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GE業績報道の見出し問題 Results boost Citi and GE

2009-04-19 | グローバル経済
2009年4月19日(日)

米国では、1-3月期の決算発表が相次いでいて、各社とも前期比でおおむね好決算であり、金曜日は、NY市場のダウ平均は8000ドル台に乗せて取引を終えている。こうした中で、米国を代表する企業であるGeneral Electricの業績推移は、常に投資家の注意の的となっているが、その報道について日米でずいぶん印象の違う報道になったことを取り上げておきたい。

前四半期の同社の業績は、昨今の情勢下で、以前にもまして、米国の経済全体の動向を把握する上できわめて重要な意味を持っていることは言うまでもない。

17日に発表された、同社決算結果は、前年同期比で、売り上げは9%減の384億ドル、純利益は、35%減少の28億ドルとなった。特に、金融事業の利益は、58%減少の11.2億ドルとなった。 ただし一株あたりの利益は、26セントで、当初予想の21セントを上回った。

これを報じる日経新聞4月18日(土)朝刊の見出しは:
   米GE, 35%減益 1-3月
   金融事業低迷、長引く
となっており、読者は、GEが業績不振に陥っているとの印象を強く持つことになる。しかし、日経は、NY株式市場の反応を見る前に、朝刊の記事を書かざるを得なかったので、株価に関する言及はない。

一方、Financial Timesの、週末版の第一面のトップ記事の大きな見出しは:
   Results boost Citi and GE
であり、同紙株式欄の見出しも、ほぼ同じく、
   Solid results from Citigroup and GE set a positive tone
となっていて、両社の業績に明るさが見えたことで、株式市場のセンチメントが上向いて、両社の株価が上がり、市場全体の上昇機運に、勢いをつけた(boost)という印象を読者に与えている。

事実、GEの株は、17日に前日の$12.27から、12.39に上昇しているが、これは3月の最安値6.66から比べると,ほぼ2倍の水準にもどしている。この事実が同紙の、見出しのトーンを決めたのである。日経の記事が、業績を主に見ていること、Financial Times が株価を主に見ていることの差が、見出しのトーンにこれだけの差を生んでいるのである。

しかし、Financial Timesの見出しの中にある、'solid results'という言葉は、「底堅い決算結果」という意味であるが、記事内容を仔細に読むと、決してGEの業績を手放しに「好転」といっているわけではない。”Fears remain over their long-term health”(両社の長期的な業績の健全性に懸念は残る)と小見出しにも出ている通り、「アナリスト予想ほどは、悪くなかった」だけであると客観的に言っているに過ぎない。

見出しだけで新聞を読むことの危険、日本のメディアだけで世界を判断することの危険を示す好例があったので紹介しておきたい。


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