生活の党PR
《6月16日(月) 小沢一郎生活の党代表定例記者会見要旨》
『政府成長戦略、目先のことだけで算段するようなやり方は問題をはらんでいる』
【質疑要旨】
・党首討論について
・政府の成長戦略素案について
・統一地方選挙と野党連携について
・特定秘密保護法廃止法案参議院提出について
安倍内閣が拉致問題解決で一番問題にしているのは今回の日朝協議で北朝鮮が約束した「拉致特別調査委員会」 の実効性であり、日本側がその担保を如何に獲得するかという点であるらしい。
だが、北朝鮮の「特別調査委員会」は、何を調査する組織なのだろうか。
5月29日の記者会見。
菅官房長官「我が国としても調査の進捗(しんちょく)過程について随時、通報を受け、調査結果を直接確認する仕組みを確保する。
北朝鮮の調査を確認できるようにすることが実効性を確保する上で重要だ」(毎日jp)
要するに日本側が直接目にした事実確認ではなく、北朝鮮側報告による間接的な事実確認となるから、調査結果を直接確認できる仕組みに変えて確保しなければならないとしている。
「特別調査委員会」 メンバーに日本側の人間を入れずに北朝鮮メンバーのみで構成した組織を前提とした官房長官の発言となるが、今さら実効性の担保云々を言うのではな く、日朝協議の時点で日本側メンバーの参加を求めてその要求を通していたなら、このような発言とはならなかったはずだ。
求めたが、断られた。だが、北朝鮮側の今までの態度から、実効性に対する不安が消えないから、実効性が担保できるようにしなければならないという経緯を辿ったのだとしたら、 お粗末な外交と言わざるを得ない。
尤も首尾よく「特別調査委員会」 メンバーに日本人を参加させることができ、日本側が直接目にし、確かめることができた事実であったとしても、その事実自体が拵え物であったなら、 実効性は架空のものと化す。
アメリカ映画の「スティング」のように詐欺を働く舞台の登場人物全員をサクラで固めて、大掛かりな仕掛けでウソのストーリーを事実と思わせて演じて誑(たぶら)かす手を使わない保証はどこにもない。
何しろ国家という一つの主体が本人のものではない他人の遺骨を偽って日本に送ってきた北朝鮮である。
翌5月30日の安倍晋三の対記者団発言は菅官房長官の発言とかなり趣を異にする。
安倍晋三「今回の合意で、北朝鮮は初めて拉致被 害者だけではなく、拉致された可能性が排除できない特定失踪者を含むすべての日本人の調査を行うことを約束し、日本人が発見されれば帰国できるように北朝鮮が力を尽くしていくということも文書に書き込まれた。
私たちはしっかりと『特別調査委員会』が出来て、調査が実行されるよう強く促していく。調査が実行されれば小泉政権以来のこととなり、固く閉ざされていた拉致被害者救出の扉をまずは開くことができたと思う。これからも北 朝鮮がこの約束を実行するように強く促していく考えだ」 (NHK NEWS WEB)――
約束が実行されれば、北朝鮮側が提示した事実はイコール真正な事実だとする性善説に立った無条件の楽観性を前提とした発言となっている。
だから、「調査が実行されれば、固く閉ざされていた拉致被害者救出の扉をまずは開くことができたと思う」などと、性善説など期待できない北朝鮮を相手に性善説なことを言って、客観的認識能力のお粗末なところを曝すこととなっている。
政府が5月29日公表の日朝局長級協議合意文書では、北朝鮮から調査状況の報告を受けた日本側が内容の確認を求める場合の取り決め事項は次のようになっているという。
(1)日本側関係者の北朝鮮滞在
(2)日本側関係者の北朝鮮側関係者との面談
(3)日本側関係者の関係場所の訪問
北朝鮮側関係者が北朝鮮当局の息のかかった回し者、いわばサクラではない保証はないし、訪問した関係場所に現れる北朝鮮人が全員グルとなって、ウソのストーリーをまことしやかに演じない保証もない。
北朝鮮側は「特別調査委員会」に強力な権限を付与して、北朝鮮のすべての機関を対象とした調査を行うことができるようにするということだが、そのような権限を与えることができる人物は金正恩を措いて他にはいない。与えられた人物は金正恩の思惑通りに動くことになる。
いわば実際の事実を事実としてそのままに報告するのか、ウソの事実を事実として報告するのかは金正恩の指示一つで決まることになる。全てが前者であるなら問題はないが、後者が都合よく混じっていたなら、いくら日本側関係者が北朝鮮を訪問して確認しようと、みながみな口裏を合わせてウソの ストーリーを演じることもできるのだから、真正な事実と見せかけたウソにはまらない保証もない。
疑ったら、キリがない、一つ一つを確認していく他はないと言うだろうが、疑う理由は北朝鮮側が立ち上げる「特別調査委員会」が何を今さら調査する必要が存在するのか、その必要性自体が疑わしいからである。
調査は日本人拉致被害者の拉致された経緯、現在の所在等を対象項目としているはずだが、このことの裏を返すと、北朝鮮当局は拉致された経緯にしても現在の所在にしても一切把握していないことになる。
把握していないが事実であるなら、その事実の裏をさらに返すと、拉致後か、拉致後のいずれかの時点で拉致被害者を北朝鮮社会に野放しにしたことになる。だから、所在確認の調査が必要になり、併せて拉致された経緯の調査も必要になるということになる。
野放しにされた日本人拉致被害者が野放しであることを利用して、その中から誰かが北朝鮮人と混じって今日までに脱北した者がいないという事実も奇妙である。北朝鮮人が生活苦を脱北の動機とする以上に拉致被害者は日本に戻りたいという故国望郷の念を動機としていいはずだ。
2013年5月末に北朝鮮の青少年9人がラオスに脱北、その中に日本人拉致被害者女性の息子が一人加わっていると報道されたが、9人とも北朝鮮当局の付き添いで強制送還されて、最終的な事実確認は取れていない。
事実拉致被害者の息子であったとしても、拉致被害者本人ではない。
果たして日本人拉致被害者は北朝鮮当局がその所在の調査を必要とする野放し状態に置かれていた、あるいは置かれているのだろうか。
拉致被害者で帰国を果たすことができた蓮池薫さんは2013年8月27日の金沢市内のホテルでの講演で、北朝鮮当局の厳しい監視の下での生活を余儀なくされたと話している。
同じく拉致被害者で帰国を果たすことができた地村富貴恵さんは、「最初は逃げたい気持ちもあった。ただ、『幹部』が1、2カ月に1回来て、脅されるようなこともあり、だんだん逃げることを考えられなくなった」(福井新聞)と明かしている。
北朝鮮幹部が地村夫妻宅を訪問するのは「1、2カ月に1回」だとしても、幹部自らが監視役を担うはずはないから、下っ端が常時監視していて、幹部が逃亡の気持を起こさせないために念押しをする形で「1、2カ月に1回」訪れて、逃亡したならどうなるのかと脅したということでなければならない。
かくこのように拉致被害者が北朝鮮当局の監視下にあるとしたら、「特別調査委員会」 は初期的には調査のための組織ではなく、北朝鮮当局が拉致被害者の所在を把握していないと見せかける組織を出発点としていると見なければならない。
となると、調査の実効性は調査自体の実施状況にかかってくるのではなく、北朝鮮側がどういう発見のシナリオを書くかにかかってくる。
もう一つ、拉致被害者が監視されていることを示す最新の記事がる。《拉致被害者への思想教育復活 金第1書記が指示》(47NEWS/2014/06/12 10:18 【共同通信】)
韓国の拉致被害者家族団体「拉北者家族会」の崔成龍代表が6月12にまでに平壌の消息筋の話として北朝鮮が3月以降、韓国人拉致被害者らを対象に北朝鮮体制の優越性を理解させる集団思想教育を復活させたことを明らかにしたと伝えている。
そしてその中に日本人も含まれていたとしている。
集団思想教育は「講習」と呼ばれ1980年代まで行われていて、金正恩第1書記が治安機関の国家安全保衛部に「特別指示」を出して復活させたものだと記事は書いている。
記事解説。〈日本政府が認定した未帰還の被害者らが含まれているかは不明だが、何らかの形で、北朝鮮に在住する日本人の管理を当局が強めている可能性がある。〉――
記事から三つの事実が浮かんでくる。
一つは韓国人拉致被害者を北朝鮮当局の監視下に置いていて、その所在を確認しているから、集団思想教育の「講習」が可能となるという事実である。
次は「講習」対象者の中に日本人拉致被害者が含まれていなかったとしても、北朝鮮当局が韓国人拉致被害者のみを監視下に置いていたということはあり得ないという事実である。
最後に日本人拉致被害者が韓国人拉致被害者共に北朝鮮当局の監視下にあるなら、「講習」対象者の中に日本人拉致被害者が含まれていても不思議はないという事実である。
だとすると、北朝鮮は調査を装って拉致被害者の所在を把握したように見せかけ、日本に報告することになる。北朝鮮は日本の制裁解除を獲得するためにも、誰一人返さないということはないだろうが、問題は全員を把握するところまでニセの調査を進めるかどうかである。
安倍晋三「全ての拉致被害者のご家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない」
安倍晋三のこの全員帰国の保証に対して北朝鮮がニセの調査でどれ程に応えるかどうかである。
日本人拉致被害者の所在を当初から把握していながら、ニセの調査を進める如何わしさから考えて、そこに相当な取引が介在することになることだけは間違いない。簡単には全員を返さないことを予想しなければならない。