民主党小沢幹事長の政治資金管理団体「陸山会」が秘書の宿舎を建てた4億にも上る土地購入資金は銀行の定期預金を担保に融資を受けた4億円だと説明したが、陸山会の事務担当者だった元秘書・石川知裕衆院議員は特捜部の調べに4億円は現金で小沢幹事長から渡されたと説明。しかも融資を受けた4億円を引き出した日時と土地代を支払った日時に後先の時間のズレが判明した。
先に現金で土地代金を4億円支払い、その後定期預金を組んで、それを担保に4億円の融資を受けたという。
これが事実だとすると、融資を受けた4億円は手付かずのまま現金で残ったことになる。他に何か明らかにできない使途にまわした可能性も考えられるが、それが秘密の使途なら、小沢幹事長から手渡されたという4億円の現金をそのまま回して、融資を受けた4億円を土地代金とすれば、すべてを秘密のままに伏せておくことができる。
最初の説明通りに土地購入資金は定期預金を担保に融資を受けた4億円だとあくまでも見せかけたいがための小沢幹事長から手渡された現金4億円だったろうから、手渡された現金4億円の方が出所を明らかにできない秘密のカネだった疑いが生じる。
いわば秘密の4億円を銀行から融資を受けた正規のカネに替えようと謀ったマネーロンダリングということではないだろうか。
このことに関して15日付の「毎日jp」記事――《クローズアップ2010:陸山会土地購入、強制捜査 世論読めず、戦々恐々》は、〈特捜部は「(小沢氏からの)最初の4億円を隠す意図がある。4億円の素性を隠し不動産として表に出す資金洗浄(マネーロンダリング)ではないか」とみている模様だ。〉と書いている。
だが、小沢幹事長から現金で手渡された「4億円の素性を隠し不動産として表に出す資金洗浄(マネーロンダリング)」だと言うなら、土地購入代金の支払いを融資を受けた4億円を引き出した後にして前後の時間のズレを生じさせないよううまく調整すれば、問題は発生しなかったはずだし、秘密のカネは秘密のまま隠しておけば、そのまま秘密の使途にまわすことができたはずである。
あくまでも秘密の4億円を銀行から融資を受けた正規のカネにマネーロンダリングするために土地購入を仕掛けとして使ったように思える。手付かずに残った融資の4億円をその返済に少ずつまわす。だが、正しいかどうかは分からない。
小沢幹事長は12日に党本部で定例記者会見を開き、予定通りと言うべきだろう、記者から土地取引に関わる質問を受けた。「asahi.com」記事から、その質問に関する箇所と最後の質問となっている検察からの事情聴取の要請に対して応じていないことに関する応答、さらに検察とメディアに関する応答を参考引用してみる。
《「総理になる資格はありません」12日の小沢幹事長》(2010年1月13日2時40分)
【土地購入疑惑】
――東京地検特捜部から幹事長に任意の事情聴取を要請されていると思うが、お受けになる考えはあるのか。陸山会の資金に関して、銀行の定期預金を担保に4億円の融資を受けたとこれまで説明しているが、石川議員は特捜部の調べに4億円は現金で小沢幹事長から渡されたと説明している。4億円の原資についてご説明を。
「あと他にありますか? それに関連したの? 関連したものであれば言って下さい、先に。いっぺんに答えますから」
――石川議員は小沢氏から4億円現金で受け取ったと供述しているが、それは事実なのか。
「同じことじゃない。はい、分かった。はい、はい」
――もし石川さんが小沢さんから4億円受け取ったのが事実だとすると、そのとき払った土地代金を先に払って、その後に定期預金を組んだことになっている。その後に定期預金を担保に4億の融資を受けている。こういう複雑な会計処理をする必要がなぜあったのか。
――この問題に関連し、東京地検特捜部が正式の記者会見とか国民に対する発表がないまま情報だけがメディアを通じて一方的に伝えられ続けている。この状況は、一国民として違和感を感じるところもなくはない。検察のあり方、メディアのあり方についてどう考えるか。
――幹事長は参院選に向けて比例候補を発表したが、土地取引の問題が党の支持率や参院選にどのような影響を及ぼすと考えるか。
――報道各社の世論調査でこの問題に関して幹事長は説明責任を果たしていないという回答が8割か9割に及ぶ。説明責任を果たしている、尽くしているとお考えか。
「大体良いですか」
―― 一部週刊誌報道で、4億円の原資が小沢幹事長の奥さまがご提供したものだという報道がある。それも合わせて。
「じゃ、いいですか? それに関連する問題は」
――原資に関して、そのうちの1億円について1月10日付赤旗の日曜版に水谷建設の関係者からの証言が詳細に記載されている。それが事実なら、幹事長がこれまでお金の流れについてオープンにしてきたとおっしゃることと矛盾する。これが事実とするならどう責任をおとりになるのか。
「はい、じゃあ、それらの問題についてお答え致しますが、昨年の春以来、私の政治団体の問題で特に大量の報道もなされまして、国民の皆さまに誤解を与え、また大変ご迷惑、ご心配をおかけ致していることを大変申し訳なく思っております。この私の政治団体に関することにつきましては、まだ捜査が継続中というようでもありますし、そのことに関しては弁護士にすべて一任を致しておりますので、今この段階で個別のことについて私が色々と申しあげることは差し控えるべきであろうという風に思っています。
それはそれとして、以前から何度も申しあげております通り、私自身も、また私の事務所の者たちも計算上のミスやらそういったものはあったかも知れませんけれども、意図的に法律に反するような行為はしていないものと信じております。また、ご承知のように私の東京の後援会の事務所、盛岡の事務所、あるいは水沢の実家の事務所が強制捜査の対象となっておりまして、すべての書類等々が押収されております。それからまた、その後も弁護士等を通じて事実関係には包み隠しなく話しておると思います。従いまして、今の段階で私が申し上げるのは差し控えますけれど、検察当局におきましてはこの問題についてすべてご存じのことであるという風に思っております。以上です」
――今の件ですが、事情聴取に応じるつもりはないということですか? 弁護士一任という風におっしゃったんですけれど。
「最初の言葉を聞いてくれました?」
――聞きました。はい。
「今の段階で個別のことについて私が申しあげるのは差し控えた方が良いと。そう思っております」
――それを解釈すると、事情聴取に応じるつもりはないと。違いますか?
「指されてから言わなくちゃダメでしょ。ルールは守って下さい。あなたも日本テレビなら」
――(中略)――
【事情聴取】
――先ほどの質問で、東京地検の特捜部の事情聴取に応じるか応じないか、お答え頂いていない。やましいことがないのなら、ご自分で説明するのが一番分かりやすいと思うが。
「あなたもさっきの最初の発言のときのことをよく聞いててよ。だから私最初に冒頭に言ったでしょ。まだこの問題について皆さんに色々ご迷惑かけているけれども、まだ捜査が続行中というようでもあるから、その時点で私が申し上げるのは、個別のことについてどうするこうするということを申し上げるのは適切でないという風に言ったつもりでございます。いずれにしても、あの、きちんと一応の区切りがつきましたならば、なんでも皆さんの質問に、ま、そのときは答える必要もないくらい皆さんも分かると思いますけれど、お答え致しますが、今その最中ですので、まだその区切りがつくまでは少しご勘弁を願います。ということでございます」
【検察とメディア】
――先ほど質問させいて頂いたことについてお答え頂けなかったのでもう一度聞きます。一般論としても重要だと思う。政治家としても人権があるし、適用されるべきだ。小沢幹事長1人の話ではなく、まだ捜査当局が発表もないうちからリーク情報ですべてのマスコミがどんどんと1人の人間を容疑があるかのように報道していく、これが一般の社会人であったら新聞等も抑制するはずだが、そうした状況が見られないように思う。小沢幹事長の方の賛否は抜きにして、こうした検察とメディアのあり方についてどのようにご覧になっているのか。
「えー、私はもう、二十数年、皆さんのご批判ばかり受けておりますので、それについて特別反論したり批判したりするつもりはありませんけれども、私自身は自分自身の生き様をずっと貫いてきたつもりでありますし、その意味において何らやましいところは私はありません。ただ、まあね、人間ですから、色々言われて楽しい訳じゃないですけれども、これは一般の市民、一般の皆さんという立場からすればですね、それはお互いに注意をしなくてはならないことであろうとは思いますけれど、私の立場はこういう政治の中にある立場ですので、そういうことも甘んじて受けなくてはいけないのかなあと、そう思っております」
(司会:以上で会見を終わります) |
上記「asahi.com」記事題名の「総理になる資格はありません」は記者が鳩山首相の指導力のなさと小沢幹事長に操られているのではないかという声を紹介して、「それなら小沢さんが首相になった方が分かりやすいし、マニフェスト実行も早くできるんじゃないでしょうか。早くできるようになるため首相になる考えはありませんか」と質問されて、「まだ、あの、私には皆さんから毎日批判を受けている身ですから、総理になる資格はありません。そのつもりもありません」と答えたことから取っている。
自民党の谷垣総裁は「説明責任を果たしていると思わない。証人喚問、参考人招致など、できる手段を駆使して真相解明に迫りたい」(NIKKEI NET)と小沢幹事長を国会に呼ぶ考えを示し、〈衆院への小沢氏の議員辞職勧告決議案提出や、政治倫理審査会の開催要求も検討すると表明した。〉(同NIKKEI NET)という。
このような自民党の動きに対して民主党の山岡国対委員長の態度。
「参考人の招致などという『ワイドショー劇場』(の要求)には、一切応じないつもりでおります」(FNN)
では民主党が野党時代、与党自民党に要求した参考人招致はすべて「ワイドショー劇場」としかならないことを承知しながら、要求したことになる。
事実だとしたら、「真相の解明」を言いつつ、あるいは「説明責任」を言いつつ、あるいは「国民に十分に説明したとは言えない」と言いつつ、馴れ合いの田舎芝居、あるいはサル芝居を自民党と打っていたことになる。
さらに言うなら、参考人招致を「ワイドショー劇場」で終わらせてしまう貧弱な追及の言葉しか紡ぎ出せない国会議員の程度の低い論戦術を問題にしなければならない。
もし事実参考人招致が「ワイドショー劇場」で終わっているなら、そこからの脱却を目指して真正な真相解明の場に高める努力をするのが政治家の責任なのだが、「ワイドショー劇場」と言って済ませることができる人間が国会議員でございます、与党民主党の国対委員長でございますとのさばっている。
小沢幹事長は疑惑に関して「私自身は自分自身の生き様をずっと貫いてきたつもりでありますし、その意味において何らやましいところは私はありません」と断言している。
だが、説明責任となると、陸山会のカネの出入りに関しては、「この私の政治団体に関することにつきましては、まだ捜査が継続中というようでもありますし、そのことに関しては弁護士にすべて一任を致しておりますので、今この段階で個別のことについて私が色々と申しあげることは差し控えるべきであろうという風に思っています」、検察の事情聴取要請に関しても、 「まだこの問題について皆さんに色々ご迷惑かけているけれども、まだ捜査が続行中というようでもあるから、その時点で私が申し上げるのは、個別のことについてどうするこうするということを申し上げるのは適切でないという風に言ったつもりでございます」 と“捜査中”を理由に説明を先送りしている。
もし小沢幹事長が「何らやましいところは私はありません」と断言するなら、捜査中であるなしに関係なく疑惑を持たれた箇所に関わる「何らやましいところは」ない自身の正直なところを述べさえすれば、疑惑はいとも簡単に晴れるはずである。
なぜなら、検察の捜査も小沢氏が正直なところを述べた「何らやましいところは」ない同じ場所に行き着くはずだからである。
と言うことなら、“捜査中”は説明の先送りの理由とはならないと言うことである。但し疚しいところがあるなら、検察の捜査は同じ場所に行き着かない恐れが生じるから、説明は難しくなる。
だが、小沢幹事長は「何らやましいところは私はありません」と言っている。そうであるなら、小沢幹事長は証人喚問であろうと参考人招致であろうと堂々と応じて、自身は「何らやましいところは」ないとする正直なところを述べた上で、検察の捜査が「何らやましいところは」ない同じ場所に行き着くのを待つべきではないだろうか。
同じ場所に行き着いたとき、国民の疑惑は払拭され、民主党政治の障害となっている目――政治とカネに関する疑惑――を取り除くことができる。
また証人喚問であろうと参考人招致であろうと堂々と応じたなら、そういったことを「ワイドショー劇場」だと言う必要もなくなる。 |