年の日朝首脳会談の後に帰国を果たすことができた拉致被害者地村保志さんと小泉元首相との13年ぶりの面会を取り上げている。    

 小泉純一郎は次のように話したという。

 「まだどれくらい拉致された人がいるかわからない。地村さんが帰って来て15年経つが進展がないのは残念だ。現職の総理大臣でなければできない問題だ。相手が孤立している中、安倍総理大臣も熱意はあると思うので期待したい」

 地村孟さん。

 「是非会ってお礼を言いたかった。安倍総理大臣をはじめ政府には拉致問題解決のために力を尽くしてほしい」

 面会後、記者団に対して。

 「安倍政権には、北朝鮮と交渉して1人でも多くの拉致被害者が帰国できるよう進めてほしい。北朝鮮をめぐる情勢は複雑になっていて、日本国民にとっては拉致問題よりミサイル問題というのが正直な心情かもしれないが、日朝交渉を進めていく上で拉致問題は必ず取り上げてもらいたい」

 翌2017年9月9日付「NHK NEWS WEB」記事は拉致されて今年で40年経過の横田めぐみさんの弟横田拓也さんがさいたま市で開かれた集会に出席、拉致被害者の早期帰国を訴えたことを取り上げているj。     

 「拉致されなければ、高校や大学に進学したり、会社に入ったり、恋人ができて家庭を持ったりという当たり前のことができたはずなのに、姉はそうした機会を一瞬にして奪われました。

 本来なら両親のどちらかでも集会に出席できればよかったのですが、80歳を越えて、来ることができないのが現実です。1日も早く姉を取り戻し、家族と抱き合える日を作ってほしい」

 集会の後、記者に対してなのだろう、次のように話したという。

 「日本政府には、外交力を駆使し、リーダーシップを持って北朝鮮をめぐる問題に取り組んでほしいし、拉致問題を解決する手腕を見せていただきたい」

 横田めぐみさんは13歳で拉致されているから、54歳になる。横田拓也さんはご両親と共にめぐみさんと抱き合う瞬間を夢見、待ち望んでいるはずだ。
 
 第3回東方経済フォーラム出席と日ロ首脳会談のためにロシア・ウラジオストクを訪問していた安倍晋三が日本時間の9月6日夕方、モンゴルのバトトルガ大統領と初めて会談している。「NHK NEWS WEB」   

 モンゴルの大統領特使に任命された大相撲の元横綱朝青龍も同席したという。

 安倍晋三「大統領は柔道の黒帯を持っていると聞いていて、日本の文化にも造詣の深い方だ。私はモンゴルを地域の重要なパートナーとして重視しており、今後ともに手を携え、両国の関係を発展させていきたい。

 (北朝鮮は)日本の上空を通過する弾道ミサイル発射に続き、核実験を強行したことは、これまでにない重大かつ差し迫った脅威であり、北朝鮮に対する実効的な圧力を強化する必要がある」

 記事は最後に安倍晋三が北朝鮮に対する実効的な圧力強化の必要性から制裁強化の新たな安保理決議採択の実現に理解を求め、両首脳は拉致問題の早期解決を含めて北朝鮮への対応で引き続き協力していくことを確認し合ったと書いている。

 安倍晋三は一方で対北朝鮮圧力強化の必要性を訴え、他方で拉致問題の早期解決を含めて北朝鮮への対応で引き続き協力していくことを確認し合うことが如何に矛盾しているか、鈍感にも気づいていない。

 安倍晋三は北朝鮮が2017年8月29日早朝に北海道上空を通過して太平洋上を目標地点とする事前の通告ない弾道ミサイルを発射した際、トランプ大統領と最初の電話会談を行っている。

 安倍晋三「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ。『すべての選択肢がその上にある』というアメリカの立場を支持している」(NHK NEWS WEB

 安倍晋三の発言は圧力の強化のみの強硬な姿勢は対話を排除させることになる双方の関係を暗に言い当てている。あるいは対話の排除を条件として圧力強化という強硬な政策が成り立つ関係を示唆している。

 日本が北朝鮮に対して対話を排除、圧力一辺倒の強硬な姿勢で対応したとき、北朝鮮は対話で応じるだろうか。強硬な姿勢に対して強硬な姿勢という同調効果しか生まないことは次の事例が象徴的に示している。

 北朝鮮は2017年7月4日に続いて7月28日も弾道ミサイルを発射、最初の発射の翌日7月5日に大陸間弾道(ICBM)ミサイル「火星14型」の初めての発射実験に成功した発表した。

 2017年8月3日に新しい防衛相に就いた小野寺五典が2017年8月4日に報道各社の共同インタビューに応じて、自民党検討チームの座長として今年3月に政府に提言した敵のミサイル基地を叩く「敵基地攻撃能力」の保有検討を「弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のためのに進めていきたい」と発言したことに北朝鮮は反応、8月9日、北朝鮮の朝鮮中央通信が「我々は既に、決心すれば日本列島を瞬時に焦土化できる能力を備えた。日本の反動層が引き続きせせこましく振る舞うなら、無慈悲な核の強打を免れず、日本列島が太平洋に沈むことになる」(日経電子版/2017/8/9 23:35)との声明を発表している。

 現在のところ言葉の威嚇でしかないが、圧力に対しては圧力の同調効果、強硬な姿勢に対しては強硬な姿勢の同調効果しか跳ね返ってきていない。      

 北朝鮮は9月3日午後0時29分頃に行った自らの水爆実験に対して国連安全保障理事会がアメリカや日本主導のもと、新たな制裁決議の採択の動きを見せたことに対して日米に対して次のように威嚇したと、2017年9月8日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 アメリカに対して「水爆実験に込められた意味と警告を正しく判断できず、制裁と圧迫に執着すれば到底耐えられない断固たる対応に直面する」

 日本に対して「これ以上アメリカの手足となってふるまってはならない。制裁に率先して加担してきた罪に決着をつけるときを待っている」

 同じく言葉の威嚇にとどまっているが、北朝鮮に対する圧力=強硬な姿勢のみが強まって、それに応じて北朝鮮がそれ以上の圧力=強硬な姿勢て対応せざるを得なくなって同調効果が相互にエスカレートしていった場合、いつかは臨界点に達して双方が衝突しないとも限らない。

 要するに安倍晋三は北朝鮮の強硬な姿勢だけを誘発するような日本側の圧力強化、強硬な姿勢が北朝鮮側に対して拉致解決の話し合いを持ち出す機会を与える余地を逆に奪っていることになる。

 本人は気づいていないだろうが、拉致問題を置き去りにすることで可能となっている安倍晋三の圧力一辺倒の強硬な姿勢であり、北朝鮮の同調効果としての強硬な姿勢に過ぎない。

 日本と北朝鮮が、あるいは安倍晋三と金正恩が本質的にはこのような相互関係を築いているにも関わらず、当然、拉致解決の進展を見い出すことは毛程もできない関係を築いていながら、モンゴル大統領と拉致問題の早期解決を含めて北朝鮮への対応で引き続き協力していくことを確認し合った。

 当然のことだが、「私達の使命はすべての拉致被害者のご家族の皆様が、自分のお子さん達を、そしてご親族を、自らの手で抱きしめる。その日を目指して、そしてそのことが可能になるまで、安倍政権の使命は終わらない」 の言葉を自らウソにしていることになる。

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