もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

シェルターについて

2020年08月21日 | 防衛

 中国(北京)では最近、公営シェルターの場所を広報し、シェルーターにおける避難生活の手引きを啓蒙する活動が行われていると報じられた。

 報道されたシェルターは核攻撃の被害から生き延びるための核シェルターであるが、シェルターと云えば戦前の防空壕のイメージしかないので調べてみた。日本核シェルター協会の資料(年度不明)によると、核シェルターの普及率(収容人数の対人口比)は韓国300%、スイス100%強、イスラエル100%、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%、シンガポール54%、日本0.02%となっていた。中国の普及率は不明であるが、大躍進政策以降に地下鉄をシェルターに転用できるように整備したために、都市部での普及率は相当に高いと思われる。北京市内には1980年代に作られた約1万か所の地下シェルターがあり、現在では100万人以上の農民工・学生に貸し出されているとの情報があり、更には、北京市近郊の地下2000mの深部に総延長30㎞に及ぶシェルターが有り、中国共産党指導部の戦時指揮所設置が可能という記事もあった。ネット上にある日本のシェルター製作会社のパンフレットには、核シェルターの他に「耐震シェルター」「水害シェルター」「津波シェルター」として地上設置型・地下埋設型・浮舟型が300万円~2000万円の価格で掲載されていた。核シェルターを使用しての延命について考えてみると、運良く核シェルターに避難できて核爆発の直接被害(熱・爆風・衝撃波・一時放射能)から免れたとしても、死の灰・黒い雨と形容される放射性降下物(フォールアウト)による2次被曝を避ける必要があり、数日間はシェルター内で生活しなければならない。ちなみに放射性物質の半減期はラドン222(3.8日)ヨウ素131(8日)セシウム134(2.1年)セシウム137(30年)とされるので最低4日間はシェルター内に留まる必要があるように思える。シェルターを出れば元の生活に戻れるかと云えば、地上の社会インフラや物流・金融は壊滅しており、外部からの援助が無ければ3日と生きられないように思う。映画では、全面核戦争が予想される際に指導的地位にある人や国の再建に必要な人を選別して巨大シェルターに収容することが描かれるが、もし日本にそのような巨大核シェルターが存在したとしても学識はもとより生殖機能はおろか排尿器官としてさえ危うい身であれば選ばれることは無いだろうと覚悟している。現在世界には全人類を数百回も繰り返し殺せる核弾頭があるとされるので、一部の狂信者に依る偶発・突発的な核攻撃であったとしても核の打ち合いに発展すれば地球は滅びることになる。そうなってしまえば設備の整ったシェルターで生き延びたとしても、食糧生産等に従事する労働者は存在しないために、彼等の生命も風前の灯以上に無力なものであるだろう。

 自分にとって核シェルター不要(無価値)論を述べたが、地震・洪水・津波・竜巻等の自然災害に対するシェルターには一定の効果があるように思う。金と土地と暇があれば、効果を信じてシェルターを整備することには”鰯の頭”程の効能があると思うが、コロナで重篤化した場合にも人工呼吸器の装着対象から除外されるであろう自分としては、やはりシェルター整備は無縁であると諦観を新たにした報道であった。