うちの息子達は小学生のときに既に『三国志演義』、吉川英治『三国志』を読了し、コミック『三国志』(横山光輝著)全30巻もすべて読破済み。その上、テレビゲーム「三国志」もやり尽くしたという強者だけに、とにかくトリビアな知識に長けている。映画を見に行く前に予習するようにとS次郎から渡されたのは横山光輝版のコミック文庫本13巻と14巻(あれ? 12巻と13巻だったかな)。しかし、老眼の目には苦しい文庫本。文字が小さい絵が小さい。泣く泣く読みながらもなんとか1巻分だけは読了。赤壁の戦いに行き着く前で疲労困憊してしまった。でもおかげで少しは予習になったかな。
ところが、この予習がいけません。キャラクターに対して先入観が入ってしまったので、金城武の諸葛孔明にはまったく違和感あり。コミックの諸葛孔明はしゃべくり倒して相手を論破する知恵者だが、映画の諸葛孔明はまったく無口で、いつもにやにや笑っているだけ。おまけにえらく若いではないか(実は赤壁の戦いのとき、諸葛孔明は26歳だったそうだから、この年齢設定は史実に近い)。これはあまりにもイメージが違うよね?
しかし、不思議なことにこの映画の金城武はたいへんよかった。今まで彼のことをいいと思ったことはなかったのに、この諸葛孔明役の金城は物静かで沈着冷静、謎の微笑みをたたえた不思議な品を醸し出す貫禄をみせているのだ。ただ、策士である彼がどこまでこの戦いに貢献したのか、映画を見ていてもいまいちわからない。曹操軍を迎え撃つ劉備と孫権の合同軍の見事な陣は孔明の作戦のはずなのに、なんだか判然としない。あまりにも台詞が少なすぎるのだ。諸葛孔明のイメージを覆す演出がなされている。このあたりで、旧来の三国志ファンの評価が分かれるのではないだろうか。うちの息子達はどうやらイメージが違ったらしくて、不満げであった。
「愛の神、エロス」でいたく気に入ったチャン・チェンが若き君主孫権役で登場するのだが、本作の彼はあまり品がよくない。やはり彼は「愛の神、エロス」一作だけのわたしのアイドルだったようだ。
制作費100億円はよくぞ集めたものです。さすがに金をかけただけのことはあって、戦闘シーンについてはもはや文句もないし、ジョン・ウーにしては下品になる手前で止めたアクションシーンもなかなか形式美に凝っていてよい。これはアクション監督の手腕かもしれない。明らかにCGと分かる部分もあまり気にならなかったし。
それにしても、いったいこの3国は何のために戦っているのだろう? なんのために戦争をしているのかまったく理解できない戦争映画が多いのだが、日本の戦国時代といい、なんで戦争しているのだろう? それは経済効率を当然にも計算しているはずであり、勝ったときの利益が大きいはず。負けてももともとなのかもしかしたら負けても何らかの益があるのだろうか? たとえばロシアが不凍港を求めてクリミア戦争を戦ったなんていうのはとてもわかりやすいだが、この三国志の時代、なぜ3国は争ったのか? この辺りがさっぱり歴史的読解ができていないため、予習の意味がなかった。漫画はそんな経済的な理由(つまりは下部構造)を説明しないからね。
昔だったら、上映時間4時間でも5時間でも一本の作品として間に休憩時間をいれて上映したものなのに、最近の映画はこれを2本3本に分けて上映するものだから、観客としては金がかかってしょうがない。Part1でそれなりに楽しんだから、やっぱり2も見に行くよなぁ~。策略にかかったわ。
そうそう、中村獅童が特別出演の割には出番が多かったみたいだけど、台詞もほとんどないし、中途半端だった。
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レッドクリフ Part I
RED CLIFF
赤壁
アメリカ・中国・日本・台湾・韓国、2008年、上映時間 145分
監督: ジョン・ウー、アクション監督: コリー・ユン、製作: テレンス・チャン、ジョン・ウー、製作総指揮: ハン・サンピンほか、脚本: ジョン・ウーほか、音楽: 岩代太郎
出演: トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイ、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、フー・ジュン、 趙雲、中村獅童、リン・チーリン
ところが、この予習がいけません。キャラクターに対して先入観が入ってしまったので、金城武の諸葛孔明にはまったく違和感あり。コミックの諸葛孔明はしゃべくり倒して相手を論破する知恵者だが、映画の諸葛孔明はまったく無口で、いつもにやにや笑っているだけ。おまけにえらく若いではないか(実は赤壁の戦いのとき、諸葛孔明は26歳だったそうだから、この年齢設定は史実に近い)。これはあまりにもイメージが違うよね?
しかし、不思議なことにこの映画の金城武はたいへんよかった。今まで彼のことをいいと思ったことはなかったのに、この諸葛孔明役の金城は物静かで沈着冷静、謎の微笑みをたたえた不思議な品を醸し出す貫禄をみせているのだ。ただ、策士である彼がどこまでこの戦いに貢献したのか、映画を見ていてもいまいちわからない。曹操軍を迎え撃つ劉備と孫権の合同軍の見事な陣は孔明の作戦のはずなのに、なんだか判然としない。あまりにも台詞が少なすぎるのだ。諸葛孔明のイメージを覆す演出がなされている。このあたりで、旧来の三国志ファンの評価が分かれるのではないだろうか。うちの息子達はどうやらイメージが違ったらしくて、不満げであった。
「愛の神、エロス」でいたく気に入ったチャン・チェンが若き君主孫権役で登場するのだが、本作の彼はあまり品がよくない。やはり彼は「愛の神、エロス」一作だけのわたしのアイドルだったようだ。
制作費100億円はよくぞ集めたものです。さすがに金をかけただけのことはあって、戦闘シーンについてはもはや文句もないし、ジョン・ウーにしては下品になる手前で止めたアクションシーンもなかなか形式美に凝っていてよい。これはアクション監督の手腕かもしれない。明らかにCGと分かる部分もあまり気にならなかったし。
それにしても、いったいこの3国は何のために戦っているのだろう? なんのために戦争をしているのかまったく理解できない戦争映画が多いのだが、日本の戦国時代といい、なんで戦争しているのだろう? それは経済効率を当然にも計算しているはずであり、勝ったときの利益が大きいはず。負けてももともとなのかもしかしたら負けても何らかの益があるのだろうか? たとえばロシアが不凍港を求めてクリミア戦争を戦ったなんていうのはとてもわかりやすいだが、この三国志の時代、なぜ3国は争ったのか? この辺りがさっぱり歴史的読解ができていないため、予習の意味がなかった。漫画はそんな経済的な理由(つまりは下部構造)を説明しないからね。
昔だったら、上映時間4時間でも5時間でも一本の作品として間に休憩時間をいれて上映したものなのに、最近の映画はこれを2本3本に分けて上映するものだから、観客としては金がかかってしょうがない。Part1でそれなりに楽しんだから、やっぱり2も見に行くよなぁ~。策略にかかったわ。
そうそう、中村獅童が特別出演の割には出番が多かったみたいだけど、台詞もほとんどないし、中途半端だった。
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レッドクリフ Part I
RED CLIFF
赤壁
アメリカ・中国・日本・台湾・韓国、2008年、上映時間 145分
監督: ジョン・ウー、アクション監督: コリー・ユン、製作: テレンス・チャン、ジョン・ウー、製作総指揮: ハン・サンピンほか、脚本: ジョン・ウーほか、音楽: 岩代太郎
出演: トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイ、チャン・チェン、ヴィッキー・チャオ、フー・ジュン、 趙雲、中村獅童、リン・チーリン