――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――
《民主党に夏の参院選挙で勝利させて、衆・参両院とも過半数のチャンスを与え、民主党政治を存分に発揮できる活躍の場を提供してみてはどうだろうか――
民主党は民主党政治を存分に発揮できる衆・参両院の過半数を求めて、国民に夏の参院選での勝利を訴えるべきではないだろうか――》
自民党は1989年の参院選で社会党に大敗、プラス連合の会を向こうにまわして参議員過半数割れ、それ以後、自民党分裂を受けた1993年の第40回総選挙でも過半数割れ、9カ月足らず野党に転落の歴史を抱えているが、2007年7月の参院選で民主党に敗れるまで戦後ほぼ一貫して、衆・参とも過半数を維持、自民党政治を恣(ほしいまま)とするチャンスを独占してきた。
次は民主党にも衆・参過半数のチャンスを与えて、衆・参過半数下の民主党政治がどう展開されるか、じっくりと眺めてみるのもアリではないだろうか。
鳩山首相が首相官邸で記者団の質問に答えて、今国会に政府案として提出する方針の永住外国人への地方選挙権付与法案について、法案提出を見送ることもあり得るとの考えを示したと、1月29日の「asahi.com」記事――《外国人選挙権法案、提出見送りも 首相が表明》で伝えている。
「連立政権だから連立与党でまとまることが最低限必要だ。今は国民新党が強く反対しているので、簡単な話ではない」
鳩山政権は11日の政府・民主党首脳会議で同法案を今国会に提出することで合意していたが、国民新党の亀井静香代表が一貫して反対しているほか、民主党内にも根強い慎重論があること、国民新党幹部が27日、反対の考えは変わらないとし、「法案なんて元々出せるわけがない」と述べていたというから、その反対意志の強さにたじろいだといったところか。
1月16、17日に朝日新聞が実施した電話全国世論調査によると、〈外国人参政権に賛成60%、反対29%〉で、賛成が反対の2倍にも達している。(《外国人参政権に賛成60%、反対29% 朝日世論調査》asahi.com/2010年1月19日0時3分)
但し、賛成意思を引っ張っているのは民主党支持層と内閣支持層で、民主党支持層が賛成―70%、反対―23%。内閣支持層が賛成―70%、反対―23%。
賛成に棹差して反対意思方向へ引き戻そうとしているのが自民党支持層ではあるが、賛成―45%、反対―45%のタイスコアを獲得するのが精一杯で、反対意見が優勢を占めている自民党自体の意識と〈支持者の意識とは必ずしも一致していないようだ。〉と解説している。
このことに加味して、〈30、40代で賛成が7割台なのに対し、60代では54%、70歳以上では37%にとどまる。〉としている世代別意識からすると、反対意見の代表者に保守層が主として鎮座していることが分かる。
この反対保守層に国民新党も同類とすることができる。
《外国人参政権 首都圏の知事、相次ぎ「反対」》(msn産経/2010.1.27 08:56)が、石原慎太郎東京都知事、上田清司埼玉県知事、松沢成文神奈川県知事、森田健作千葉県知事の名前を挙げて、首都圏の知事が総じて反対や疑義を表明していると伝えている。
森田千葉県知事「国籍を持って投票すべきだというのが私の考えだ」
松沢神奈川県知事「国民の主権をいじる問題で一方的に国会で決めていいのか」
上田埼玉県知事「ナーバスな問題。国家の基本の話は1回の国会の多数決で片づける話ではない。・・・・基地問題など外交、安全にかかわる話が市長選のテーマになることもある。国の運命を左右する話には、日本国籍を持った人が投票すべきだ」
石原都知事の反対の言葉は、《【石原知事会見詳報(1)】外国人参政権「危ない試み。発想おかしい」》(msn産経/2010.1.15 23:24)に詳しく載っている。
石原都知事「絶対反対。地方の時代ということは地方によって国全体が動くことがあるんですね。例えばね、六ケ所村の再処理の問題なんかもね。とにかく、地方の政治そのものは国家の政治につながる時代に地方だからいいだのね、国政はいかんというのはおかしな話でね、日本に永住する方なら日本の国籍取ったらいい、問題起こしてないんだったら。ですから、国籍を取りやすいシステムをつくったらよろしいんでね。私は前から新しい移民政策するべきだって言ってますけど。まして、いろいろ歴史のいきさつがあってもですね、日本に永住してらっしゃる方々は何も韓国の人に限らず、そういった方々がですね、望むならね、国籍を変えたらいい。ま、国籍を変えたくないという理由もあるでしょう。しからばですね、外国人のままでいてもらいたい」
石原都知事「永住しているからといって、地方に限って参政権与えるっていうのは、これはもう、何ていうのかな、時間的、空間的に日本そのものが狭くなってるときに、まして地方主権ということを言われているときに、それが国籍を持たない人たちの意向で国そのものが左右されかねない。そういう、私は、その発想そのものがおかしいと思いますな。これから先どんな問題が出てくるか分かりませんけど、そういう人たちが束になって民族移動のような形で、案件によって、何というのかな、投票を起こしたら、例えば千代田区のような1人区なんかっていうのは人口が極めて少ないのに、あそこで、どんな問題がこれから起こるか知りませんが、そういうものを想定するとですね、私はとてもね、危ない試みだと思いますね」
森田千葉県知事、石原東京都知事は元自民党保守派の人間である。上田清司埼玉県知事は、〈「初立候補のときから、新自由クラブ、自由連合、新生党、新進党、フロムファイブ、民政党、民主党と政界再編に伴い所属政党を変わったが、政策信条的には一貫して保守系である。〉(Wikipedia)という。
松沢成文神奈川県知事は民主党に所属していたが、〈2007年の神奈川県知事選挙では自民党県連推薦の杉野正候補を破り再選。 ちなみに同時に行われた東京都知事選では現職である石原の支持を表明し、これに対して石原も松沢への応援に駆けつけている。〉(Wikipedia)ということからすると、民主党保守派に所属していると見ていいだろうから、各県知事共に保守派の立場からの反対ということではないだろうか。
最初の「msn産経」には首都圏の知事ばかりか、都道府県議会でも反対の動きは広がっていることを伝えている。
先ず全国都道府県議会議長会が1月21日、〈「民主主義の根幹にかかわる問題で、拙速に法案提出や審議されるべき案件ではない」とする特別決議を採択〉したと言う。
そして、〈かつて都道府県議会では34、市町村では1200を超える議会が、参政権付与に賛成する立場から意見書や決議を採択したが、鳩山政権発足後、参政権付与が現実味を増すにつれて危機感が拡大〉、〈これまで賛成していた茨城や千葉、石川、富山、島根、佐賀、長崎、大分の8県が昨年の政権発足後に反対決議に転じ〉、そのほかに熊本、香川、埼玉、大分、秋田、新潟、、山形の各県の名前を挙げて反対の決議や意見書を採択したとしている。
〈参政権付与が現実味を増すにつれて危機感が拡大〉、賛成から反対に転じたとすると、最初の賛成は永住外国人に理解がある、進歩的で物分りがいい地方政治家であるところを見せるための、ホンネを隠したポーズだったことになる。この無節操を何ら恥じることなく賛成から反対に平然と転じることができる神経はなかなかのものである。
首都圏の知事の反対の根拠として第一番に国籍を有していないことを挙げている。松沢神奈川県知事にしても、「国民の主権をいじる問題」だと言っているから、国籍の有無を問題としている。そして、国籍を変えることを勧めている。
国籍を変えることが地方政治に参加する条件だと。国籍を獲得したら、当然国政にも参加できる権利を有することになる。
日本国籍を有しなければなぜ悪いのかと言うと、石原都知事の言葉で代表させると、「国籍を持たない人たちの意向で国そのものが左右されかねない」ことの懸念を挙げている。
石原は、「そういう人たちが束になって民族移動のような形で、案件によって、何というのかな、投票を起こしたら」と言っているが、現在でもそういった手を使っているかどうか分からないが、かつて創価学会が市議会選挙レベルで公明党候補者を当選させるために他市町村に住む創価学会員の住民票を前以て大量に移動させて投票に参加させるといったことをしていたということだが、そういったことを言っているのだろう。
この方法は日本国籍を取ったとしても可能である。創価学会員が全部が全部日本国籍を有していないとすることはできないだろうから、創価学会員もできたこととなって、国籍の有無は条件とはならない投票行動となる。
2009年1月のアメリカ大統領選挙民主党予備選ではヒスパニック系の多くがヒラリー候補を応援、しかしヒラリーがオバマに敗れると、ヒラリーを支持したヒスパニック系は共和党候補のマケインに投票すると言う者が出たが、結果的に多くのヒスパニック系がオバマ支持に流れている。勿論、黒人の大多数はオバマに投票したと言われている。
例えアメリカ国籍を有していても、民族的な集団意識で統一的な投票行動を起こすケースがあることからすると、石原が言っていることは、やはり国籍の有無は無関係な投票行動となる。
また民族レベルでなくても、宗教や企業、あるいは職業団体、労働団体、さらに何らかの活動団体が推す候補に対して各組織が集団的に統一的な投票行動に出るケースは当たり前の風景となっている。当然、特定の組織の「意向で国そのものが左右され」ることもあり得る話となるが、だからと言って、利害関係を異にする組織、あるいは国民が異を唱えることはできないはずである。
「民族移動のような形」の統一した投票行動が懸念されると言うなら、実際の投票は選挙権以外に市町村の選挙管理委員会が管理する選挙人名簿に登録されていることを要件としていて、登録はその住民票が作られた日(他の市町村からの転入者は転入届出をした日)から引き続き3ヶ月以上、その市町村の住民基本台帳に記録されていることとしているということだから、投票日から3ヶ月以前近くに転入した住民の生活実態を調べれば、分かることではないだろうか。
コストがかかるということなら、違反者から多額の罰金を徴収できるように法律を変えれば問題は解決する。
上田埼玉県知事が「国の運命を左右する話には、日本国籍を持った人が投票すべきだ」と、石原都知事の「地方の時代ということは地方によって国全体が動くことがある」の言葉に相当することを言っているが、「日本国籍を持った人」が常に正しい判断を下す保証はない。戦前の政府・軍部の判断は日本国籍を有していながら、悪い方向に「国の運命を左右」した。
いわば「日本国籍」は正しい判断の根拠とは必ずしもなり得ない。
それを正しい判断をするという文脈で、「日本国籍を持った人が投票すべきだ」としているのは、日本国籍に何か優越的なおまじないがあるとしているからだろう。この意識は日本民族優越意識につながる。
どの国も利害を異にする集団を抱えていて、異なる利害の数だけそれぞれが正しいとする判断が存在するだろうから、物事は多数決で決するしかない。民主主義が考え出された所以であろう。
2009年のアメリカ大統領選でそれぞれの民族・人種が自らの帰属意識に従って集団的に統一的な投票行動を起こすのみであったなら、米国内の黒人人種比率が12.9%(2005年「Wikipedia」)ということからしたら、オバマの当選はなかったに違いない。それぞれの民族・人種が自らの集団に特有としている利害を超えて、黒人候補のオバマに投票する判断を下し、アメリカ合衆国初の黒人大統領をアメリカ史に登場させた。
国籍を取ったとしても、自らの人種・民族への帰属意識に従った集団的に統一的な投票行動を起こすことも可能ということなら、またそういった投票行動を法律で禁止することはできないのだから、いわば国籍を持っていない者が「国政を左右する」、「地方によって国全体が動くことがある」のは反対だとするのは理由にはならないということになって、国籍を取らないままに永住外国人がそれぞれの民族・人種に従った集団意識を持ったとしても、その集団に特有の利害の一つと把えて、民主主主義のルールに則って異なる利害との多数決による調整に委ねるべきが最善の道ではないだろうか。
どうも石原都知事や他の知事の反対がその理由として投票行動の根拠とはならない国籍を掲げているところを見ると、単に外国人に対する忌避意識が参政権付与の反対につながっているように見える。