ハイチ救援、人命第一となっているのか

2010-01-16 10:26:35 | Weblog

 カリブ海の島国ハイチで現地時間12日午後5時前日本時間の13日午前7時前、マグニチュード7.0の地震が発生(NHK記事)、昨15日7時の民放ニュースでは西半球一の最貧国だという首都ポルトープランスの建物の多くを倒壊させ、電気や水道などのインフラを壊滅状態とする打撃を与え、被災者300万人、死者は5万人に上ると見られていると伝えていた。

 ハイチと日本とでは約14時間の時差があることになる。

 日本の対応は素早かった。麻生太郎が首相在職中、「日本が先進国の中で一番早く100年に一度のこの金融危機から抜け出す」と言ったよりも早かった。

 「14日17:20」報道の「時事ドットコム」記事は政府が14日、ハイチに対して国連児童基金(ユニセフ)や世界食糧計画(WFP)などの国際機関を通じて500万ドル(約4億5900万円)を上限とする無償資金を緊急支援することとテントや浄水器など3000万円相当の緊急援助物資を提供すること、さらに四宮信隆ハイチ大使を団長とする緊急調査チームを派遣すると発表。

 「17:20」の報道時間からすると、14日午後の発表と思われる。地震発生が日本時間の13日午前7時前。1日以上経過してからの発表である。発表だから、まだ実行段階に至っていない。

 緊急調査チームの派遣は「NHK」記事によると、14日夜、成田空港から現地に向けて出発したとなっている。発表からは数時間後かもしれないが、地震発生から1日半以上経過した迅速な出発である。

 緊急チームは直接ハイチ入りするわけではない。ハイチの空港が使用不可能なのか、隣国のドミニカ共和国に飛び、支援を表明しているほかの国や国連の人道支援機関などから情報収集を行うほか、早ければ、現地時間の15日にもハイチ入りすることにしているという。

 インフラが壊滅的であることからすると、活動は夜は困難だろうから、夜明けが早いとしても6時過ぎからとすると、日本時間の15日夜の時間となる。日本時間の13日午前7時前の地震発生から、2日半後の現地入りという素早さ、迅速行動である。

 出発に先立って、多分記者会見の言葉なのだろう、外務省国際協力局緊急・人道支援課の實取直樹課長補佐が述べたという。

 「インフラの被害が大きく、現地の情報がまったくつかめていないので、被災状況を含めてしっかり調査してきたい。 多くの被災者が出ているので、できるかぎりのことをしていきたい」(同NHK

 「インフラの被害が大きく、現地の情報がまったくつかめていない」が事実とするなら、どこの国でも同じ状況であろう。

 にも関わらず、〈カリブ海の島国ハイチで現地時間12日にマグニチュード7.0の大地震が発生したことを受け、中国の国際救助隊60人余りが北京時間の13日午後8時30分、首都国際空港からハイチに向けて出発しました。〉と(《ハイチ大震災 中国救助隊、出発》中国国際放送局/2010-01-14 10:26:04)が伝えている。

 中国と日本の時差は1時間だというから、「北京時間の13日午後8時30分」は日本時間で13日午後9時30分に当たる。日本時間に統一すると、日本時間の13日午前7時前の地震発生から、14時間30分後に出発したことになる。 

 政府がハイチに500万ドル(約4億5900万円)を上限とする無償資金を緊急支援する、テントや浄水器など3000万円相当の緊急援助物資を提供する、緊急調査チームを派遣するとただ単に発表しただけの14日午後よりも10時間程度迅速な行動を発令させてている。

 日本の緊急調査チームが成田空港から現地に向けて出発した14日夜よりも約1日迅速な出発でもある。

 日本側は15日になって、「16:24」時の「TBS」記事――《ハイチ大地震、日本も医療チーム派遣》が、岡田外務大臣が大地震の発生したハイチに日本から国際援助隊医療チームを派遣することを発表したと伝えている。報道時間からして午後の記者会見と思われから、発表のみに関して言うと、日本時間の13日午前7時前の地震発生から2日半近く経過してからの迅速この上ない発表となる。あくまでも“発表”であって、出発時間ではない。

 〈医療チームは16日に日本を出発し、現在、訓練のためにアメリカに駐機中の自衛隊のC130輸送機を使って、早ければ17日にフロリダ州マイアミからハイチに入る予定〉だと言う。

 中国の国際救助隊の日本時間13日午後9時30分出発から言うと、2日以上遅れの迅速な行動となる。

 記事に次のような件(くだり)がある。
 
 〈アメリカや中国の救援隊が現地で活動を開始する中、対応が遅いのではないかと言う指摘に対し、〉岡田外務大臣は次のように答えている。

 夕方6時40分からだったと思うが、TBSの「総力報道!THE NEWS」での記者の質問は「アメリカやフランスや中国から較べると、若干遅れたかなと思いますが?」となっていたように思う。

 「現地はかなり混乱している。具体的ニーズは何処にあるかという事を踏まえて出すというのは必ずしも間違った対応ではない」

 だが、1月15日 12時9分「NHK」記事――《ハイチ地震 食料など支援不足》は〈被災地では、アメリカやフランス、中国など各国から到着した救助隊が救出活動を続けています〉と既に伝えている。

 記事は食料支援の不足、〈病院は、けがをした大勢の人たちであふれ、廊下や建物の外で手当てを受けざるをえない状況が続いてい〉ると、医師と看護婦と医薬品の不足、〈水や食料を奪い合う住民も出る〉と、水不足、食料不足〈被災者はいらだちを強めながら3度目の夜を迎えています〉とアメリカやフランス、中国など各国の救助だけでは不足している状況、そして〈現地では、日中の気温が30度を超えるなか、路上などに埋葬しきれない遺体が放置されるなど衛生状態もきわめて悪く、WHO=世界保健機関は、感染症が広がるおそれがあるとして注意を呼びかけてい〉ると、衛生管理不足を伝えている。

 上記これらの各不足事項は地震その他の大災害時に於けるパターンとしてあるもので、当然不足パターンに応じた必要事項(=ニーズ事項)を等式的に形成することとなり、それが“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”となる。そうである以上、“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”は既定の事実としなければならない。

 パターンとしてある各不足事項に対して、飲料水の確保、食料の確保、医薬品の確保、医師・看護婦の確保、医療施設の確保、テントの確保、重機の確保、救助犬の確保、酸素吸入器の確保、消毒薬の確保、その他応急処置用の医療品の確保等々が既定の事実として存在する“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”となっているということである。

 “何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”を既定の事実としていなければならない以上、巨大災害が発生した時点で即座に“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”に応じた初動準備に迅速に取り掛かることを危機管理に於ける常識としていなければならないのは断るまでもない。

災害発生国が西半球一の最貧国ということなら、“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”は前以て高めに設定し、そのことを主たる注意事項としなければならない。

 それを、「現地はかなり混乱している。具体的ニーズは何処にあるかという事を踏まえて出すというのは必ずしも間違った対応ではない」などと、日本の政治家だからなのか、極楽トンボなことを言っている。

 “何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”を既定の事実とする想像力を持ち合わせてもいない。

 現地時間2009年9月30日発生のマグニチュード7.6のインドネシア政府のスマトラ島沖地震のときも同じだった。JICA(国際協力機構)が救助チーム及び医療チームからなる国際緊急援助隊を派遣すると発表、国際緊急援助隊の派遣に先立ち援助隊の活動を円滑に行うために3名から成る事前調査チームを翌10月1日にインドネシアに派遣、結団式を1日(木)20時00分から成田空港第2ターミナル2階P2会議室で行い、10月1日(木)21時40分成田発(JAL8837:チャーター便)で出発、10月2日(金)03時40分(現地時間)ジャカルタ到着。別途、緊急援助物資の輸送も調整中(JICA記事から)としていた。

 一方10月3日インドネシア政府から自衛隊派遣の要請を受けて、民主党政府は自衛隊派遣の前に派遣部隊の規模や活動内容等を詰めるために事前に防衛省の調査チームを派遣することを決定。調査チームの第1陣11人が4日午前(日本時間同日午後)オーストラリア国軍機で被災地入り、〈物資の航空輸送や医療、給水支援など現地でどのような支援が必要か調べる〉(山陽新聞)と、“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”を既定の事実とできない今回と同じような迅速、遠回りな行動を見せた。

 瓦礫の下敷きとなって閉じ込められた者の救出には地震発生から72時間(3日間)が勝負だと言われている。72時間経つと、生存率が急激に下がるという。

 パン・ギムン国連事務総長「被災者を救うためには発生から72時間がきわめて重要だ。・・・・救助活動は時間との戦いだ」NHK

 この「72時間」にしても、「救助活動は時間との戦いだ」にしても、災害の発生のたびに言われ、常套句化している言葉であって、既定の事実として“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”に入れなければならないはずである。

 地震発生が日本時間の13日午前7時前、72時間後は日本時間で16日午前7時前、日本の医療チームの〈早ければ17日にフロリダ州マイアミからハイチに入る予定〉は生存状態で瓦礫の下から救出した負傷者の場合でも、重症の場合、手当てが間に合わない恐れが生じる。

 瓦礫の下に閉じ込められずに負傷した者であっても、処置が回らずに放置されていた重傷者の場合、その命さえ救えない状況が生じる恐れがある。

 アメリカは行方不明者の捜索チームに続いて治安維持のため新たにアメリカ軍の兵士を派遣することを決め、オバマ大統領はハイチへの支援を最優先に取り組むと強調、クリントン国務長官は12日に行われた日米外相会談のあとオーストラリアなどを訪問する予定だったが、急遽取りやめて帰国する(NHK)正真正銘の迅速な対応を見せている。

 確かに日本の政府は自民党政府であっても、カネの支援の表明はどこの国よりも迅速果敢である。だが、実際の活動となると、迅速果敢は早いのはカネの支援どまりとなっている。マグニチュード7.0の地震地震発生の情報を耳にするのと同時に、“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”に則って、緊急調査チームよりも何よりも早く、救助犬を伴った救助隊と医療チームを派遣すべきだったろう。

 その上で例え一部のムダが生じても、“何を必要とするかのパターン(ニーズパターン)”に則って必要とするものを迅速に準備し、現地と連絡が取れないというなら、初期的には必要量を見計らってそのまま輸送する、連絡が取れるなら、救助隊及び医療チームと連絡を取りつつ、当座の必要量に応じて順次輸送していくという方法を取るべきではなかったろうか。少なくとも普段「人命第一」を口にしている以上。

 どうもカネ第一、人命後回しの日本の支援となっているように思えてならない。


コメント (1)
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