河野太郎のジュネーブ軍縮会議に関わる薄汚い情報操作に基づいた「後ろから鉄砲玉」とする東京新聞批判

2017-09-17 12:36:45 | 政治
 
 覗き趣味があって「Google ニュース」を覗いていたら、神奈川15区、54歳の外相河野太郎が「核軍縮の政治的利用」、「後ろから鉄砲玉」とかの言葉を使って東京新聞を痛烈に批判する記事を自身のブログに載せていると「産経ニュース」が紹介していたから、早速そのブログを覗いてみた。   

 全文を引用してみる。文飾当方。

 後ろから鉄砲玉河野太郎公式サイト「ごまめの歯ぎしり」/2017.09.16)  

日本で脱原発を唱える者や団体には二種類ある。

実際に脱原発を実現しようとして、一歩ずつでも前に進もうとするものと脱原発が実現するかどうかはどうでもよくて、脱原発を使って票や金、支持を集めようというものだ。

現実に脱原発を実現しようとするものは、同じ方向を向いているものすべてでスクラムを組んで前に進もうとする。

その一方で、脱原発を政治的に利用しようとするものにとっては、同じような主張をするものが邪魔になる。

だから少しでも主張が違ったり、現実的に妥協しながらでも前に進もうとしたりするものを徹底的に批判する。

残念なことに核軍縮に関しても同じようなことが起きている。

少しずつでも核軍縮を進めていくためにスクラムを組もうというものと、核軍縮を利用しようというものにやはり分かれる。

その一つの典型が、ジュネーブ軍縮会議で日本の代表部がとった行動に対する後ろからの鉄砲玉だ。

これまで日本政府は、高校生平和大使のうち一人を政府代表団として登録し、軍縮会議のなかで日本政府の代表としてスピーチをする機会を作ってきた。

しかし、そうした日本政府の行いを快く思ってこなかった国もあった。

そしてとうとう今年、日本政府に対して、高校生を代表団として登録することに明確に反対するという申し入れが行われた。

軍縮会議の運営は、コンセンサス、つまり参加国の全会一致で行われるため、もし、日本政府が高校生の登録を強行すれば、コンセンサスを与えないとまで主張してきた。

日本の代表部はやむを得ず、高校生平和大使の政府代表団としての登録をあきらめたが、それで終わりにはしなかった。

日本の軍縮大使は、代表部で高校生平和大使のために夕食会を開き、そこに核兵器国、非核兵器国で核兵器禁止条約に賛成している国と反対している国など立場の違う国の代表を招いて、高校生から話をしてもらった後、双方向の議論を実現させたのだ。

昨年までは、平和大使の中から一人だけ代表団に登録をして会議でスピーチをするだけだったが、今回は高校生平和大使全員が各国代表と双方向の議論をすることができた。

平和大使としてジュネーブを訪れた高校生にとっては、様々な考え方を聞き、考え、議論をする良い機会になったはずだ。

そしてこういう事実を外務省並びにジュネーブの政府代表部でメディアに説明をした。

その結果、何が起きただろうか。

例えば東京新聞は、8月23日付けの記事の中で、「高校生たちがスピーチで、禁止条約に触れることに危機感を覚えての対応ではないか」という
第三者のコメントを引用している。

それが事実でないことを東京新聞は知ってしまっているから、記者はそう書けないが、第三者が言ったコメントを載せるぶんには責任はないと考えたのだろうか。

さらに「夕食会の場で話すのと議事録に残る会議でスピーチをするのとでは意味が全く違う」というやはり第三者のコメントまでわざわざ載せている。

参加した高校生全員が立場の違う各国の代表と双方向で議論できるのと、一人だけが会議で一方的にスピーチをするだけなのでは、参加した高校生にとって意味合いが大きく違うはずだが、それを正確に伝えていない。

そして高校生のスピーチに反対した国がどこか、取材していればわかっているだろうはずだが、その国の政府に対する批判は一言もない。

さらこの東京新聞の記事によれば、まるで核兵器禁止条約は素晴らしいが、「核保有国もそうでない国も巻き込んで着実にこの脅威を減らす方向へ歩んでいくことを考える」のはけしからんことでもあるかのようだ。

エベレストの頂上をヘリコプターで一気に目指すのもありかもしれない。
しかし、頂上付近にヘリコプターを着陸させるのは極めて非現実的だと思うならば、ベースキャンプから一歩一歩、着実に歩いて登るやり方もあるはずだ。

核軍縮をただ何かに利用しようというならば何を言おうが勝手だが、現実に核軍縮を進めるならば、同じ方向を向いている者同士、手を携えていかなければならない。

後ろから鉄砲玉を撃つ必要はない。

 脱原発にはその実現に向けて地道に「スクラムを組む」者と脱原発を口実に政治的な利用の面から票やカネ集めに奔走する者の二種類あるように核軍縮に関してもその実現に向けて地道に「スクラムを組む」者と「核軍縮を利用しようというものにやはり分かれる」

 その典型例が「ジュネーブ軍縮会議で日本の代表部がとった行動に対する後ろからの鉄砲玉だ」と批判している

 既にこの時点で矛盾が現れている。脱原発活動と核軍縮活動に於ける肯定的例と否定的例を並べた以上、核軍縮活動に於ける否定例は核軍縮を口実に行う政治的な利用の面からの票やカネ集めの奔走ということでなければならない。

 ところが、例えそのことが非難されなければならない行動だとしても、「ジュネーブ軍縮会議で日本の代表部がとった行動に対する後ろからの鉄砲玉」は明らかに政治的な利用の面からの票やカネ集めの奔走の部類とすることはできない。

 では、「後ろからの鉄砲玉だ」とはどのような行動に対して言っているのか。

 ジュネーブ軍縮会議に日本政府は高校生平和大使の一人を政府代表団として登録、「軍縮会議のなかで日本政府の代表としてスピーチをする機会を作ってきた」が、「そうした日本政府の行いを快く思ってこなかった国もあった」

 そのような国が今年の会議に関して「日本政府に対して、高校生を代表団として登録することに明確に反対するという申し入れが行われた」

 会議の運営は全員合意の全会一致をルールとしている都合上、「日本政府が高校生の登録を強行すれば、コンセンサスを与えないとまで主張してき」て、全会一致が崩れるため、「日本の代表部はやむを得ず、高校生平和大使の政府代表団としての登録をあきらめた」

 但しその代償として、「日本の軍縮大使は、代表部で高校生平和大使のために夕食会を開き、そこに核兵器国、非核兵器国で核兵器禁止条約に賛成している国と反対している国など立場の違う国の代表を招いて、高校生から話をしてもらった後、双方向の議論を実現させた」

 この方法は実際の軍縮会議では高校生平和大使の一人が議場でスピーチを行う一方通行の意思伝達と違って、夕食会では高校生たちと「立場の違う国の代表」同士との議論が行われて、双方向の意思伝達となり、却って有意義な展開となり、高校生平和大使にとっては良い機会となった。

 そしてこういう事実を外務省並びにジュネーブの政府代表部でメディアに説明をした。

 ところが東京新聞は8月23日付け記事の中で「第三者のコメント」引用で「高校生たちがスピーチで、禁止条約に触れることに危機感を覚えての対応ではないか」とか、「夕食会の場で話すのと議事録に残る会議でスピーチをするのとでは意味が全く違う」と、事実ではない批判を行い、「高校生のスピーチに反対した国がどこか、取材していればわかっているだろうはずだが、その国の政府に対する批判は一言もない」と東京新聞の「夕食会」での有意義な議論を無視した不正確な報道を逆に批判、さらに「核兵器禁止条約は素晴らしいが」、「核拡散防止条約」のことを言っているのだろう、日本政府が「『核保有国もそうでない国も巻き込んで着実にこの脅威を減らす方向へ歩んでいくことを考える』のはけしからんことでもあるかのようだ」と日本政府の核軍縮対応を正当化している。

 そして高校生平和大使が正式の議論の場でスピーチできなかった東京新聞の記事での取扱いを政府に対して「後ろから鉄砲玉を撃つ」行為であり、「核軍縮をただ何かに利用しようというならば何を言おうが勝手だが、現実に核軍縮を進めるならば、同じ方向を向いている者同士、手を携えていかなければならない」と警告している。

 東京新聞の記事での取扱いが何か魂胆のある邪なものであったとしても、政府に対して「後ろから鉄砲玉を撃つ」行為だと批判しなけなければならない程悪質だと言えるだろうか。

 ここは間違っていますと訂正を求める程度で済む問題に見える。

 大体が「後ろから鉄砲玉を撃つ」という行為は現場での言葉が意味する両者の態勢の間での直接的な行為を言う。

 例えば首相の支持率が極端に低くなって、これでは選挙は戦えないからと反首相の集まりを何人かで持つ。首相と利害を同じくする閣僚、議員はそのような集まりを首相の足を直接的に引っ張る行為と見て、比喩的に「後ろから鉄砲玉を撃つ」ということを言う。

 高校生のスピーチに反対する国があり、会議の仕組み上、その反対を受け入れた。対して東京新聞が記事で間違った批判をした。そのことがジュネーブ軍縮会議で日本代表部の足を直接的に引っ張ることになる、あるいは比喩的に足を引っ張ることになる何らかの損害、あるいは何らかの不利益を与えたとでも言うのだろうか。
 
 与えたことによって初めて「後ろから鉄砲玉を撃つ」行為だと批判できる。ところが、文章のどこからも直接的な被害や不利益は見えてこない。

 受けた損害を具体的に説明しなければ、「後ろから鉄砲玉を撃つ」は逆に誹謗中傷となる。

 こういったことだけではない。河野太郎の批判の進め方には薄汚い情報操作を混じえている。「高校生のスピーチに反対した国がどこか、取材していればわかっているだろうはずだ」と言っているが、公式サイト、もしくはブログは会員制の体裁を取っていない限り、不特定多数の解釈に委ねる骨格となっている以上、核保有国なのか、非核保有国なのかで「反対」の解釈が異なってくるのだから、河野太郎自身がブログ上で明らかにすべきだが、それを伏せている。

 これは明らかに情報操作に当たる。

 反対した国がどこかネットを調べたが、知ることができなかった。社民党の福島みずほがスピーチ中止の理由を問い合わせた外務省軍備管理軍縮課の回答を自身のブログに載せていた。

 「福島みずほのどきどき日記」2017年08月22日)  

<外務省軍備管理軍縮課回答>

軍縮会議は政府間交渉の場であり,通常政府代表の発言しか認められていない。これまでは,高校生平和大使を当日のみ政府代表団として登録するという例外的な対応を取ってきたが,近年こうした例外的な措置を問題視する国が出てきた。

そうした状況の下,意思決定においてコンセンサスを必要とする軍縮会議において,こうした例外的な対応を継続しスピーチの機会を得ることは困難であることから,本年は高校生平和大使の関連団体に対してその旨お伝えすると共に,日本政府代表部において核兵器国,非核兵器国を含む各国外交官と高校生平和大使との意見交換の機会を設けたところである。

核兵器禁止条約の採択や高校生の発言内容とは関係がない。(以上)

 この回答でも核保有国なのか、核非保有国なのかで意味が違ってくることを無視して反対国を明らかにしていない一種の情報操作が存在する。

 情報操作はこれだけではない。高校生のスピーチに「高校生を代表団として登録することに明確に反対」した理由である。理由の存在しない意思表示はあり得ない。理由も無く、反対だから反対だといった暴論でしかない意思表示が罷り通るとしたら、民主主義は存在意義を失う。

 河野太郎は反対理由を明らかにせずに東京新聞の記事を「後ろから鉄砲玉を撃つ」行為だと批判している。

 このような経緯にしても明らかにしないという情報操作の介在があって初めて可能となる。

 反対理由を明らかにすれば、その正当性に応じて「日本の代表部はやむを得ず、高校生平和大使の政府代表団としての登録をあきらめた」ことの正当性如何が明らかになる。

 河野太郎は理由や具体的な経緯を明らかにせずに「登録をあきらめた」ことの正当性を一方的に言い立てているに過ぎない。

 河野太郎が、もしくは日本代表部が全てを明らかにしていれば、東京新聞は「第三者のコメントを引用」して「高校生たちがスピーチで、禁止条約に触れることに危機感を覚えての対応ではないか」とか、「夕食会の場で話すのと議事録に残る会議でスピーチをするのとでは意味が全く違う」とか、記事に書くこともなかったはずだし、書くこともできなかったはずだ。

 河野太郎はまた反対の「申し入れ」に対して「登録をあきらめた」理由を「コンセンサスを与えないとまで主張してき」たためだと、全会一致のルールが崩れる点に置いているが、日本代表部が何ら反論もせずにその主張を一方的に受け入れたのか、あるいは何らかの反論を試みたが、賛成多数で相手の主張が通ったのか、いずれをも明らかにしていないことも情報操作に当たる。

 もし前者であったなら、日本政府、あるいは日本代表部の正当性は一切失う。また後者であるなら、どのような反論を試みたのか、その結果はどうなったのか、具体的に全てを明らかにしなければ、高校生のコメントが排除されることになった経緯の正当性・不当性は第三者は誰も判断できないことになって、前者・後者共にマスコミによって「第三者のコメントを引用」した記事を誘うことになる。あるいは「第三者のコメントを引用」した記事に頼らざるを得なくなる。

 河野太郎は高校生大使が本会議でスピーチできなくなった代わりに「日本政府代表部において核兵器国,非核兵器国を含む各国外交官と高校生平和大使との意見交換の機会を設けたところである」とその意義を伝えているが、このことが外務省サイトに詳しく記載されている。一部省略。

 「高校生平和大使のジュネーブ訪問」外務省/平成29年8月22日)
  
1 8月21日午後6時(現地時間)から,髙見澤將林軍縮会議日本政府代表部大使主催により,外務省のユース非核特使としてジュネーブを訪問した22名の高校生平和大使と各国外交団との意見交換会が行われました。この意見交換会には,49名の外交団職員その他関係者が参加しました。

(注)核兵器保有国からはフランス,中国,ロシア及びパキスタン,非核兵器国からはオーストラリア,韓国,マレーシア,インドネシア,スリランカ,カナダ,イタリア,オランダ,オーストリア,フィンランド,ポーランド,スウェーデン,ルーマニア,ベラルーシ,南アフリカ,ジンバブエ,コスタリカ,エクアドル等が参加。また,国連軍縮部,赤十字国際委員会(ICRC)も参加。

2 冒頭,髙見澤大使から,様々な国の代表の意見を直接聞く貴重な機会として積極的に対話をして欲しい旨の挨拶を行いました。続いて,高校生平和大使の代表者2名が活動につき報告した後,1名が被爆三世として自分の祖父の体験を発言し,核兵器のない世界の必要性を訴えました。

3 高校生平和大使は,少人数のグループに分かれ各国外交団との個別の意見交換を実施しました。意見交換会は予定時間を超過し午後8時30分に終了しました。各国外交団からは,初めての試みである高校生平和大使との対話を重視したこの意見交換会を評価する声が寄せられました。

4 この意見交換会は,ジュネーブを訪問した日本の高校生の核廃絶に向けた思いを各国に直接訴える機会として,新たに実施されたものです。

5 高校生平和大使は本22日,軍縮会議を傍聴した後,国連軍縮部を訪問し,活動報告及び核廃絶に向けた署名の手交を行う予定です。

 高校生平和大使が核廃絶を訴えている関係から、「日本政府に対して、高校生を代表団として登録することに明確に反対」した国は核保有国に思えるが、河野太郎は東京新聞の記事には高校生のスピーチに反対した「国の政府に対する批判は一言もない」と書いている。

 どうも矛盾するように見えるが、それが核保有国の場合、河野太郎が言っている「夕食会」、ここで言っている「意見交換会」にジュネーブ軍縮会議参加国でありながら参加していない「核兵器保有国」はアメリカ、イギリス、インドのみである。

 核保有国と限定した場合、反対した国はアメリカの疑いが最も濃く、次にイギリス、三番目がインドということになる。

 これがゲスの勘繰りだと言うなら、薄汚い情報操作など行わずに反対した国はどこか、反対の理由は何か、反対に対して日本代表部はどのような反論を試みたのか、反対に対する反論がどのような経緯を経て反対という結末を迎えたのか、全てを明らかにすべきである。

 また外務省は意見交換会には「49名の外交団職員」が参加していると書いているが、「外交団職員」であって、軍縮会議に参加する各国外交団の長に当たる特命全権大使というわけではない。

 聞き手の格によって直接耳に届くか届かないかの違いが出て、説得効果は異なってくるし、質疑応答があったとしても、肝心の「核兵器保有国」は自国の軍事的安全保障を錦の御旗にして高校生に対して単に尋ねる、単に聞き置くといった形式が罷り通らなかった保証はない。

 当然、「有意義な展開となった」、「良い機会となった」と請け合うには参加した高校生に聞くのが最も正直な反応で、河野太郎の保証だけでは十分とは言えない。
 
 河野太郎は自分たちが満足な情報公開を行いもせずに、逆に情報操作を交えて必要とする情報を明らかにしないままに東京新聞の記事を「後ろから鉄砲玉を撃つ必要はない」と不当に批判する。

 外務大臣という重要な閣僚を担いながら、薄汚い情報操作に基づいたこの不当な批判は河野太郎個人の資質なのだろうか、安倍晋三の閣僚になると、安倍晋三の影響を受けて朱に交われば赤くなるということなのだろうか。

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