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新興国市場に投資は向かう Youth Triumphs over Maturity

2010-01-02 | グローバル経済
2010年1月2日(土)

Financial Timesが、2000年代の株式・債券・商品・通貨市場を振り返って、将来を展望している。

同紙は、昨年中半から世界の市況は上昇に転じてきたが安心はできないと警鐘を鳴らしている。各国政府が景気対策のために取ってきたいわゆる「ゼロ金利と赤字財政政策」から卒業するときがいつかは来る。この「出口政策」(exit strategy)への転換がもたらす衝撃が懸念されている。一方国債の大量発行とゼロ金利がインフレを誘発し、バブルを招く危険性は常に存在している、というのがその骨子である。

この10年間でもっとも影響を与えたのは、金融商品。高利回りで投資家を引き付け、大きく花開き一気にしぼんだ(flourished and then floundered)。「投資銀行を2000年代の悪魔だと呼ぶならば、デリバティブ商品はその破壊兵器だったといえよう」と論評する。

サブプライム住宅ローンに発する崩壊のドミノは全世界を駆け巡り、大手銀行の救済のために政府資金が大量に投入されたが、世界は、2008年9月のLehman Brothers倒産を機に株式市場の歴史的暴落を経験することとなった。

この憂鬱な流れと対照を成す注目すべきことは新興国市場の躍進である。この10年間で、ロシアのMicex indexは802%,ブラジルのBovespaは301%, インドのSensexは249%, 中国のShanghai Composite indexは140%上昇。2000年代は、「若さが勝利した(youth triumphed over maturity)」時代と総括される。先進国株式市場のさびしい結果はいまさら説明する必要はない。

中国の工業生産の急速な伸びは、原油、鉄鉱石、石炭、銅などの金属を中心に幅広く原材料の高騰を招いた。その結果、原油・銅などの商品市場は賑わい、原油は2008年の150ドル近いピークからの半値までの下落はあったものの10年間で210%の伸び、金は281%、銅は290%の上昇。資源枯渇の予感もあって、投機のカネは「モノ」へと大きく向かっている。

通貨市場での最も大きな出来事は、ドルが、10年間で23.5%の減価を起こしたこと。対ドルでユーロは43%上昇、円は9%の上昇。円がファンダメンタルズの悪さにもかかわらず「リスク回避」のために選好されているというのも皮肉なことである。

債券市場の動きは、10年物の米国国債の利回りが、10年間で6.60%から、3.84%まで下落したことに象徴されている。このように先進国における国債利回りは、大量発行にもかかわらず、景気対策のために取られた超低金利政策の結果低位に安定している。

FTがここに概観したように、グローバル経済は相互に緊密に連結され、IT時代の技術はグローバルな情報の均質化をもたらしている。そして情報の速度と量が増えるに従い、逆にますます不安定度を増していく。それゆえに商品・金融・株式・債券市場はこれまで以上にグローバルに一体化・同時化していくので、個別の市場分析は役に立たない時代になった。


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