北朝鮮が2017年8月29日早朝に事前の通告なく弾道ミサイルを発射し、ミサイルは北海道上空を通過して太平洋上に落下した。安倍晋三は発射を受けて午前7時過ぎから7時半過ぎまで国家安全保障会議(NSC)を開催、その後首相官邸のエントランスなのだろうか、ぶら下がり記者会見に応じている。
安倍晋三「「我が国に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国の上空を通過した模様でありますが、直ちに情報の収集、分析を行います。そして、国民の生命をしっかりと守っていくために、万全を期してまいります」(首相官邸)
「国民の生命をしっかりと守っていくために、万全を期してまいります」と国民の生命の保全を確約しているが、これまでも圧力を以てして北朝鮮のミサイル開発阻止・核開発阻止を訴えているから、保全の方法は圧力で変わりはないはずだ。
安倍晋三はその後午前9時24分から約37分間、トランプと電話会談している。第1回電話会談と言うべきだろう。ミサイル発射に関しては合計3回、その後の核実験に関して1回、合計4回も行っているのだから。
この電話会談の内容を2017年8月29日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。
安倍晋三「「日本上空を飛び越える形で発射されるミサイルは、これまでとレベルの異なる深刻な脅威だ。安保理決議が出て、国際社会全体が圧力を強めている中での発射であり、これまでにない挑発だ。
北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ。『すべての選択肢がそ上にある』というアメリカの立場を支持している」――
「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ」
記事はトランプと北朝鮮に対する圧力強化で一致したと書いている。改めて“圧力の全面提示”を行ったことになる。
北朝鮮のミサイル開発阻止は現在は「対話」といった生ぬるい方法は役に立たず、「圧力、圧力、圧力」のみ、ときにはトランプが選択肢の一つとしてテーブル上に置いている軍事攻撃という強硬策も圧力の一つとして支持しているということになる。
トランプとの電話会談後、記者団のインタビューに応じている。
安倍晋三「北朝鮮が発射した弾道ミサイルが我が国上空を通過し、太平洋に落下いたしました。
政府としてはミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってまいりました。
我が国を飛び越えるミサイル発射という暴挙は、これまでにない深刻かつ重大な脅威であり、地域の平和と安全を著しく損なうものであり、断固たる抗議を北朝鮮に対して行いました。国連安保理に対して緊急会合の開催を要請します。国際社会と連携し、北朝鮮に対する更なる圧力の強化を日本は強く国連の場において求めてまいります。
強固な日米同盟の下、いかなる状況にも対応できるよう緊張感を持って、国民の安全そして安心の確保に万全を期してまいります」(首相官邸)
「国民の生命を守る」、「国民の安全そして安心の確保に万全を期す」と二度、国民の生命の保全を確約している。そしてその方法たるや、北朝鮮に対する一層の圧力強化だと、その一辺倒の立場を取っている。
安倍晋三はトランプとのこの電話会談に引き続いて翌日8月30日に第2回電話会談を行っている。時間は午後11時半過ぎから約30分間。
トランプとだけではなく、この間に韓国大統領やオーストラリア首相とも電話会談を行い、訪日中のイギリスのメイ首相とも会談していて、トランプとの電話会談ではこの報告をした上で北朝鮮に対して更に強い圧力をかけることで政策を変えさせる必要があるとの認識で両者が一致したと8月31日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。
安倍晋三は圧力こそ全てであるという考えに凝り固まっているようにさえ見える。
このトランプとの電話会談後、記者団のインタビューに応じている。
安倍晋三「日本の上空を飛び越えるミサイル発射の強行は極めて危険な行為であり、国際社会で圧力を高めていかなければならないということで、(韓国・豪州・英国の)それぞれの首脳と完全に一致した。今後とも、日米、日米韓、あるいは、イギリス、国際社会と連携しながら、北朝鮮が政策を変えるためにさらに緊密に連携していきたい」(同NHK NEWS WEB)
ここでも圧力こそが最強の政策だとばかりに「圧力」を持ち出し、圧力傾注で両者の認識を一致させている。
トランプとの電話会談はこれだけで終わらなかった。首相官邸から第3回電話会談を9月3日午前9時頃から約20分間行っている。「産経ニュース」
安倍晋三「北朝鮮情勢を受けて、この1週間でトランプ大統領と3度、電話首脳会談を行いました。今日の電話首脳会談においては最新の情勢の分析、そして、それへの対応についてあらためて協議を行いました。
北朝鮮が挑発行動を一方的にエスカレートさせている中において、韓国を含めた日米韓の緊密な連携が求められています。今後、日米韓と、しっかりと連携しながら、さらには国際社会とともに緊密に協力して北朝鮮に対する圧力を高め、北朝鮮の政策を変えさせていかなければならない、その点で完全に一致したところであります。
さまざまな情報に接しているわけでありますが、われわれは冷静にしっかりと分析をしながら、対応策を各国と連携して協議をし、そして国民の命、財産を守るために万全を期していきたいと思います」
「この1週間でトランプ大統領と3度、電話首脳会談を行いました」と、何カ国を回って、何人の首脳会談を行っただ、プーチンと何回首脳会談を繰返しただと回数を勲章としているようにここでも回数を誇っている。
一体全体、電話会談が北朝鮮に対するミサイル開発阻止のどのようなオマジナイとなるというのだろう。ミサイル発射のたびに電話会談を繰返してきたが、何のオマジナイにもならなかった。
ここでも「圧力」を言い立てているが、バカの一つ覚えの呪文のように「圧力」を唱えてきたにも関わらず、何のオマジナイにもならなかった。
にも関わらず、電話会談を繰返し、「圧力」の呪文を唱え続けている。
そして「圧力」こそが、北朝鮮ミサイル開発阻止→「国民の命、財産を守る」効果ある最善の方法であるかのように何度でも口にする。
この9月3日午前9時頃からの約20分間のトランプとの第3回電話会談から約3時間後の9月3日午後0時29分頃、北朝鮮の核兵器研究所は国営の朝鮮中央テレビを通じ「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載するための水爆実験に成功した」とする声明を発表した。
3回の電話会談は何の役にも立たなかった。「圧力」一辺倒の呪文も金正恩には通じなかった。
逆に日本が北朝鮮に対する圧力ともなり得る対北朝鮮防衛の一環として計画している海上自衛隊のイージス艦搭載の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」と陸上自衛隊使用の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得に関して「我々の戦略兵器を脅威だと騒ぎ立て、難癖をつけている。日本は先鋭化した地域情勢を煽っていると、危機に陥りかねない。弾道ミサイルはわが国を核で威嚇するアメリカを狙ったもので、アメリカの敵視政策に積極的に同調しない限り、我々の戦略兵器を恐れることはない」(NHK NEWS WEB)と、暗に日本を攻撃目標とする可能性を指摘さえしている。
いわば日本の対北朝鮮「圧力」が却って日本の危機の誘い水になりかねない状況にある。誘い水となった場合、安倍晋三が「圧力」は「国民の生命を守る」との趣旨で言っている言葉をことごとく裏切ることになる。
北朝鮮の今回の核実験は昨年2016年9月に続いて6回目の核実験である。気象庁が今回観測した地震の規模はマグニチュード6.1。前回はマグニチュード5.3。マグニチュードで0.8の差はエネルギーに換算して約16倍の大きさに相当すると「TBS ニュース」が伝えていた。
9月3日の朝にトランプと3回目の電話会談をしたばかりなのに安倍晋三は北朝鮮の核実験を受けて同9月3日午後11時3分から同13分まで第4回目となるトランプとの電話会談を行っている。
この電話会談の内容を「NHK NEWS WEB」(2017年9月4日 4時33分)が紹介している。
北朝鮮への圧力を強めるため日米で緊密に連携していくことを改めて確認した上で、安倍晋三は次のように発言したと伝えている。
安倍晋三「核実験の規模は過去最大で、日米のみならず国際社会に対する正面からの挑戦であり、許されざる暴挙だ。わが国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威であることから、日米同盟として団結して対応したい」
何のことはない、例の如くの言葉の羅列となっている。要するに形式・儀式の類いから一歩も出ていない。こういった程度の電話会談を何回行おうと、北朝鮮のミサイル開発阻止、核開発阻止に何かの役に立つと言うのだろうか。
安倍晋三はトランプとの電話会談後、首相官邸で3分間、恒例化している「記者会見」を行っている。
安倍晋三「国際社会の度重なる警告を無視して、北朝鮮が核実験を強行しました。我が国は断じて容認できません。北朝鮮の暴挙、世界の平和を脅かす行為を止めることができるかどうかは、国際社会の連携と連帯に懸かっています。
米国、韓国に加えて中国、ロシアを始めとする国際社会と連携して、断固たる対応を取ってまいります。また、国連の場において、世界の平和を守るために国連の強い意志を示さなければならないと考えています。
引き続き、強固な日米同盟の下、高度な警戒態勢を維持し、国民の安全を守るために万全を期してまいります」
この記者会見では核実験を「我が国は断じて容認できません」と強い言葉で避難しているが、「圧力」という言葉は一言も使っていない。トランプとの4回目の電話会談で北朝鮮への圧力を強めるため日米で緊密に連携していくことを改めて確認したと言うことだから、単に言い忘れたのだろう。
但し「国民の安全を守るために万全を期してまいります」は忘れずにきっちりと入れている。
だが、電話会談そのものが形式・儀式の類いに堕している以上、電話会談にしてもその後の記者会見にしても、マスコミの報道を通して国民の前に露出することが狙いで、その際「国民の安全を守る」をダシにさも一生懸命取り組んでいるところを見せて、下落した内閣支持率の回復を図ろうと意図している疑いが濃い。
北朝鮮が水爆の1発や2発実用化したとしても、アメリカ本土に届くICBMを1発や2発所有したとしても、アメリカの総合的な国力に対して北朝鮮の国力は戦前のアメリカ対日本の国力の差よりも大きいはずで、真に敵対できる力を所有することはできない。
戦前の日本が日本民族優越主義から虚勢を張っていたように北朝鮮も敵対できないアメリカに対して虚勢を張り、無理に背伸びをしているに過ぎない。
その虚勢が今や引くに引けない状況に達している。それがアメリカに対する様々な恫喝となって現れている。
また、そうであるからこそ、現在の北朝鮮は戦前の日本のように虚勢を維持できない圧力を受けると牙を剥き、暴発することになる危険な存在となりかねない。
戦前のアメリカが日本の戦争で勝利したものの、日本の暴発によって相当なキズを追ったように暴発して牙を剥いた北朝鮮によって相当にキズを負うことは否定出来ないことで、日本がその巻き添えを食わない保証はどこにもない。
圧力一辺倒が虚勢だけが頼りの実力のより劣る者に対して却って暴発の呼び水となることに安倍晋三は気づいていない。