山尾志桜里不倫疑惑:前原誠司の「ご本人しか分からないところがある」と本人の釈明は不祥事への免罪符化

2017-09-09 11:12:12 | Weblog

 どのような形の不倫をしようと、露見した場合の火の粉は自身の身にのみに降り掛かってくるわけではない。

 前原誠司民進党新執行部発足当初、党ナンバー2の幹事長に内定していた東大法学部卒、43歳、検事出身の、世間一般では才媛と看做されているのだろう、山尾志桜里が当選2回に過ぎないということからなのか、政治経験が不十分ということで内定から外されることになったといったことがマスコミによって報道された。

 ところが、そこに2017年年9月7日発売の週刊文春記事、既婚男性との不倫報道が加わって、9月5日の党本部での両院議員総会で幹事長は他の人物にあてられることになった。

 双方共に子どもありの既婚同士。相手は8歳年下35歳の弁護士事務所の代表弁護士、一方は野党第一党新体制の幹事長内定。週刊誌としたら、一大スクープ、格好の餌食だったに違いない。売れに売れて、週刊文春編集部内で祝杯を上げる姿が目に浮かぶ。

 山尾志桜里は9月7日の夜、説明のための記者会見を開いたが、記者団の前で文書を読み上げたのみで、記者の質問を受け付けなかったという。このことは他党議員や閣僚の不倫に関しての説明責任が文書朗読だけで終えても、それ以上は追及できない前例となりかねない。

 少なくともそうした場合、民進党は説明責任を十分に果たしていないと非難することはできなくなる。

 自分たちが十分に説明責任を果たしてこそ、他者に対しても十分に説明責任を求める資格が出てくる。

 以下、文飾は当方。

 「文書全文」(asahi.com/2017年9月7日22時44分)
  
 本日発売の週刊誌報道に端を発し、国民の皆様、愛知7区地元有権者の皆様、ともに闘ってきた同士でもある子育てに奮闘するお母さんをはじめ応援いただいてきた皆様、同僚議員、自治体議員、民進党の党員・サポーターの皆様に、大変なご迷惑をおかけする事態になってしまいました。

 本当に申し訳ありません。

 今回の事態を受けて、本日離党届を幹事長に提出してまいりました。

 この週刊誌に記載のある○○(原文は実名)弁護士には、憲法問題や共謀罪、雇用問題など極めて幅広い政策分野において、政策ブレーンとして、具体的な政策の立案・起案作業や質問・スピーチ・原稿などの作成作業をお手伝いいただいてきました。こうした政策立案や質問作成などの打ち合わせと具体的な作業のため、○○弁護士とは頻繁にコミュニケーションをとってまいりましたし、こうした打ち合わせや作業は、二人の場合もそれ以上の複数人である場合もありました。打ち合わせ場所については、双方の事務所や会食の席上である場合が相当多数回ありますが、同弁護士のご自宅の場合もありました。

 また、本件記事記載のホテルについては、私一人で宿泊をいたしました。

 ○○弁護士と男女の関係はありません。

 しかし、誤解を生じさせるような行動で様々な方々にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しおわび申し上げます。

 そのうえで、このたび、民進党を離れる決断をいたしました。

 まずは、冒頭に記載しましたとおり、国民の皆様、地元有権者の皆様、支援者の皆様、民進党同僚議員、自治体議員、党員・サポーターの皆様に改めておわびを申し上げます。

 また、とりわけ前原・民進党新代表には、新しい執行部を立ち上げるタイミングで、多大なご迷惑をおかけすることになったこと、先日の党大会で、党再生のために結束を誓いあった仲間の皆様の思いに、水を差す形になってしまったことに、心からおわび申し上げます。

 私は、民主党・民進党に育てられ、職責を果たすためのたくさんのチャンスをいただき、落選中を含めて支え続けていただきました。私自身、約10年前に政治の世界に挑戦を決めたときから現在にいたるまで、この国に必要な二大政党制の一翼を担う使命を負っているのは民主党・民進党であると確信し、離党を考えたことはこれまで一度もありません。感謝の気持ちで一杯であるのと同じだけ、苦しく、悲しい思いがあふれます。

 民進党が掲げてきた理念、取り組んできた政策への思いは今も変わりません。

 しかし、まもなく始まる臨時国会、国会論戦の場に、今回の混乱を持ち込むことは、民進党、そしてご支援いただいた皆様にさらなるご迷惑をおかけすることになると判断し、離党する決断をいたしました。

 平成29年9月7日 衆議院議員 山尾志桜里

 厳しいことを言うなら、「週刊誌報道に端を発し」たわけではあるまい。自身の行動が端緒となったはずだ。その行動が週刊誌にスクープされ、世間に曝されることとなった。

 「本件記事記載のホテルについては、私一人で宿泊をいたしました」と言っていることは、週刊誌が伝えているホテルには二人で部屋を取ったが、山尾志桜里一人が宿泊し、相手の弁護士は宿泊しませんでしたという意味になる。 

 「○○弁護士と男女の関係はありません」と言っていることは二人でホテルに入ったが、性行為はなく、相手の男性は宿泊せずにホテルをチェックアウトしたという事実関係を取ることになる。

 だが、何のために二人でホテルに入ったのかの説明はない。性行為が目的ではない、誰に対しても納得の行く他の用事が目的のホテル入室であることを挙げない限り、男女の関係を否定したとしても、俄には信じ難いことになる。

 もし事実男女の関係がなかったなら、不倫報道自体がプライバシーの侵害となる名誉毀損の虚偽事実の不法な社会的暴露に当たる。どこに離党しなければならない理由があるというのだろうか。

 離党どころか、事実無根の報道で名誉を傷つけられたと訴訟に持ち込んで週刊誌と戦わなければならない。極めてプライバシーに関係することで名誉を傷つけられて戦わない国会議員など意味を失う。

 国会議員は国民の精神的・経済的生活向上のために戦っている。個人の権利に関わるプライバシーは生活の本質そのものに影響してゆくゆえにそれを保護する戦いを自ら手本として示さなければならないはずだ。

 だが、自身は男女の関係はないとしている不倫報道を重大な名誉毀損、重大なプライバシーの侵害だと戦わずして、週刊誌報道に対して一種負けを認めることになる離党を選択する。

 この矛盾に対して唯一納得のいく説明は不倫は事実としなければならない。

 山尾志桜里は離党の理由を「誤解を生じさせるような行動」によって周囲に迷惑をかけたことに置いている。

 このことは報道=不倫の否定を前提としている。“誤解を生じさせたに過ぎない行動”だと。

 だが、もし報道=不倫が事実であった場合、それを「誤解」だと自身に対して自らを免罪して自己擁護に走り、民進党全体がその免罪を認めた場合、あるいはその自己擁護を認めた場合、他党の議員、あるいは異なる政党の閣僚が不適切発言をしたり、不倫等不祥事を起こして、それを「誤解」だと自らを免罪して自己擁護に走ったとしても、それ以上は追及することができなくなる。

 自党のことは許して、他党のことは許さないということはあり得ないからだ。

 前防衛相の稲田朋美が6月27日(2017年)夕方の東京都板橋区で自民党都議選公認候補の応援演説で、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と応援演説をしたことは自衛隊の政治利用、選挙の私物化、自衛隊法違反、公職選挙法違反、憲法違反との批判を受けたが、6月30日の記者会見で、「誤解を招きかねない発言があったため、直後に趣旨を説明し、同日中に会見し、撤回・お詫び申し上げた次第でございますが、この場において、改めて『防衛省・自衛隊、防衛大臣』の部分は撤回し、お詫び申し上げます」と謝罪・撤回している。

 いわば発言は自衛隊の政治利用でもない、選挙の私物化でもない、自衛隊法違反、公職選挙法違反、憲法違反でもない、単なる「誤解を招きかねない発言」だったと自分で自分を免罪する自己擁護に努めている。

 免罪に対して免罪でいく相互擁護でいかなければならなくなるだろう。

 麻生太郎は2017年8月29日の派閥研修会で「政治家になろうとした動機は、私は問わないが、結果が大事だ。いくら動機が正しくとも、何百万人も殺したヒトラーは、だめだ。きちんとした結果を国民に残して初めて、名政治家だったと言われる」と発言、結果は悪いがヒトラーが政治家を志した動機を正しいうちに入れた考え方が批判されたが、翌30日にコメントを発表、「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ。政治家にとって結果を出すことが、すべてであるということを申し上げたかったもので、この点を強調する趣旨で、悪しき政治家の例としてヒトラーを挙げた。ヒトラーは動機においても誤っていたことは明らかだ」(NHK NEWS WEB)と釈明、「誤解を招いた」だけのことだと自らを免罪し、自己擁護しているが、誤解だとすることによって自らを免罪とする自己擁護をお互いに認め合わなければならなくなるだろう。

 一度は民進党ナンバー2の幹事長職に山尾志桜里を内定した新代表の前原誠司が9月8日、この不倫騒動に関してぶら下がり記者会見を開いている。

 「産経ニュース」  

 --党常任幹事会で山尾氏の離党届受理を決めた。こういう事態になったことを率直にどう受け止めているか
 「山尾志桜里さんは今まで、元検事として犯罪者が社会に絶望して罪を犯し、それが被害者の希望を奪うと、こういう社会の悪循環を正さなければいけないという高い使命感の中で議員になられた。今までさまざまな分野で活動されてきた優秀な議員だと思っていただけに極めて残念な思いがする」

 --民進党は政府に説明責任を求めてきたが、山尾氏は昨夜、記者団の質問を受け付けなかった

 「ご本人の判断をわれわれは尊重したいと考えている」

 --交際相手と報じられた弁護士との男女関係を否定した上で離党届を出した。慰留する考えはなかったのか

 「ご本人しか分からないところがあるし、例えば今まで旧民主党、民進党で議席をおかれて活動してきた方が党を離れるという決断をすることは極めて重い判断だと思っている。その意味においては、ご本人の判断、ご本人にしか分からないところの中で判断したということなので、尊重したいと考えている」

--山尾氏本人とは話したのか

 「私自身も含めて党としていろんなお話を聞かせていただき、最終的にはご本人が判断された。常に申し上げているが、議員の出処進退は自ら決めることなので、ご本人のそういった決断をわれわれは尊重したいと考えている」

 --山尾氏は男女関係を否定しながら離党した。離党届受理は山尾氏の意思を尊重するということか

 「事実関係についてはご本人にしか分からないことだ。そしてご本人が前原体制のスタート時点で党に迷惑をかけたということをおっしゃった上で、総合的に判断されてご自身の離党を決められたと思っているので、そのことを尊重したいと考えている」

 --党として事実関係の確認はしていないということか。事実だったかどうかの評価は今後どうするのか

 「事実関係は本人にしか分からないことだ。本人がそれを踏まえていろんな政治家としての出処進退をご判断いただいたということで、それをわれわれは尊重したいということを申し上げている」

 --山尾氏の選挙区である衆院愛知7区に党として対立候補を立てるか

 「先ほど離党を常任幹事会で承認した(ばかりな)ので、今そういうことをただちに考えるということではない」

 --民進党は国会論戦でも週刊誌報道などをもとに「疑惑は報じられた側に立証責任がある」という前提で追及してきた。追及の先頭に立っていた山尾氏が報じられた内容について説明しないままほおかむりしていることを代表としてどう考えるか
 「ご本人はいろんなことをお考えになられて党を離れた。そういう決断をされた。これからのことについては、ご本人がさまざまなことで政治家として自らのご判断で行動されるべきだと思っている」

 --党運営に与える影響は

 「とにかく(新執行部は)出発したばかりだ。私が臨時党大会で申し上げたのは『自民党しか選ぶ状況がないという今の政治状況は、民進党のためではなくて国民にとって不幸である』と。われわれがしっかりとした選択肢を示すことが、日本の民主主義を機能させることになるんだという高い責任感のもとで、われわれは今後どんな状況がこれから起きようとも、われわれの歴史的な役割を果たしていく。その思いに全く変わりはないので、仲間と一緒に力を会わせて取り組んでいきたい、頑張っていきたいと思う」

 前原誠司は「事実関係は本人にしか分からないことがある」という趣旨のことを三度発言して、山尾志桜里を擁護している。

 民進党自身が前原誠司が代表として先頭に立って国民を裏切る行為があったのかなかったのかを究明して国民の前に明らかにせずに、あるいは本人に誰もが納得のできる明確な説明責任を求めずに、「事実関係は本人にしか分からないことがある」と本人任せの事実として擁護した場合、他者の議員や閣僚の自らの資質にそぐわない不適切な発言や行動があったとしても、“本人にしか分からない事実”を認めて擁護しなければならなくなって、結果的に不適切な発言や行動に対して説明責任を果たさなくても免罪しなければならなくなる恐れが出てくる。

 山尾志桜里の不倫報道に関する党代表としての前原誠司の発言には山尾志桜里本人に対する免罪を含んでいるだけではなく、山尾志桜里本人の釈明にしても、自身に対する免罪を含んでいるだけではなく、その免罪は同様の行動をした者の免罪符としても機能する恐れが出てくるのみならず、免罪符として利用したとしても、その免罪を認めなければならない立場に立たされることになるだろうということである。

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