前原誠司は民進党代表選が行われた党臨時大会で決意表明を行った。
前原誠司「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている。決意を示せば、失笑、冷笑で迎えられる。私はそれを変えていく」。
他の勢力との連携や協力の可能性は排除しない。しかし、私たちの理念、政策に賛同してくれることが第一だ。私たちの政策理念を高く掲げて、皆さんに強力をお願いする。
大切なのはどのような社会をつくるのか、それを実現するためには具体策はどうなのか、そして未来をこじ開ける覚悟が我々にあるのか」(「産経ニュース」)
そのとおり、「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている」
共同通信世論調査で「支持する政党はない」と答えた無党派層のうち、民進党の前原誠司新代表に「期待する」とした回答は33・1%、「期待しない」は56・1%。「政権交代などでできっこない」が多数を占めている。
但し前原誠司は「未来をこじ開ける覚悟が我々にあるのか」の物言いで、自身は覚悟があることを表明している。
「未来をこじ開ける覚悟」とは安倍一強国家主義政権を政権の座から引きずり下ろす覚悟を指す。
8月21日告示日の共同記者会見では安倍一強について次のように述べている。
前原誠司「自民党のみ(しか)選択肢がない。そしてなおかつ先般の都議会議員選挙では50パーセント以上の方が支持政党がない、選ぶものがない。これは我々民進党の責任、責務だと思っています」
前原誠司「今自民党しか選ぶ選択肢がないというそういう環境に置かれている国民は不幸だと思いますし、これは我々野党第一党の責任である、歴史的な責任であるとそう思っております」
安倍一強を突き破って「未来をこじ開ける覚悟」の達成を自らの責任としたことになる。相当の決意なのだろう。
そして新代表として当選を果たした後の挨拶の最後に次のように述べている
前原誠司「決意と覚悟を持って、皆さんと一緒に、この難しい局面を、われわれのためでなく国民のために切り開くことを心からお誓い申し上げて、代表という大変重い役割をいただいた決意の表明と、全ての皆さん方に対する御礼のご挨拶とさせていただく。ありがとうございます。よろしくお願いいたします」(「産経ニュース」)
「決意と覚悟を持って」安倍一強国家主義政権を打破し、「未来をこじ開る」プロセスに添ったリーダーシップ(指導者としての素養・力量・統率力)を発揮する責任を負ったことになるし、周囲からもそのようなリーダーシップの発揮を求められることになる。
前原誠司は党運営の要となる幹事長に当選2回の山尾志桜里の就任を内定していた。党のイメージ刷新を考えてのことだとマスコミは伝えていたが、検察官上がりだとかで、そのことの影響か、元々の性格なのか、国会質疑での畳み掛けるような攻撃的な姿勢を持ち味としている。
前原誠司はその持ち味を以ってして党のイメージ刷新を考えいたはずだ。何らかの持ち味なくして党のイメージ刷新を託すということはあり得ない。
ところが、役員人事を決める9月5日の党本部での両院議員総会で前原は一旦内定した山尾志桜里を断念、大島敦元総務副大臣(60)を起用した。
断念の理由は衆院当選2回という政治経験の不十分さに党内から懸念が噴出、撤回に追い込まれたのだという。
要するに持ち味よりも年功序列が優先された。だから、当選6回で60歳という年齢を経た大島敦を年功序列的に政治経験十分ということで代打に起用したということなのだろう。
この起用はまた、“無難さ”の選択を意味する。いわば持ち味よりも年功序列、“無難さ”を罷り通らせた。
大体が政治経験の不十分さを言うことは政治家になる前の諸々の社会的経験を問題視していないことを示す。と言うことは、政治家にとって政治経験のみを絶対だとしていることになる。
「Wikipedia」によると、山尾志桜里は2004年に検察官任官に就任、東京地方検察庁、千葉地方検察庁、名古屋地方検察庁岡崎支部に勤務し、2007年に退官している。3、4年間の検察官経験が加味されない政治経験とはどういう経験なのだろうか。
政治経験だけを問題とする自分たちの非合理性に気づかない政治家という生き物はどういう生き物なのだろうか。
前原誠司のこの人事のもたつきは「決意と覚悟を持って」安倍一強国家主義政権を打破し、「未来をこじ開る」、あるいは政権交代を果たす等々、並べ立ててきた勇ましい言葉に見合うリーダーシップを発揮したということができるのだろうか。
民進党代表の任期は3年。3年持たせることなど考えない方がいい。前原誠司は上記両院議員総会で、「早ければ(3補選と同時に)10月22日に総選挙があるかもしれない。我々が新たな社会像、国民に選択肢を示すことは歴史的な使命、責務だ」と述べている。
年内になくても、衆議院議員の任期は2018年12月13日に切れるから、来年は必ず行われる。前原の進退はその結果によって決まる。現有議席を守ることができなければ、政権の選択肢を示すことができなかった責任を取らなければならないだろう。
蓮舫は民進党の支持率を挙げるどころか、下げる方に貢献し、都議選挙民進党の敗北を受けて任期1年に届くことができずに自ら責任を取る形で2017年9月1日に辞任している。
要するに前原誠司は次期総選挙に焦点を合わせて、すべての政治行為をそこに収斂させて行かなければならない。そこに向けてリーダーシップを発揮するのも、その結果の責任を取るのも前原誠司自身である。
政治経験が浅いだ、何だと言っている連中ではない。2018年12月13日以内に進退の節目を迎えることになるというのにその出発点で自ら決めたことに踏ん張ってリーダーシップを発揮できなくて、党運営の要となる幹事長人事で妥協し、無難を選択した。
初っ端からそうであるということは、この先もこの歩みが続くことの予兆であり、今後を占うことになるはずだ。