中国外需が迷走鳩山内閣を延命させる

2010-01-04 11:19:29 | Weblog

 麻生太郎は指導力のなさと100年に一度の金融危機が命取りとなり、鳩山由紀夫は同じく指導力がなくても、中国外需に助けられて延命する

 ―当たるも八卦、当たらぬも八卦の景気予想―


 日本の景気は所詮は外需頼み。外需頼みの経済構造を取っている以上、過去の外需頼みの日本の経済と同じ構図に則ることが景気回復の絶対条件となる。

 日本の「失われた10年」(1990年代半ば~2000年代半ば)の間、中国は10%近い経済成長を続けていたが、日本がその恩恵を受けるのは中国が2001年12月に自由貿易を謳ったWTO(世界貿易機関)に加盟するまで待たなければならなかった。中国のWTO加盟以降、中国の市場開放が進み、その経済成長のさらなる加速を受けた中国特需の恩恵を受けて日本からの工業製品や原材料が大量に輸出され、WTO加盟以前の対中貿易赤字収支が黒字へと転じ、尚且つアメリカの過剰消費ブームに発した対米特需の恩恵を受けて大企業のみが一人勝ちし、国民の所得に反映しなかった実感なき「戦後最長景気」(02年2月~07年10月)に突入していった。

 中国特需は2008年7月の貿易統計で中国向け輸出が戦後初めて米国を抜き、中国が日本の最大の輸出相手国となる順位の変動に象徴的に現れている。

 そして2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に発した、いわゆる“リーマンショック”が「100年に一度の経済不況」と言われる世界的な金融危機を招き、日本も飲み込まれて外需という経済武器を失うに至り、先進国の中でも最も手痛い打撃を受ける当然の経緯を踏むこととなった。

 当時の麻生内閣の麻生太郎首相は「我が日本が先進国の中で最初に100年に一度の経済不況から脱する」と世界に向けて高校野球甲子園大会の選手宣誓のように声高らかに宣言して大見得を切ったが、外需頼みの経済構造の公式から言うと、外国の景気回復を先行条件として外需(=外国からの需要)を答(結果)とする式の成り立ちを日本の景気回復には必要不可欠な条件としているのだから、世界の景気回復の先頭に立つとする麻生太郎の宣言自体が外需依存の経済構造の公式を無視し、そのことに矛盾した強がりでしかなかった。

 何ら根拠もなく強がりを言うだけの口先オンリーの人間に指導力など期待しようがなく、その指導力の欠如と「100年に一度の経済不況」が見舞うこととなった国民の生活不安が麻生内閣支持を景気と共に冷え込ませ、内閣の命取りとなって政権交代という二次被害を麻生太郎にもたらすこととなった。

 確かに日本の経済の見通しは悲観的である。10年1月1日の「NHK」記事――《ことしの経済 低成長の見通し》は日本経済はデフレが長期化するなか本格的な景気回復には至らず、低成長が続くという厳しい見通しにあると伝えている。

 民間の主な10の経済研究機関による平成22年度の日本の経済成長予測では高いところで1.7%、低いところではマイナス0.1%で、平均では1.15%と低い水準だと厳しく予測している。

 その理由として、中国向けなど輸出の伸びは期待できるが、厳しい雇用環境や賃金の低迷で個人消費の大幅な回復が見込めないこと、公共事業も減るなど内需が伸び悩むといったことを挙げている。

 いわば内需は期待できないと言っているが、日本が外需依存型経済構造を取っている以上、織込み済みの悲観的要素としなければならないはずだ。

 記事は、物価の下落が続くデフレの長期化で企業が新たな雇用や投資に一段と慎重になったり、欧米経済の悪化で輸出が低迷したりすれば回復のペースはさらに鈍る恐れもあると警告している。

 そのことを裏付ける大和総研の原田泰チーフエコノミストのコメントを次のように載せている。

 「雇用情勢が悪く、賃金も上がるとは思えず、お金がどんどん使われる状況ではないため景気の回復は外需に頼らざるを得ない。政府は財政再建を急ぎすぎず、日銀は金融緩和を続けて為替を安定させることが重要だ」 

 元々外需依存型経済構造なのだから、「景気の回復は外需に頼らざるを得ない」は極々当たり前な初歩的条件としなければならない。

 今朝の「NHKニュース」で昨年11月に14年ぶりとなる1ドル84円台まで円高ドル安が進み、輸出型の企業収益を圧迫したことから、今後の為替レートの動向が日本の景気回復を左右する要因となると伝えていた。このこと自体が日本の経済構造が外需依存型であることの証明でしかないが、どのくらいの影響かというと、09年11月27日の「NHK記事」は09年度の為替レートを1ドル93円と設定している「トヨタ自動車」は円相場がドルに対して1円値上がりすると年間の営業利益がおよそ300億円減収となり、共に1ドル90円と想定している「ホンダ」と「日産自動車」は1円の円高で「ホンダ」が120億円、「日産」が110億円の営業損益となり、大手電機メーカーでは1ドル90円とみていた「ソニー」は10億円の減少、1ドル95円と想定している「パナソニック」が約20億円の減益と、輸出産業型企業が軒並み悪影響を受けると伝えていた。

 前出「NHK記事」が1ドル84円台の円高ドル安がアメリカの不況が長引く予想から生じた相場で、ここのところの一時93円台までの円安ドル高がアメリカの景気回復に対する期待感などから円が売られる展開となったことが原因だと伝えていることからすると、日本の経済が外需依存型を宿命としていて、中国の景気回復のみならずアメリカの景気回復をも必要条件とする相互依存関係にある以上、アメリカの景気回復の否定的兆候を示す円高ドル安はアメリカの景気が回復するまでの一時的動向だとして歓迎すべき要件としなければならないのではないだろうか。

 「日テレNEWS24」記事――《米国の経済、今年はどうなる?記者が報告》(2010年1月2日 1:27)によると、アメリカの失業率は去年、26年ぶりに10%を超えて、暫くは高止まりが続くと見られていること、大手金融機関は健全化に向かっているものの不良債権は依然高水準で、貸し出しはなかなか伸びない状態にあること、去年破綻した金融機関が過去最大規模の140行にも及んでいること、アメリカのGDP(=国内総生産)の7割を占めていた個人消費がかつての過剰消費に相当期間戻ることはないと見られていることなどから早急な景気回復は望めないとしているものの、経済成長率は去年プラスに転じ、アメリカ経済は最悪期を脱したと見られていると伝えているが、円高も貢献した最悪期からの脱出ではないだろうか。

 また11月失業率10%にしても10月より0.2ポイント低い4か月ぶりの改善ということなのだから、僅かではあるが、よい方向へ向かっている雇用情勢と言える。

 09年12月5日の「NHK記事」《米失業率 4か月ぶりに改善》が次のように伝えている。(一部抜粋)

 〈アメリカ労働省が4日に発表した11月の失業率は、前の月より0.2ポイント低い10%となり、小幅な悪化を想定していた市場の予想に反し、ことし7月以来、4か月ぶりの改善となりった。また、景気の動向を敏感に映し出すことで注目される農業分野以外で働く人たちの数も、製造業が4万1000人、建設業が2万7000人、それぞれ減ったが、サービス部門で一時的な雇用の増加がみられたことなどから、全体では1万1000人の減少となり、減少幅は景気後退が始まったおととし12月以降で最も小さくなった。〉――

 これは個人消費が伸びていることを受けたサービス部門での一時的な雇用の増加であろう。事実11月の小売業の売上高がおよそ3521億ドルと、前の月に比べて1.3%増加し、市場の予想を上って2か月連続のプラスとなったと09年12月12日の「NHK記事」《米小売業 2か月連続プラス》が伝えている。

 〈具体的には、家電関連が2.8%の増加を記録したほか、自動車や関連部品が1.6%、デパートや量販店も0.8%増え、このほか、ガソリンの売り上げも6%と大幅に増え〉、〈年間の小売業の売り上げの30%から40%を占める年末商戦の行方が注目されているが、厳しい雇用状況にも関わらず、個人消費が11月までで2か月連続のプラスとなったことで、金融危機のさなかにあった去年より期待できるのではないかという見方が広がっています。〉――

 また米国の11月の中古住宅販売件数の改善も景気回復へ向けた足取りと解釈することができる。この改善がさらに31銭円安を推し進めたとしているが(asahi.com)、アメリカの景気回復動向が円安ドル高要因であることを如実に物語っている。

 僅かながらの兆候ではあるが、アメリカ発の外需の条件は整い始めていると言える。

 では、アジアの状況はどうなっているかと言うと、中国は既に問題ないところまで外需条件が整いつつあるのは誰の目にも明らかである。

 中国は09年12月に08年のGDP成長率を従来の9・0%から9・6%に上方修正、ドル換算のGDP規模で中国は2010年にも日本を追い抜いて世界第2位の経済大国に浮上するとみられていたが、〈統計が正確なら、今回の上方修正で08年段階で中国が既に日本を追い抜いて2位になっていた可能性もある。〉と《中国08年のGDP9・6%増に上方修正 すでに日本抜く?》SankeiBiz/2009.12.25 16:58)が伝えていて、さらに09年度の経済成長率予測値を中国は「8%確保は間違いなし」と公表している。

 このような経済状況は中国発の外需条件は十分に整いつつあることを十分に物語っている。

 その一部内容を見ると、09年11月の中国の新車の販売台数は135万台を超えて今年の累計が1200万台に達し、年間では08年の新車販売が1300万台余りだったアメリカを抜き、世界最大の自動車市場になるという見方が強まっている(NHK)状況を受けて日本の自動車企業は中国向け販売を強化する動きを見せているが、このことも外需条件の高まりの一つに入れることができる。

 さらに中国の09年11月の輸入が08年10月以来1年1カ月ぶりに増加に転じたと「47NEWS」《中国、輸入が1年ぶり増加 11月、輸出も減少幅縮小》2009/12/11 17:35 【共同通信】)が伝えている。

 〈輸出は1・2%減の1136億5300万ドルだったが、10月(13・8%減)と比べ、減少幅が大きく縮小した。輸入の大幅な増加により貿易黒字は52・7%減の190億9300万ドルとなった。11月は、原油や鉄鉱石など資源のほかハイテク製品の輸入も増加。北京の通商筋は「中国は原料を輸入して製品を輸出する加工貿易も多く、景気回復期には輸入が先行する傾向がある。輸出も近くプラスに転じるのではないか」としている。〉――

 日本にとっては好都合な中国の輸入の増加であり、十分に期待可能な外需条件を形成しつつあると言える。

 中国以外のアジアの国、韓国を見ると、〈昨年の韓国の貿易収支黒字は410億ドル(約3兆8000億円)を記録する見込みとなった。これは過去最高であると同時に初めて日本を上回る見込みだ。〉と「朝鮮日報」記事――《韓国の貿易黒字、初めて日本上回る》(2010/01/02 10:31:49)が伝えている。

 具体的には〈輸出は世界的な景気不振の中でも善戦し、初めて世界9位を記録。世界シェアも3%台〉を占めるに至り、〈とりわけ11月までの貿易黒字が日本に比べて136億ドル(約1兆2600億円)も多く、年間ベースでは史上初めて日本を上回るのが確実な状況とな〉る成績だという。

 と言っても、韓国の内需不振は日本と同じような状況にあるそうだが、この韓国の貿易黒字は対日貿易赤字が08年年比19%減の264億ドルに改善したのに加えて、対中国が308億ドルと08年比2倍以上に膨らんだ結果だと「日経ネット」が伝えている。

 いわば主として中国発の外需を受けた日本を上回る貿易黒字だと言うことであろう。

 さらに韓国の09年11月末の外貨準備高は2708億9000万ドル(約23兆5000億円)と10月末比67億ドル増え、9カ月連続の増加で、過去最高額を更新したと「日経ネット」記事――《韓国、外貨準備が過去最高に 11月、9カ月連続増加》(09.12.2)が伝えている。

 記事は〈経常収支の黒字拡大に加え、通貨ウォン相場の上昇を抑えるためのウォン売り・ドル買い介入も外貨準備高を押し上げる要因になったとみられる〉が、〈昨秋以降の米金融危機によって急落したウォンを防衛する為替介入で、昨年11月末に2000億ドル割れ目前まで減っていた。金融危機の沈静化後は海外の投資家が韓国に資金を振り向ける動きが強まり、外貨準備高は直近の1年間で約700億ドル増えた。〉と解説を加えている。

 これも主として中国外需を媒介とした「海外の投資家」の韓国に対する動きと見るべきであろう。

 鳩山政府は子ども手当の7割が個人消費に回り、10年度の実質成長率を0.2ポイント押し上げるとの見通しを含めて3年ぶりのプラスとなる国内総生産(GDP)の成長率は実質で1.4%、名目で0.4%とする2010年度の経済見通し(日経ネット)を公表したが、これに対してアジア開発銀行(ADB)はアジア太平洋地域(日本など域内先進国を除く)の2010年の実質成長率が6.6%になるとの見通しを発表(日経ネット)、〈輸出先としてアジア地域の成長に影響を及ぼす先進国の10年の成長率は、日本が1.2%、米国が2.0%、欧州(ユーロ圏)が0.8%と予想した。〉としている。

 一方中国の09年度の経済成長率は中国政府の予測として「8%確保は間違いなし」としているそうだが、2010年度の経済予測はそれを上回る9.5%を掲げている。

 このことは中国が日本や韓国、その他のアジアの国、さらにアメリカや欧州も含めてそれらの国の外需型景気回復の主導的位置にいることを物語っている。

 昨1月3日の「日経ネット」記事――《内閣府政務官、日本経済「10年後半から力強い回復」》が題名どおりに内閣府の津村啓介政務官(経済財政担当)が「前半は注意が必要だが、後半からは力強い回復になる」と、〈子ども手当の支給が10年度の実質国内総生産(GDP)成長率を0.2ポイント押し上げるなど、鳩山由紀夫政権の経済政策が景気を下支えするとの見方を示した〉上で2010年の日本経済について日本経済新聞の単独インタビューに応じて答えたそうだが、津村啓介政務官は外需依存については一言も触れていない。

 鳩山首相は12月30日に経済成長戦略の基本方針を公表、〈「牽引産業」に位置付けた環境、健康、観光の3分野で、100兆円超の需要と476万人の雇用を生み出す目標を掲げ〉、〈さらに、少子高齢化の進む国内だけに頼らず、成長著しいアジアの需要も取り込むことで、国内総生産(GDP)の2020年度までの平均成長率を名目3%超、実質2%超に押し上げるとした。〉ことに対して、〈政府が25日に発表した09年度のGDP成長率見通しは、実質がマイナス2・6%、名目はマイナス4・3%。10年度はそれぞれ1・4%、0・4%と3年ぶりのプラス成長を予想するが、デフレ脱却のめどが立ったわけではなく、「元気の出る目標」への道のりは遠い。〉(b>《経済成長戦略:基本方針 要100兆円、雇用476万人を創出 い目標、見えぬ策》毎日jp/2009年12月31日)と批判的である。

 記事も触れているが、年々膨らむ社会保障費の増大、赤字財政の是正・規律化に向けて今後予想される介護保険料や健康保険料、消費税等の増税が経済成長戦略の上記国内的要因を相殺し、ゼロかマイナスに持っていかない保証はなく、そういうことなら、あくまでも「成長著しいアジアの需要も取り込む」と言えば聞こえがいい、実質的には外需依存に傾斜せざるを得ない道しか残されていないのではないだろうか。

 民主党が参院選を勝ち抜き、指導力を欠いているとは言え、鳩山内閣を延命させるためには日本の景気回復を10年度後半まで待つ余裕はなく、7月の参院選までに確かな回復基調に乗せることが不可欠な条件となる。中国がお膳立てしてくれる外需頼みの条件は揃いつつある。中国向け外需とそれに次ぐアメリカ向け外需が成功するかどうかにすべてはかかっている。

 恥も外聞もなく、中国外需・アメリカ外需に頼るしか鳩山内閣の延命策はないと思えるが、どうだろうか。



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