もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

核兵器禁止条約を学ぶ

2020年08月10日 | 歴史

 被爆75年の平和祈念式典で広島・長崎市長をはじめとして、多くの政治家・著名人が核兵器禁止条約の署名・批准を訴えた。

 また、6日にはナイジェリア・アイルランド・ニウエの3カ国が核兵器禁止条約の批准手続きを完了して批准した国・地域は43となり、条約発効に必要な50か国にあと7か国となったので、改めて核兵器禁止条約を勉強した。条約の基となったのは、1996(平成8)年に、核兵器の廃絶を求める法律家、科学者、軍縮の専門家、医師、活動家らが参加する3つの国際NGOが起草した「モデル核兵器禁止条約(mNWC)」とされていた。1997年にmNWCはコスタリカ政府により国連事務総長に届けられ、国連加盟国に配布された。2007(平成19)年コスタリカ及びマレーシア両政府から改正mNWCとして国連の核拡散防止条約(NPT)運用検討会議に共同提案され、幾多の討議を経て最終的には2017年7月7日に122か国・地域の賛成多数により採択されたが、2018年10月の時点で条約に署名したのは79カ国とされている。採択された核兵器禁止条約は、全ての国に対して核兵器の開発・実験・製造・備蓄・移譲・使用を禁止するものであるために、採択に当たっては米英仏中露の核兵器保有5大国は反対し、核兵器保有が公然視されている国や核兵器保有5大国と軍事同盟関係を持つ国やMNNA(非NATO主要国同盟)は反対若しくは棄権している。日本が国是と標榜している非核三原則「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」が真実ならば、唯一の被爆国として条約の批准は当然とも思えるが、中国・北朝鮮という核保有国からの恫喝と脅威をアメリカの核の傘で防護している現状では、条約を批准することで失うものが余りにも大きすぎると思う。非核3原則は日米の共通認識であるとされているが在日米軍や艦艇が核兵器を保有しているのは軍事上の常識であり、このことはNATO諸国・韓国・MNNA諸国にも当てはまるもので、122か国が条約採択に賛成票を投じたが、署名79か国・批准43カ国に留まっているのが、この辺の事情を端的に物語っていると思う。さらには、早期に条約を批准した国にあっても、批准以後に中国の債務漬けにあって港湾施設を中国に優先使用させざるを得ない国もあり、核兵器禁止条約採択時とは情勢が大きく変化しており、既に条約の趣旨も意義を失っているように思える。

 今回、条約を批准した国「ニウエ?」。というわけで勉強した。ウイキペディアでは「ニウエは、ニュージーランドの北東、トンガの東、サモアの南東にあるニウエ島を領土とする人口1520人の立憲君主国で、ニュージーランド王国の構成国であり、日本も2015年に国家承認している」と記述されていた。しかしながら、ニウエが条約を批准した背景は複雑である。ニウエの宗主国であるニュージーランド王国は、イギリス王(エリザベス女王)を君主とする英連邦の一員であるために核保有国の一部とみることもできるが、2018年7月には条約を批准している。更に1997年にはクリントン大統領によってMNNAにも指定されていることから、軍事的にはオーストラリアと同様に米英の庇護(核の傘)を受ける立場にありながら、環太平洋合同演習(LIMPAC)参加を見送ったこともあり、英米から距離を置いた国防政策を採っている。メラネシア・ポリネシア・ミクロネシアが中国の攻勢の前に相次いで陥落していることや隣国オーストラリアの中国離れが加速している現状から、ニュージランド・ニウエの動向は注視する必要があるようにも思える。