もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

大統領選挙と中華覇権

2020年08月09日 | 中国

 アメリカ大統領選挙が終盤に差し掛かった。

 トランプ大統領の再選に挑戦する民主党候補はバイデン氏に決まった感があり、世論調査ではバイデン氏有利とされているが日米のメディアが総じて民主党びいきであるために世論調査や報道が必ずしも投票行動と一致しないことは、前回の大統領選で民主党ヒラリー氏が有利とされていたことにも示されている。また、トランプ大統領の強硬な中国政策で職や富を失った階層の票が民主党に流れるとの見方も依然として根強いが、バイデン氏も中東(イラン・イスラエル)問題では反トランプ政策を掲げるものの、中国コロナや露骨な中華覇権が明らかとなった今ではトランプ大統領の中国政策に対して賛意若しくは沈黙を守って政策転換は表明していないと報じられている。その根底には、ニクソン以来の中国ソフトランディング政策が失敗で、中国共産党の存続~習独裁に至る変質を手助けしたに過ぎないとする認識がアメリカ国内で定着しつつあるものと観ている。これまで諜報活動の摘発は秘密裏に処理する慣例を破ってまでアメリカが領事館閉鎖を強行した背景には、政・経・学界における中国汚染が放置できないレベルにまで達していることの表れであろうし、バイデン氏の認識でもあろう。作家の佐藤優氏は米(G7)中対立は、往年の東西冷戦とは似て非なるものと述べられている。それは、東西冷戦時のソ連が目指していたのはコミンテルン(共産主義インターナショナル)を介してのイデオロギー制覇であったが、中国のそれは中国(漢民族)による世界制覇でありイデオロギーは必要ないとしている。確かに漢民族は対外戦争に一度も勝利していないのは、中国の王朝制が世界基準であるべきという思想に固執したためであり、それが通じないことを知っていたモンゴルの元帝国はモンゴル文化の輸出ではなく「征服地の富の簒奪」という一点に注力したために、世界帝国を築くことに成功した。近代で、中華思想だけでは勝てないと見抜いたのは鄧小平であり、「白猫でも黒猫でも構わない。ネズミを捕る猫が良い猫だ」として、マルクス主義とは相容れない社会主義型資本主義経済を導入した。自分もこれまで、度々中国を共産党の独裁国家と形容しているが、現在の中国にはマルクスが提唱するイデオロギーは存在せず、共産党という既存の機構を換骨奪胎して統治に利用した習独裁国家が存在しているとみるべきかもしれない。佐藤優氏は、米ソ対立は冷戦に終始したがイデオロギーに依らない米中対立は冷戦に留まらず熱戦にまで発展する危険性が有るとも警鐘されているが、その際は尖閣諸島を含む東南シナ海が確執の場となる可能性が大きいようにも思える。

 現在トランプ政権が採っている諸政策の全てを再選のためとする見方がメディアに溢れているが、日本国内の自民党打破・安部降ろしとは根本もスケールも違う世界情勢の転換点が現在進行形で示されているのかも知れない。