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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

WTOの機能不全事態に思う

2019年12月12日 | 社会・政治問題

 WTO(世界貿易機関)の上級委員(定員7名)が1名となり、事実上WTOの機能が失われた。

 かねてから、国連とその下部機関の決定には不条理と感じるものが散見されたが、今回のWTO機能不全と、アメリカの脱退と加盟国の突き上げから制度改革を余儀なくされているユネスコ、日本が脱退したIWC(世界捕鯨委員会)の動向をみると、国連の調停機能の凋落を痛感せざるを得ない。また、琉球人・アイヌを先住民族と規定するとともに慰安婦問題にまで踏み込んで日本に差別撤廃を求めた人種差別撤廃委員会(CERD)が、ウイグル族・ロヒンギャ・クルド人に対する大規模でかつ喫緊の抑圧には有効な方策を提示し得ない現実もある。かって社民党(社会党)を中心とした左派政党は、憲法9条の墨守のために日米安保破棄・自衛隊廃止、その代替手段としては国連の調停に依存すると異口同音に唱えてきたが、武力紛争解決手段として国連が機能しなかった歴史から、今では一部の狂信者を除いて口にする者もいない。ここにきて、武力紛争とともに国際紛争の双璧ともいえる貿易・経済に関する紛争解決手段であるWTOを失うことは、新たな枠組みが完成されるまで世界が混乱するものと危惧する。WTOの性格に関しては、日本が韓国を提訴した「東北6県産品の輸入規制廃止」に対する最終判断が好例と思う。WTO1審の小委員会では「日本の提示した科学的根拠」を妥当として日本勝訴としたが、2審の上級委員会では科学的資料を採用せずに、韓国の食品安全法と韓国国民の感情を考慮して韓国勝訴と結論付けたが、その後、WTOの裁定にも関わらず、相次いで台湾・シンガポール・EUが規制を緩和(現在も輸入禁止しているのは韓国、中国(ホンコン・マカオを含む)とアメリカ)したように、世界基準となるべき判断を出し得ない状態が続いている。このように、裁定の根拠が不明確で、この不明確な裁定を以て将来の判例とすることと、90日以内に出す規定となっている上級委員会の結論が、期日を大幅に超過していることに、WTO参加国(特に、アメリカ)は不満を持っており、先のG20でもWTO改革に議論・討議を進化させることで一致した。さらにアメリカは、ブッシュ(子)政権以降、中国の知的財産権侵害と輸出企業に対する国家保護を問題視しているが、そのことに対してWTOが明確な判断を示さないことから委員の選任を拒否しており、トランプ政権に至ってはWTO脱退まで口にしている。

 折しも、マドリードで開催中のCOP25(国連気候変動枠組み条約25回総会)で日本の石炭火力発電が注目されている。ここでも、2酸化炭素排出大国の中国・アメリカ・インドに対しては、通り一遍の勧告に終わると思う。前記の3国が日本なみの排出基準を達成すれば、世界の温室効果ガスの排出量は半減するのにである。勿論、日本の石炭火力発電依存体制は改善されるべきであるが、自然エネルギーでは電力の安定供給に問題がある国土・自然環境をも考慮されてしかるべきと思う。要は、国連及び下部機関に「云うことを聞きそうな国には厳しく、そうでない国にはそれなりに」という姿勢が垣間見える限り、国連の調停機能はますます低下し、国際連盟の轍を踏むことまで懸念される現状ではないだろうか。