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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

熊谷6人殺害裁判と統合失調症を学ぶ

2019年12月06日 | 社会・政治問題

 平成27年に熊谷市で起きた6人殺害のペルー人に対する控訴審で、東京高裁は1審(裁判員裁判)の死刑判決を破棄して無期懲役とした。

 1審判決破棄の理由は、事件当時の被告の統合失調症による責任能力の程度を1審よりも低く評価したためとされているので、統合失調症について勉強した。例によって難解な医事・医学用語が多く深く理解できなかったが、統合失調症は身近な障害で、症状の程度に差はあるものの100人に一人の割合で存在するともされていた。メンタルナビの記事を以下に転載すると
① あるはずのないものが現れる陽性症状:幻覚・妄想・思考障害・異常行動で、統合失調症を特徴づける代表的な症状。
➁ 感情表現が乏しくなったり、意欲が低下する陰性症状:感情の鈍麻・平板化、意欲の減退、思考の低下、対人コミュニケーションの支障などの症状で、多くは陽性症状に遅れて現出し自閉的になる。
③ 日常生活に困難をもたらすことがある認知機能障害:認知機能(記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断)などの知的な能力の障害で、生活・社会活動全般に支障をきたす。
とされていた。統合失調症と診断され真摯に治療に専念している方をディスターブする意図からではないが、自分の半生と現状を顧みても、スロットで大勝できる・10億円が当たるという幻聴を聞き、言い訳の言葉に詰まり、同僚と喧嘩し、文章表現に苦労・失敗し、と、まさに統合失調症の症例に当てはまる行為・行動の連続で、100人に1人の確率で存在するというのも大げさな表現ではないと納得した。報道された被告人の例に戻れば、警察から逃走したこと、犯行時に複数の住宅で財布を物色したり遺体を隠したりしたこと、逃走に車や自転車を使用していること、等を見れば自分の行動が警察の追及を受けるものであったことは自覚していたのではないだろうか。なにより、言葉の通じない日本で曲がりなりにも生活し、通話記録には複数の人間とコミュニケーションをとったことが残されていることから、ある程度の社会性は保持していたものと考える。また、判決前には意味不明の言葉を発していたが、通訳を介しての裁判長の制止にはおとなしく従ったこと等からも、まったく心神喪失の状態ではなく、弁護人の助言等で症状を偽っている可能性すらも否定できないのではないだろうか。

 刑罰の効果についても調べてみた。刑法では、犯罪に無関係な第三者を対象として刑罰の効果を期待する一般予防と、犯罪者の教育・更生・隔離の目的で犯罪者自身の再犯を予防しうる特別予防の両者の融合として罪状・量刑が定められているとされている。裁判員制度が始まったのは、一般予防に国民の処罰感情を加味する目的を持ったためと考えるが、2審以降の裁判官は特別予防の意味合いが濃い情状酌量を重視するように思えてならない。裁判員裁判での死刑判決が2審で覆されるのは6件目となった。既に5件については最高裁で2審支持で確定しているが、今回はどうであろうか。