もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アメリカの孔子学院監視強化に思う-2

2020年08月16日 | アメリカ

 昨日のブログで書き漏らした・(不確で)書かなかった部分である。

 孔子学院を設置した大学が、国防省からの補助を取り消された背景には軍人教育と軍事技術が大きく関係している。米軍人は、軍務の一環として軍籍のまま大学又は大学院で学ぶことが許され(求められ)ており、下士官は職種に関する専門知識を学ぶために工学系を、将校は人格陶冶のための普通学を学ぶことが多い。ちなみに日系人初の海軍大将で現在駐韓大使を務めているハリー・B・ハリス氏は、30代の後半の4・5年(少佐~中佐)に亘って ハーバード大学行政大学院(行政学)、ジョージタウン大学大学院(国家安全保障論)、マサチューセッツ工科大学研究員の経歴を有しているように、米軍高級将校はほぼ全員が修士で、博士も珍しくない。なぜ高級軍人に軍事知識の他に普通学を習得させるかと云えば、軍事に偏らない円満な人格が軍の暴走を防ぐ最良の策と認識しているためである。また、戦後の進駐軍(GHQ)に見られるように占領地に軍政を敷く場合の人的確保、ハリウッド映画で描かれる非常事態(戒厳令)に地方都市を軍の管理下に置くケースでは市長や識者を凌駕する力量・識見を持つ軍人が必要となるためと思っている。行政・外交経験のないハリス大将は大使に、黒人初の統合参謀本部議長となったコリン・パウエル氏は国務長官に任命され大過なく職務を果たしており、欧州戦線の総指揮官ドワイト・アイゼンハワー氏は大統領にさえなっている。軍事技術に関しては、先端技術の開発に大学の研究が必要なことは改めて書くまでもないと考える。国防総省の補助は軍人教育を受け入れる講座開設や先端技術の委託研究に対して支払われているものであり、大学にとっては無視できない財源であるのだろう。

 日本について考えると。自衛隊も米軍式の軍人教育を目指して自衛官の大学院での履修を企図したが、1967(昭和47)年に京都大学で自衛官の大学院工学研究科入学反対の運動が展開され頓挫してしまった。反対運動の背景には、日本学術会議が1950(昭和25)年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」ことを宣言し、1967年には同様の内容を再宣言したことが挙げられる。しかしながら、近年ではデュアルユースといわれるように民生品を軍事用に転用することが一般的となり、軍事技術と民生技術の線引きが曖昧・不可能となったにも拘らず、2017(平成29)年にも再び「学術と軍事が接近しつつあるが大学等の研究機関における軍事的安全保障研究を禁止し、以前の2声明を継承する」としているが、流石に全体会議では採択される見通しが立たないために、執行部が宣言を強行せざるを得なかったとされている。さらに、1987(昭和62)年には、名古屋大学で平和憲章が制定され、自衛官・在日米軍基地労働者・軍籍を保持する外国人留学の入学を拒否すると明言している。名古屋大学平和憲章は名古屋大学消費生活協同組合が出したもので大学は関知しないとしているが、憲章委員は名大教職員であり事実上の大学の方針である。主題である孔子学院に関してであるが、前述のように特定の人物の就学機会を奪うことが一般的な情勢にも拘らず、法科大学院に限って自衛官の就学を認める大学が存在するように記憶(再度調べたが判らなかった)しており、同大学には孔子学院が開設されている。各国の軍人が就学する大学と孔子学院が開設されている大学の相関を調べると、中国共産党中央統一戦線工作部の注力の方向がはっきりするのではないだろうか。