もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

モルヒネの思い出

2024年03月06日 | 防衛

 昨日は防衛省(自衛隊)が全血型血液製剤を独自に製造・備蓄する計画に賛意を表したが、更に保有・備蓄を検討して貰いたいものがある。

 その前に、新兵教育後に配属されたのは米海軍貸与(後に供与)のPF(パトロール・フリゲート)であったが、当該艦は昭和17年建造後に一時ソ連に貸与されたもので、自分が乗り組んだ時点でも主機回転計の前後進表示はキリル文字で書かれていた。
 乗り組んで2年後、艦は退役・廃艦となるために乗員は搭載物品の整理に明け暮れていた時、艦の最後尾にある舵機室のビーム(桁)裏の目立たない箇所で防水紙に包まれた不審な2個の包みを発見した。開けてみると内部に液体が封入されたビー玉大のガラス容器12個(計24個)が収められており、同梱の使用説明書は「モルヒネ」と読め、イラストの使用法も添えられていた。推察するに、不良米兵が搭載品のモルヒネを掠めて隠したものであろうが、取り出す機会を失って、以後ソ連兵・自衛隊員にも発見されないままに20数年が経過したもののようである。班長・機械員長に報告する前に、世故に長け信頼できる海士長に相談したら「素行不良の俺とお前が見つけたとなると2箱以上あったに違いないと勘繰られるのは必定。黙って海に捨てろ」と云われ、成る程!!と思い、浮かび上がらぬようにワイヤーで鉄板に縛り付けて母港の海に捨てた。今はどうなっているのだろうか。水圧で割れただろうか?ワイヤーが朽ちてどこかに行っただろうか?それとも今も眠っているのだろうか・・

 冒頭に書いた「保有・備蓄」を検討して欲しいのは、戦傷者の苦痛を軽減するための「モルヒネ」である。戦争映画では、衛生兵が戦傷者にモルヒネ入りガラス玉を押し付ける(叩きつける)場面が描かれるが、ガラス玉であれば衛生兵がいない場面でも戦傷者の苦痛を軽減させてやることができる。
 モルヒネ=ヘロインであるので、保管・管理についてクリアーしなければならない事項も多いだろうし、素人が使用すればモルヒネの過剰摂取で傷者を死なせてしまう恐れもあるが、戦う・戦える自衛隊になるためには、戦闘に付随する傷者処置も世界基準にしなければならないように思う。


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